介護の基礎知識
【2024年度】訪問介護の基本報酬の引き下げ理由は?影響や対策を解説

2024年度の介護報酬改定により、報酬全体は1.59%のプラスとなり、全体的に引き上げとなる中で、訪問介護の基本報酬が引き下げられました。この改定は訪問介護事業者の経営に大きな影響を与える可能性があり、多くの事業者が不安を感じていることでしょう。
本記事では、基本報酬引き下げの背景、事業所への影響、そして具体的な対応策について詳しく解説します。
2024年報酬改定後の訪問介護の基本報酬の単位数
訪問介護の基本報酬の単位数は、以下のように改定されています。

上記の通り、全てのサービス種類・時間の単位数が下がっており、概ね2%強の引き下げとなっています。
今回の報酬改定では、訪問介護に加え、定期巡回随時対応型訪問介護看護(約4.5%引き下げ)や夜間対応型訪問介護(約3.5%引き下げ)も基本報酬の引き下げ対象となりました。訪問介護の引き下げ率自体はこれらと比べて低いものの、事業所数や従事するスタッフの数が圧倒的に多いため、介護業界全体への影響は非常に大きいと言えます。
補足:訪問介護の基本報酬の計算方法
訪問介護の基本報酬は、事業所が利用者に訪問介護サービスを提供した際、その対価として支払われる報酬の基礎部分です。この報酬は、以下の計算式で算出されます。
(各サービスに設定された単位数)×(1単位あたりの単価)= 事業所に支払われる報酬
ここで言う「単位数」は、サービスの種類や内容により異なり、基本報酬額を決定する重要な要素です。つまり、基本報酬はサービスの内容と単位数によって決まり、介護事業者が受け取る報酬の基盤となります。
さらに、1単位の単価はサービスや地域によって異なります。訪問介護は以下の表の①人件費割合70%のサービスに含まれます。

訪問介護の基本報酬引き下げの背景

廃業数も多い訪問介護事業ですが、なぜ基本報酬が引き下げられたのでしょうか?以下では報酬引き下げの要因をご紹介します。
訪問介護事業所の経営状況が良好であるため
2023年に厚生労働省が発表した「介護事業経営実態調査」の結果、訪問介護事業所の収支差率が他の介護サービスに比べて高いことが明らかになりました。これは、訪問介護事業が人材不足やサービスの複雑化といった課題を抱えつつも、比較的高い収益性を維持していることを示しています。
収支差率が大きいほど事業所の利益率が高くなるため、経営状況が良好であることが裏付けられました。この結果を踏まえ、厚生労働省は訪問介護の報酬が他のサービスよりも高いと判断し、報酬の適正化を図るために基本報酬の引き下げを決定したと考えられます。
2022年決算時の介護サービスにおける収支差率は以下の通りです。

介護職員等処遇改善加算の加算率が他のサービスより大きいため
政府は、深刻化する介護職員の人材不足に対応するため、介護職員の処遇改善に注力しています。特に、2024年度の介護報酬改定では、介護職員の賃金を段階的に引き上げる新たな制度が導入され、2024年度には2.5%、2025年度には2.0%のベースアップに繋がるように介護職員の賃金を段階的に引き上げるための新たな制度が導入されました。
従来、介護職員の処遇改善には複数の加算制度がありましたが、この改定により、これらの制度が一つに統合され、よりシンプルな仕組みに変更されました。新しい制度では、介護施設やサービスの種類、職員の経験年数などを考慮した4段階の「介護職員処遇改善加算」が設けられています。
主な介護サービスにおける段階別加算率は以下の通りです。

介護の他事業所と比較すると、処遇改善加算が高水準となり、賃金体系等の整備、一定の月額賃金配分等により、まずは14.5%から、経験技能のある職員等の配置による最大24.5%まで、取得できるため、その分を基本報酬で減算することでバランスをとることとしました。
しかし、訪問介護事業所の多くは中小・零細企業であり、賃金体系の整備が十分に進んでいないケースも少なくありません。さらに、介護業界全体で人材不足が深刻化する中、訪問ヘルパーの不足は特に顕著で、有効求人倍率は15倍とも言われています。
このような状況下では、「経験・技能のある職員等の配置」を十分に確保できる事業所は限られているのが現実です。
厚生労働省老健局 令和6年度介護報酬における改定事項について介護職員以外の処遇改善も行うため
2024年度の介護報酬改定に関して、厚生労働省老健局が発表した「令和6年度介護報酬における改定事項について」では、介護保険サービス全体の基本報酬の見直しが詳しく記されています。特に、「大臣折衝事項」では、介護職員以外の処遇改善を実現するため、基本報酬を0.61%引き上げる措置が明記されています。
訪問介護の基本報酬引き下げによる影響

訪問介護の基本報酬が引き下げられたことによる影響は、どのようなものが考えられるのでしょうか。想定される影響をご紹介します。
訪問介護事業者の倒産が増加する
2023年の訪問介護事業者の倒産件数は60件に達し、過去最多を記録しました。その背景には、介護職員の不足、物価高、競争の激化など、複数の要因が影響しています。特に、介護報酬は政府が法令に基づいて価格を指定する公定価格であるため、物価の上昇分を料金に反映させることが難しく、事業者の経営を圧迫しています。
東京商工リサーチの調査によると、倒産の主な原因は「販売不振」で、約8割を占めており、報酬の低さが大きな要因であることが明らかになりました。また、倒産事業所の中でも、95%が資本金1000万円未満、83%が従業員数10人未満であり、小規模・零細事業所の倒産が多い傾向です。
このような状況の中で、基本報酬がさらに引き下げられると、訪問介護事業者の経営がさらに厳しくなり、倒産に追い込まれる、特に小規模・零細の事業所が増えると考えられます。
東京商工リサーチ 2023年の『訪問介護事業者』倒産が60件に急増 ヘルパー不足や物価高、競合で過去最多を更新訪問介護職員の人手不足がさらに加速する
2022年に発表された「令和4年度介護労働実態調査」によると、従業員の過不足状況について、職員の83.7%が「大いに不足」「不足」「やや不足」と回答しており、この割合は介護サービス全体の17.2%を上回り、訪問介護における人手不足が深刻であることが明らかになりました。
さらに、職種別の従業員数に占める65歳以上の従業員比率について、介護職員は11.0%、看護職員は14.2%、介護支援専門員は12.3%に対して、訪問介護職員は26.3%と圧倒的に数値が高い結果となりました。
以上のことから、訪問介護の基本報酬がさらに引き下げられることで、現場の若い世代の減少と高齢化が進み人材不足がより加速することが考えられます。
介護難民が増加する
現場の高齢化と少子化による働き手の減少が進む中、介護の需要と供給のバランスが崩れ、介護難民が増える恐れがあります。
2015年に日本創成会議の首都圏問題検討分科会が発表した「東京圏高齢化危機回避戦略」では、2025年には全国で入院のニーズが152万人、特に東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県では33万人に達し、介護ニーズは全国で689万人、同じく東京圏では172万人に上ると予測されています。入院・介護のニーズが増加する中、報酬引き下げによる人手不足や事業所の廃業が進めば、これらのニーズに対応できず、介護難民が生じる可能性が高まります。
経営状況が良いのに倒産件数が多いワケ

基本報酬引き下げの背景では、訪問介護事業所の経営状況が良好なことを理由として挙げましたが、訪問介護事業者の倒産が増加しているのには違和感を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか?実は収支差率については介護事業経営者などから「経営実態を正しく反映していないのではないか」という指摘もあります。
考えられる要因として、調査への回答事業所に偏りがある可能性が考えられます。人手不足や資金繰りに苦しむ事業所は、調査に回答する余裕がない傾向にあると考えられます。
回答した事業所は比較的経営に余裕がある可能性が高く、これが収支差率を実際より高く見せている可能性があります。
また、今回の調査では、対象事業所の約半数である16,808事業所しか回答していません。調査に回答する余裕のある事業者は経営にも余裕があると考えられるため、収支差率が実際の平均値よりも高くなる可能性があります。特に訪問介護事業者は他の介護サービスと比較して、回答する余力がないと思われる中小・零細企業の割合が高い傾向があります。
さらに、訪問介護事業者は強力な事業者団体がないため、回答を促進したり記入方法のアドバイスを行うなどの支援が行われておらず、回答率が下がったことで回答に偏りが生じた可能性があります。
これらの要因により、調査結果が示す収支差率は、業界全体の実態よりも高く出ている可能性があります。
基本報酬の引き下げに対しての収益を上げるための対応策

いずれにせよ、基本報酬の引き下げは既に行われてしまっています。今後3年間、訪問介護事業者は厳しい環境下での経営を余儀なくされます。
単に訪問件数を増やすだけでは限界があるため、可能な限りの加算取得、運営コストの見直し、保険外サービスの拡充など、さまざまな手を打って行く必要があるでしょう。
以下では収益を上げるための対応策を5つご紹介します。
未取得の加算を取得する
基本報酬が下がった分は、未取得の加算を取得することで介護報酬の改善が行えます。2024年度の改正で加算の見直しや区分が新設されたものもあるので、加算できていないものがないか、一度確認してみましょう。
【訪問介護事業所で取得できる加算の例】
・特定事業所加算
・夜間・早朝・深夜加算
・特別地域訪問介護加算
・中山間地域等における小規模事業所加算
・中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算
・緊急時訪問介護加算
・初回加算
・生活機能向上連携加算
・口腔連携強化加算
・認知症ケア加算
・介護職員等処遇改善加算
人事制度を整えて人材確保を
訪問介護の報酬改定に伴い、人材確保には介護職員のモチベーション向上を促進する人事制度の整備が重要です。具体的には、職員の貢献度を明確にし、評価と処遇を連動させることで、やりがいを提供し、安定した働き方を実現することが効果的です。
介護職員処遇改善加算を活用することで、資格取得や勤続年数に応じた処遇改善が可能となり、働きやすい職場環境を整えることができます。これにより、職員のモチベーション向上と定着率の改善が期待されます。
訪問介護ではケアの内容が見えにくいため、人事評価の基準を設けることが難しいこともあります。その場合、厚生労働省の「職業能力評価基準」を参考にするのが有効です。この基準は、各職種に必要な知識、スキル、成果に繋がる行動を4段階に分けて示しており、職員の能力開発や評価に役立ちます。
また、厚生労働省のホームページでは、訪問介護サービスに特化した職業能力シートが公開されています。このシートを活用することで、評価基準の策定がスムーズになり、効果的な人事評価制度を構築できます。
厚生労働省「職業能力評価基準」人材育成に力を入れる
「介護職員処遇改善加算」では、一定の経験や技能、資格を持つ職員が一定数以上在籍している事業所に対して、加算率が高くなります。
具体的には、介護福祉士が職員の30%以上を占めていると加算率が向上するため、研修の実施や資格取得の支援を行うことで、職員の資格取得意識を高めることができます。また、採用活動時には求職者の資格に注目し、30%を下回らないように注意することが重要です。
生産性を向上する
訪問介護では、訪問サービスによる単位数が収益となります。そのため、まずは職員一人当たりの生産性を向上させ、訪問件数を増やせば収益が上がります。しかし、支出の70%が人件費を占めているため、安易に職員数を増やしても一人当たりの訪問件数が十分でなければ支出を賄うことができません。したがって、職員採用を行う前に、まずは生産性を向上させ、訪問件数を増やすことで、限られた支出で収益を上げることが可能となります。
具体的な取り組みとしては、生産性向上のためのツールを導入する方法があります。現状の業務体制を変えずに生産性を上げることは難易度が高く、職員1人あたりの業務量を無理に増やすと職員の不満が溜まり、離職にも繋がりかねません。もし現状アナログ業務が多いと感じている事業所様は介護ソフトや勤怠管理システムなどのツールを導入することで職員の負担なく、大幅な生産性向上が行える可能性があります。
訪問介護以外のサービスの提供を行う
訪問介護サービスは引き続き提供しつつ、訪問介護以外の、訪問看護や訪問入浴などの別サービスも追加で行います。
例えば、訪問入浴介護の基本報酬は、2024年の報酬改定で1,260単位→1,266単位へと増加、介護予防訪問入浴介護は852単位→856単位と増加しています。訪問看護についても基本報酬の単位は増加しておりますので、訪問介護以外のサービスも並走して提供を行うことで事業所の収益の底上に繋がります。
また、同居家族の洗濯や掃除、料理などの家事援助など、介護保険外サービスを行うことでサービスの内容や利用料金を自由に設定することができるため、収益を増やすことに繋がります。
報酬引き下げの対策には介護ソフト「トリケアトプス」の導入がおすすめ

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訪問介護事業所に導入することで、職員1人あたりの生産性が向上するため、訪問件数を増やすことができ、収益を増やすことに繋がります。
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