介護の基礎知識
【2027年度】介護報酬改定の方針まとめ|介護保険の法改正をわかりやすく解説
- 公開日:2026年10月28日
- 更新日:2026年10月28日
2027年度(令和9年度)に予定されている介護報酬改定に向けて、厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会で議論が進められています。
今回の改定では、介護職員の処遇改善や物価高騰への対応に加え、ICT・AIなどを活用した業務効率化、地域の実情に応じた介護サービスの提供体制などが重要なテーマとなっています。介護事業所にとっては、基本報酬や加算の見直しだけでなく、今後の人員配置や業務の進め方にも関わる可能性があるため、議論の動向を把握しておくことが大切です。
この記事では、2026年10月21日時点で公表されている厚生労働省の資料をもとに、2027年度介護報酬改定の主な論点と、介護事業所への影響についてわかりやすく解説します。
※本記事は検討段階の情報をまとめたものです。具体的な報酬単位や算定要件などは、今後の審議によって変更される可能性があります。
2027年度介護報酬改定とは?
介護報酬改定とは、介護保険サービスを提供する事業所に支払われる報酬の単位数や、加算・減算の算定要件などを見直すものです。介護報酬は原則3年ごとに改定されており、2024年度の次の定期改定が2027年度となります。
一方、人材不足や物価高騰が深刻化していることから、2027年度を待たず、2026年度にも処遇改善などを目的とした期中改定が行われています。
2027年度改定では、こうした状況も踏まえながら、介護事業所の経営の安定と介護保険制度の持続可能性を両立するための検討が進められています。
2027年度介護報酬改定の5つの基本的な方向性
厚生労働省は、第268回分科会(9月30日)にて、2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けて、5つの基本的な視点を示しています。
今回の改定では、物価高騰や介護職員の人手不足への対応に加え、ICT・AIを活用した業務効率化や、地域の実情に合わせた介護サービスの提供体制などが重要なテーマとなっています。
以下では、それぞれのポイントをわかりやすく解説します。
① 物価・賃金の上昇への対応と介護職員の処遇改善
介護業界では、物価高騰による運営コストの増加や、他業種との賃金格差が大きな課題となっています。こうした状況を踏まえ、介護事業所の経営状況や職員の賃金水準を確認しながら、物価や人件費の上昇を介護報酬に適切に反映することが検討されています。
介護事業所が安定した経営を続けられるようにするとともに、介護職員が他業種と比べても遜色のない給与を得られる環境を目指します。
② 人口減少や地域の介護ニーズに合わせたサービス提供体制の見直し
都市部では介護サービスの需要が増える一方、人口減少が進む地域では、利用者や介護職員の確保が難しくなり、事業所の運営が厳しくなることも考えられます。そこで、人口が少ない地域でも必要な介護サービスを維持できるよう、地域の状況に合わせた柔軟なサービス提供の仕組みが検討されています。
具体的には、中山間・人口減少地域向けの新たな「特例介護サービス」が機能するための人員配置基準や報酬の見直し、中山間地域でのサービス提供を支援する加算の見直しなどが挙げられています。また、複数の事業所が人材や設備を共同で活用したり、職員間で業務を分担したりする取り組みも推進する方針です。
③ 地域包括ケアシステムの充実と介護サービスの質の向上
高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、医療・介護・生活支援などが連携する「地域包括ケアシステム」をさらに充実させることが検討されています。
具体的には、医療機関と介護事業所の連携強化、リハビリテーションの充実、災害時等の業務継続や高齢者虐待防止の取組、認知症の方が地域で暮らし続けるための支援、生活支援・権利擁護等などが挙げられています。有料老人ホームについては、サービスの質を確保するとともに、運営状況をわかりやすくするための取り組みも検討されています。さらに、質の高い介護と、その成果の適切な評価、LIFEの一層の活用等を通じた科学的介護を推進する方針です。
④ ICT・AIの活用による業務効率化と働きやすい職場づくり
介護業界では慢性的な人手不足が続いており、職員の負担を減らしながら、質の高いサービスを提供することが求められています。そのため、介護職員が働き続けやすい職場環境の整備や、ICT・AIなどの介護テクノロジーを活用した業務効率化が重要なテーマとなっています。
また、特定の職員に業務が集中しないよう、職員間で役割を分担したり、業務の一部を他の職種と共有したりする「タスクシフト・タスクシェア」も推進する方針です。
⑤ 介護保険制度を将来にわたって維持するための見直し
高齢化が進む中で、介護保険制度に必要な費用は増加しています。一方で、現役世代を中心に介護保険料の負担が重くなることへの懸念もあり、限られた財源を有効に活用することが求められています。
そのため、必要な介護サービスを確保しながら、実際のサービス提供状況や事業所の経営実態などを踏まえ、介護報酬の仕組みを見直し、報酬体系を整理・簡素化を行う方針です。
骨太方針2026から見る、2027年度介護保険制度改正・介護報酬改定の方向性
「骨太方針2026」とは、政府が2026年7月21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2026」の通称で、今後の経済・財政運営や社会保障制度改革について、国としての基本的な方向性を示したものです。
骨太方針は毎年策定され、翌年度の国の予算編成や制度改革を進める上での重要な指針となります。介護分野についても、介護職員の処遇改善や人材確保、介護サービスの提供体制、介護保険制度の持続可能性などに関する方針が示されています。
今回の骨太方針2026では、介護職員の賃上げや物価高騰への対応を進める一方で、社会保障制度の効率化・適正化を図り、現役世代の保険料負担の増加を抑えることが重要な方向性となっています。
つまり、介護現場の経営安定や人材確保を支えながら、社会保障制度全体の持続可能性を確保するという、両立が難しい課題への対応が求められています。
2027年度介護報酬改定では、こうした政府の方針も踏まえ、介護サービスの質を維持・向上させながら、処遇改善やICT・AIによる生産性向上、限られた財源の効果的な活用などについて議論が進められています。
2027年度介護報酬改定の議論の概要
2027年度介護報酬改定では、サービスの種類ごとの議論と全サービスに共通するテーマ(横断的事項)に関する議論がそれぞれ行われています。それぞれの要点を以下にてまとめます。
全サービスに共通するテーマ(横断的事項)に関する議論
2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けて、サービス種類ごとの見直しとは別で、全サービスに共通するテーマ(横断的事項)の議論が進められています。
2026年7月23日の第261回・8月28日の第263回・9月3日の第264回にて、全サービスに共通するテーマ(横断的事項)の議論が行われました。
これらは、訪問介護や通所介護、施設系サービスなど、複数のサービスに関係する重要な議論です。ただし、すべてのサービスに同じ制度変更が適用されるという意味ではありません。
| 回数 | 開催日 | 主な対象サービス | 資料 |
|---|---|---|---|
| 第261回 | 2026年7月23日 | 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築 | 資料 |
| 第263回 | 2026年8月28日 | 介護人材の確保に向けた処遇改善等|介護現場の生産性向上等の推進|高齢者虐待の防止/介護現場の安全性の確保、リスクマネジメント|災害時等における業務継続の取組の強化等|介護現場におけるハラスメント対策 | 資料 |
| 第264回 | 2026年9月3日 | 認知症への対応力強化|医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護|科学的介護情報システム(LIFE)|口腔・栄養、一体的取組 |多床室の室料負担 | 資料 |
以下では2027年度介護報酬改定に向けた横断的事項の主な論点をわかりやすく解説します。
① 人口減少に対応したサービス提供体制の見直し
人口減少や高齢化の進み方には地域差があり、介護サービスの需要も地域によって異なります。特に中山間地域や人口減少が進む地域では、利用者や介護職員の確保が難しく、事業所の運営やサービスの維持が課題となっています。こうした地域でも必要な介護サービスを継続して提供できるよう、地域の実情に応じたサービス提供体制のあり方が議論されました。
中山間・人口減少地域向けに新たな「特例介護サービス」を検討しており、 市町村単位ではなくエリア単位の指定も検討しています。
また、管理者や専門職の常勤専従の要件をゆるめたり、ICTの活用を前提とした配置基準の見直しも検討されています。
人員配置基準や報酬の柔軟な取り扱い、複数事業所による協働化、職員間で業務を分担するタスクシフト・タスクシェアなどが検討されています。また、地域の介護ニーズに応じてサービスを提供する仕組みや、中山間地域などでのサービス提供を支える加算のあり方も論点となっています。
今後は、全国一律の基準だけでなく、地域の人口や介護サービスの需要に合わせた柔軟な制度設計がどのように進められるかが注目されます。
② 地域区分の見直し
介護報酬では、地域ごとの人件費の違いを反映するため、地域区分に応じた単価が設定されていますが、この地域区分のあり方が議論されました。
地域区分は、事業所の所在地によって介護報酬の金額が変わる仕組みであり、地域によっては人材確保や事業所経営にも影響します。
今回の議論では、地域ごとの賃金水準や近隣自治体との関係などを踏まえ、地域区分をどのように設定することが適切かが検討されています。
地域区分の変更は、対象となる事業所の介護報酬収入に直接影響する可能性があるため、今後の見直し内容が注目されます。
③ 介護職員の処遇改善と人材確保
介護業界では、他産業との賃金格差や慢性的な人手不足が大きな課題となっています。介護関係団体からは基本報酬・処遇改善について、引き上げを求める声が相次いでいます。
2026年度には介護従事者の賃上げに向けた措置が実施されており、2027年度改定では、こうした取り組みの効果を確認しながら、継続的な賃上げを実現するための対応が検討されています。また、介護職員等処遇改善加算についても、加算の取得状況や算定に伴う事務負担などを踏まえ、今後のあり方が議論されています。
特に、加算の要件が複雑であることや、小規模事業所では事務作業が負担になりやすいことなどが課題として挙げられています。今後は、介護職員の賃金改善を継続しながら、事業所が処遇改善に取り組みやすい仕組みをどのように整えるかが重要となります。
④ ICT・AIの活用による生産性向上
介護現場の人手不足に対応するため、ICTやAIなどの介護テクノロジーを活用した業務効率化も重要なテーマとなっています。
介護現場における生産性向上では、記録や情報共有などの事務作業を効率化し、職員の負担を減らすことで、利用者へのケアにより多くの時間を充てられる環境を整えることが目的です。
例えば、スマートフォンやタブレットによる介護記録の入力、見守り機器の活用、AIによる文書作成の支援などが考えられます。また、ICTの導入だけでなく、業務の進め方そのものを見直すことや、職員間で役割を分担する取り組みも重要とされています。
今後は、施設系サービスだけでなく、訪問介護や通所介護などの居宅系サービスも含め、介護テクノロジーの活用をどのように推進・評価するかが注目されます。
⑤ 高齢者虐待防止と介護現場の安全対策
高齢者虐待の防止や介護事故のリスク管理についても議論が行われました。
介護事業所では、虐待防止のための研修や委員会の開催、指針の整備、担当者の設置などが求められています。また、転倒・転落や誤薬などの介護事故を防ぐため、事故の発生状況を把握し、原因を分析して再発防止につなげることも重要です。
今回の議論では、これまでの取り組みの実施状況を踏まえ、利用者の安全を確保するための体制や、事故防止・リスクマネジメントのあり方が検討されています。
利用者の安全を守る取り組みを充実させながら、介護現場の実情に合った制度や運用を整えることが重要な課題となっています。
⑥ 災害時の業務継続とハラスメント対策
災害や感染症が発生した場合でも、必要な介護サービスを継続できる体制づくりについて議論されました。
介護事業所では、BCP(業務継続計画)の策定や研修・訓練などが求められています。今回の議論では、BCPの策定状況や実効性を踏まえ、災害時に必要なサービスを継続するための取り組みが検討されています。
また、介護職員が安心して働き続けられる職場環境を整えるため、ハラスメント対策も取り上げられました。
職員間のハラスメントに加え、利用者や家族からの暴言、暴力、過度な要求などのカスタマーハラスメントへの対応も課題となっています。
災害対策やハラスメント対策については、事業所の負担にも配慮しながら、実効性のある取り組みをどのように進めるかが注目されます。
⑦ 認知症ケアの充実と加算の見直し
認知症の方が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、本人の意思を尊重した支援や、社会参加を促す取り組みが重視されています。一方で、認知症に関する加算については、算定率が低いものがあることや、研修の受講に時間や費用がかかることなどが課題となっています。
そのため、認知症専門ケア加算や認知症チームケア推進加算などのあり方、研修要件の見直し、オンライン研修の活用などが議論されました。また、若年性認知症の方への支援や、地域での社会参加を支える取り組みについても検討されています。
今後は、認知症ケアの質を高めながら、事業所が専門的な取り組みを実施しやすい加算・研修制度をどのように整えるかが注目されます。
⑧ 医療・介護連携と看取りへの対応
高齢者の医療ニーズが高まる中で、医療機関と介護事業所の連携強化も重要なテーマとなっています。
特に、介護施設における協力医療機関の確保については、地域によって連携できる医療機関が限られることなどが課題となっています。また、人生の最終段階において、本人がどのような医療やケアを希望するのかを、家族や医療・介護関係者と繰り返し話し合う「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」の重要性も取り上げられました。さらに、本人が望む場所で安心して最期を迎えられるよう、看取りに関わる多職種連携や介護報酬上の評価についても議論されています。
今後は、医療と介護の連携をさらに強化するとともに、利用者本人の意思を尊重した看取りを支える仕組みがどのように整備されるかが注目されます。
⑨ LIFEの活用と科学的介護の推進
LIFEは、利用者の状態やケアの内容などをデータとして収集・分析し、その結果を介護現場に還元することで、介護サービスの質の向上を目指す仕組みです。
一方で、介護事業所ではLIFEへのデータ入力や提出に時間がかかること、フィードバックされた情報を日々のケア改善に十分活用できていないことなどが課題となっています。今回の議論では、データ提出の負担軽減や、介護ソフトとの連携、現場で活用しやすいフィードバックのあり方などが取り上げられ、提出項目・提出頻度が見直される方針です。
また、利用者の状態改善だけでなく、状態の維持や生活の質の向上なども介護の成果として適切に評価する必要があるとの意見が示されています。
今後は、LIFEへのデータ提出を目的とするのではなく、収集したデータを実際のケア改善につなげる仕組みづくりが重要となります。
⑩ 口腔・栄養管理の充実と多職種連携
歯科専門職や管理栄養士などとの連携、低栄養状態の早期発見、飲み込む力に応じた食事への対応などが議論されました。
一方で、口腔・栄養に関する加算については、専門職との連携が難しいことや、算定に伴う事務負担などが課題となっています。そのため、加算の算定要件や評価方法の見直し、口腔・栄養・リハビリテーションを一体的に進める仕組みなどが検討されています。また、食材料費の高騰や、嚥下機能に応じた食事の提供に伴う負担への対応についても意見が出されています。
今後は、利用者の状態に応じた適切な口腔・栄養管理を推進するとともに、専門職との連携や加算算定を行いやすい仕組みが求められます。
⑪ 多床室の室料負担の見直し
2024年度介護報酬改定では、一部の介護老人保健施設や介護医療院を対象に、多床室の室料負担を導入することが決まり、2025年8月から実施されています。
今回の議論では、在宅で生活する高齢者との負担の公平性や、施設の機能・利用実態などを踏まえ、室料負担の対象範囲をどのように考えるかが論点となりました。
一方で、対象を拡大すると利用者の負担が増えることから、慎重な検討を求める意見も出されています。特に、介護老人保健施設や介護医療院は、在宅復帰支援や医療・介護を提供する役割も担っているため、単純に居住の場として扱うべきではないとの意見があります。
多床室の室料負担については、対象拡大が決定したわけではなく、利用者負担の公平性と施設の役割を踏まえた議論が続いています。
サービスの種類ごとの議論
2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けて、社会保障審議会介護給付費分科会では、サービス種類ごとの見直しについて議論が進められています。
2026年5月25日の第257回から7月9日の第260回にかけて、各サービスの現状や課題を整理する第1ラウンドの議論が行われました。その後、10月9日の第269回から10月19日の第271回にかけて、各サービスの課題を踏まえた具体的な対応案が示されています。
今回の議論では、介護人材の不足や物価高騰への対応だけでなく、加算の算定要件の見直し、ICTの活用、利用者の状態や地域の実情に応じたサービス提供などが重要なテーマとなっています。自事業所の提供するサービスに関係する回の資料には目を通しておくようにしましょう。
| 回数 | 開催日 | 主な対象サービス | 資料 |
|---|---|---|---|
| 第269回 | 2026年10月9日 | 定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護 | 資料 |
| 第270回 | 2026年10月14日 | 通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、療養通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護 | 資料 |
| 第271回 | 2026年10月19日 | 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、居宅介護支援 | 資料 |
| 回数 | 開催日 | 主な対象サービス | 資料 |
|---|---|---|---|
| 第257回 | 2026年5月25日 | 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護 | 資料 |
| 第258回 | 2026年6月15日 | 通所介護、認知症対応型通所介護、地域密着型通所介護、療養通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護 | 資料 |
| 第259回 | 2026年6月29日 | 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、居宅介護支援、福祉用具・住宅改修 | 資料 |
| 第260回 | 2026年7月9日 | 介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、特定施設入居者生活介護 | 資料 |
以下ではサービス種類別に注目したい主な検討内容を紹介します。
① 訪問介護|事業所の経営安定と特定事業所加算の見直し
訪問介護では、人材不足や事業所の経営状況を踏まえ、安定的にサービスを提供できる仕組みが議論されています。特に、中山間地域などでは利用者宅への移動に時間がかかり、都市部と比べて効率的なサービス提供が難しいことが課題となっています。こうした地域の実情に応じた報酬評価や、複数の事業所が連携してサービスを提供する仕組みについて検討されています。
また、特定事業所加算についても、事業所の専門性やサービス提供体制を適切に評価するための見直しが論点となっています。さらに、サービス提供責任者の業務負担を軽減するため、ICTを活用した柔軟な業務運用についても検討されています。
加えて、同一建物に居住する利用者への訪問介護について、移動時間やサービス提供の効率性を踏まえ、現在の減算方式に代わる報酬区分の見直しも提案されています。
② 通所介護(デイサービス)|入浴介助加算や短時間利用の見直し
通所介護では、利用者のニーズに応じたサービス提供や、事業所の経営負担を踏まえた報酬の見直しが議論されています。特に注目されるのが、入浴サービスに関する見直しです。
中山間地域などでは訪問入浴介護を提供する事業所が少なく、入浴介助だけを目的にデイサービスを利用したいというニーズがあります。そのため、入浴サービスを提供する事業所が不足している地域などに限り、例外的に入浴介助を目的とした短時間の通所介護を認めることが検討されています。
また、入浴介助加算についても見直し案が示されています。現在、入浴介助加算(Ⅱ)では、原則として医師等が利用者の自宅を訪問し、浴室環境などを評価する必要があります。今回の議論では、医師等の指示のもと、介護職員が利用者宅を訪問し、ICTを活用して浴室環境を確認する方法を認めることが提案されています。さらに、水道光熱費などの物価高騰や人材確保の負担を踏まえ、入浴介助加算の単価を見直すことも検討されています。
③ 訪問看護|医療ニーズへの対応とICT活用の推進
訪問看護では、医療ニーズの高い利用者への対応や、在宅療養を支えるサービス提供体制の強化が議論されています。
具体的には、夜間の緊急訪問に対する評価や、ターミナルケアへの対応、重症の皮膚疾患がある利用者への訪問看護などが検討対象となっています。また、利用者宅に残っている薬を確認し、医師や薬剤師と情報共有するなど、適切な服薬管理を進めるための対応も論点となっています。
ICTの活用については、訪問看護師が利用者宅でオンライン診療を補助する取り組みや、医療機関との情報連携を評価する仕組みが提案されています。
さらに、訪問看護ステーションの理学療法士等によるサービスについても、訪問看護本来の役割やサービス提供体制を踏まえた評価の見直しが検討されています。
④ 居宅介護支援|ケアマネジャーの管理者要件や加算の見直し
居宅介護支援では、ケアマネジャーの業務負担軽減や、質の高いケアマネジメントを評価する仕組みについて議論されています。特に注目されるのが、居宅介護支援事業所の管理者要件の見直しです。
現在、居宅介護支援事業所の管理者は原則として主任ケアマネジャーであることが求められています。しかし、主任ケアマネジャーが労務管理や経営管理などの業務に時間を取られ、本来の役割であるケアマネジャーの指導・育成に十分な時間を確保できていないことが課題となっています。そこで、管理者については主任ケアマネジャーであることを必須とせず、5年以上の実務経験などを持つケアマネジャーとする案が示されています。
また、特定事業所加算についても、実際の業務負担や事業所間の連携状況などを踏まえた評価の見直しが検討されています。医療機関との連携に関する加算では、オンラインでのカンファレンス参加や在宅医療との連携など、現場の実態に合わせた算定要件の見直しが論点となっています。
このほか、居宅介護支援事業所による介護予防支援の実施促進や、中山間地域におけるケアマネジメント提供体制の確保についても議論されています。
⑤ 夜間対応型訪問介護・定期巡回|サービス統合に向けた報酬の見直し
夜間対応型訪問介護については、定期巡回・随時対応型訪問介護看護への統合に向けた対応が議論されています。夜間対応型訪問介護の廃止・統合に伴い、現在の利用者が必要なサービスを継続して受けられるよう、移行先となる事業所の体制整備や報酬のあり方が重要な課題となっています。
特に、夜間の通報・相談対応を維持するための評価や、日中の訪問介護事業所との連携、職員の確保などが論点となっています。
また、夜間対応型訪問介護の事業所では、統合によって収入が減少する可能性もあるため、経過措置や報酬上の配慮について検討されています。
⑥ 小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護|柔軟な人員配置とサービス評価
小規模多機能型居宅介護では、独居高齢者や認知症高齢者への支援を適切に評価する仕組みが議論されています。特に、要介護度が比較的軽い段階から利用者との関係を築き、見守りや生活相談などを通じて在宅生活を支える役割が重視されています。そのため、要介護1・2の利用者と要介護3以上の利用者に対する基本報酬のバランスについて、見直しが提案されています。
また、利用者数が急激に減少した場合の人員配置や、訪問サービスを担当する職員の配置についても、柔軟な運用が検討されています。
看護小規模多機能型居宅介護では、医療ニーズの高い利用者への対応や、訪問看護との連携、利用者の状態に応じたサービス評価が論点となっています。
⑦ 通所リハビリテーション|生活機能の改善と書類作成負担の軽減
通所リハビリテーションでは、利用者が日常生活を自立して送れるよう支援するため、リハビリテーションマネジメントの見直しが議論されています。
これまでのリハビリテーションでは、筋力向上や歩行訓練などが中心となるケースが多く、日常生活で必要な動作や社会参加につながる支援をさらに充実させることが課題となっています。そこで、リハビリテーション会議において、利用者の自宅での生活状況や目標を共有し、食事・入浴・買い物などの日常生活動作を意識した計画を作成することが提案されています。
また、生活行為向上リハビリテーション実施加算については、専用の計画書を別途作成するのではなく、通所リハビリテーション計画書に必要な内容を記載する方法も検討されています。
⑧ 短期入所・認知症対応型サービス|利用者の状態に応じたサービス提供
短期入所生活介護や短期入所療養介護についても、利用者の状態やサービス提供の実態を踏まえた報酬のあり方が検討対象となっています。
高齢者の医療・介護ニーズが複雑化する中で、短期入所サービスには、在宅生活の継続を支える役割や、家族の介護負担を軽減する役割が求められています。また、認知症対応型通所介護では、認知症の方の状態に応じた専門的な支援を適切に評価するため、基本報酬や重度の認知症高齢者を受け入れる事業所への評価の見直しが検討されています。さらに、認知症の方が地域活動に参加したり、自分の意思で生活を送ったりするための支援を評価する、新たな報酬設定も提案されています。
2027年度介護報酬改定に向けて、介護事業所が準備しておきたいこと
2027年度(令和9年度)の介護報酬改定では、介護職員の処遇改善や人材確保、ICT・AIの活用による生産性向上、加算の算定要件の見直しなど、介護事業所の運営に関わるさまざまな議論が進められています。
現時点では具体的な改定内容が決定していないため、すぐに大きな変更を行う必要はありませんが、今のうちから事業所の運営状況を確認し、改定に備えておくことが大切です。
まず確認しておきたいのが、現在算定している加算の内容や算定要件です。今回の改定では、処遇改善加算をはじめ、各サービスに設けられている加算の要件や評価方法について見直しが検討されています。現在の加算の算定状況や要件を整理しておくことで、今後変更があった際に、どのような対応が必要になるのかを把握しやすくなります。
さらに、物価高騰や人件費の上昇が続く中で、事業所の経営状況を把握しておくことも欠かせません。サービスごとの収支や人件費、稼働率などを確認し、報酬単位や加算が変更された場合にどのような影響があるかを検討できるようにしておくことが重要です。
あわせて、虐待防止やBCP(業務継続計画)、ハラスメント対策など、すでに求められている運営上の取り組みについても、改めて実施状況を確認しておきましょう。計画や指針を整備するだけでなく、研修や訓練、委員会の開催などが適切に行われているかを確認することが大切です。
2027年度介護報酬改定の具体的な内容は、今後の社会保障審議会での議論を経て明らかになっていきます。厚生労働省から公表される最新情報を継続的に確認し、正式な改定内容が示された段階で、必要な対応を整理していきましょう。
2027年度の介護報酬改定の今後のスケジュール(見込み)
2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けて、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会では、各サービスの課題や具体的な見直し案について議論が進められています。
今後は、これまでの議論を踏まえて改定内容の具体化が進み、報酬単位や加算の算定要件などが順次明らかになっていく見込みです。
ここでは、「令和9年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)」を参考に、2027年度介護報酬改定に向けた今後の主なスケジュールを紹介します。なお、記載している時期は現時点での見込みであり、今後変更される可能性があります。
| 時期 | スケジュール |
|---|---|
| 2026年4月~夏頃 | 【実施済み】主な論点について議論・事業者団体等からのヒアリング |
| 2026年秋~12月頃 | 具体的な方向性について議論 |
| 2026年12月中 | 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ |
| 2026年12月下旬 | 政府予算編成のなかで改定率が決定 |
| 2027年1月頃 | 介護報酬改定案の諮問・答申 |
| 2027年度(令和9年度) | 2027年度(令和9年度)介護報酬改定施行 |
まとめ|2027年度介護報酬改定は人材確保と生産性向上が大きなポイント
2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けて、社会保障審議会介護給付費分科会では、各サービスの報酬や加算の見直しに加え、介護職員の処遇改善、ICT・AIの活用、地域の実情に応じたサービス提供体制の整備など、幅広い議論が進められています。
また、骨太方針2026では、介護保険の利用者負担の見直しや、介護人材の確保、物価高騰への対応など、今後の介護保険制度改革に関わる方向性が示されています。
今回の改定では、介護サービスの質を維持・向上させながら、人材不足や物価高騰といった課題に対応し、持続可能な介護保険制度を構築していくことが重要なテーマとなっています。
ただし、現時点では議論の途中であり、具体的な報酬単位や加算の算定要件、制度変更の内容がすべて決定したわけではありません。
介護事業所にとっては、今後の改定内容によって運営方法や収支、日々の業務に影響が生じる可能性があります。厚生労働省から公表される最新情報を確認しながら、自事業所に関係する変更点を把握し、必要な準備を進めていくことが大切です。
2027年度介護報酬改定の動向を引き続き注視し、制度変更に適切に対応できるよう備えていきましょう。
※本記事は、厚生労働省が公表している資料などをもとに、2026年10月時点の情報をまとめたものです。掲載内容は今後の議論によって変更される可能性があります。最新かつ正確な情報については、厚生労働省が公表する公式資料をご確認ください。
介護ソフトの「トリケアトプス」は2027年度の介護報酬改定に対応予定です
2027年度の介護報酬改定にあたり、介護事業所では新たな制度への対応が求められます。
介護ソフト「トリケアトプス」では、2027年度の介護報酬改定にも対応予定です。 制度改正に伴う事務作業の負担をできるだけ抑え、日々の業務をスムーズに進められるようサポートします。介護ソフトの導入や乗り換えをご検討中の方は、ぜひこの機会にトリケアトプスをご検討ください。