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介護の基礎知識

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)|処遇改善加算の単位数や算定要件、計算方法をわかりやすく解説

  • 公開日:2025年12月03日
  • 更新日:2025年12月03日

介護職員等処遇改善加算は、介護職員をはじめとする介護事業所で働く職員の賃金向上や職場環境の改善を目的とした加算です。介護業界における人材不足の解消を目指し設立されました。2024(令和6)年度の報酬改定により、従来の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」が統合され、新たに「介護職員等処遇改善加算」が創設されました。この記事ではグループホーム(認知症対応型共同生活介護)の介護職員等処遇改善加算の単位数や算定要件、計算方法についてまとめていますので、日々の業務にお役立てください。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の介護職員等処遇改善加算の単位数

グループホームの介護職員等処遇改善加算の単位数はサービス類型によって異なります。グループホームの単位数(加算率)は以下の通りです。(介護予防を含む)

区分 単位数(加算率)
介護職員等処遇改善加算(Ⅰ) 186/1000
介護職員等処遇改善加算(Ⅱ) 178/1000
介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) 155/1000
介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) 125/1000

※介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)は、経過措置として令和7年3月31日まで算定が可能でしたが、現在は算定できません。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の介護職員処遇改善加算の算定単位数の計算方法

処遇改善加算の算定単位数の計算方法は、1ヶ月あたりの総単位数に、サービス類型別の加算率を掛け合わせることで算出できます。

処遇改善加算の計算をするためには、まず1ヶ月あたりの総単位数を求めます。1ヶ月あたりの総単位数を求める計算式は、以下のとおりです。

  • 1ヶ月あたりの総単位数 = 前年度1~12月の介護報酬総単位数 ÷ 12

1ヶ月あたりの総単位数が算出できたら、次の計算式で処遇改善加算の加算単位数を求めます。

  • 加算単位数=1ヶ月あたりの総単位数×サービス類型別加算率

グループホームのサービス類型別加算率は「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の介護職員等処遇改善加算の単位数」でご紹介した通りです。

処遇改善加算の算定要件

算定要件は「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」の3つの要件区分に分かれます。それらの要件をどの程度満たすかによって、介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅳ)の4つのどの区分に当てはまるかが決まります。区分分けの表は以下の通りです。

「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」の3つの要件区分については以下の通りです。

キャリアパス要件

(Ⅰ) 介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する
(Ⅱ) 介護職員の資質向上の目標や以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施または研修の機会を確保する
a:研修機会の提供又は技術指導等の実施、介護職員の能力評価
b:資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助等)
(Ⅲ) 介護職員について以下のいずれかの仕組みを整備する
a:経験に応じて昇給する仕組み
b:資格等に応じて昇給する仕組み
c:一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
(Ⅳ) 経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であること
(Ⅴ) サービス類型ごとに一定割合以上の介護福祉士等を配置していること

月額賃金改善要件

(Ⅰ) 新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる
(Ⅱ) 前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給等の改善(月給の引上げ)を行う

職場環境等要件

2024年度の介護報酬改定により、介護職員等処遇改善加算に新たに「職場環境等要件」が導入されました。この要件は6つの区分に分かれており、従来よりも細分化され、より具体的な条件が設定されています。

特に「生産性向上のための取組」については、定められた具体的な内容のうち3つ以上を満たすことに加え、「生産性向上ガイドラインに基づき、業務改善活動の体制構築を行っていること」「現場の課題の見える化を実施していること」が求められます。

入職促進に向けた取組

  • 法人や事業所の経営理念やケア方針
  • 人材育成方針、その実現のための施策
  • 仕組みなどの明確化
  • 事業者の共同による採用
  • 人事ローテーション
  • 研修のための制度構築
  • 他産業からの転職者・主婦層・中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築
  • 職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施

資質の向上やキャリアアップに向けた支援

  • 働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対するユニットリーダー研修、ファーストステップ研修、喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等
  • 研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
  • エルダー・メンター制度等導入
  • 上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ・働き方等に関する定期的な相談の機会の確保

両立支援・多様な働き方の推進

  • 子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備
  • 職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備
  • 有給休暇を取得しやすい雰囲気・意識作りのため、具体的な取得目標を定めた上で、取得状況を定期的に確認し、身近な上司等からの積極的な声かけを行っている
  • 有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消を行っている

腰痛を含む心身の健康管理

  • 業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実
  • 短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断
  • ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施
  • 介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、職員に対する腰痛対策の研修、管理者に対する雇用管理改善の研修等の実施
  • 事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備

生産性向上のための業務改善の取組

  • 厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ、外部の研修会 の活用等)を行っている
  • 現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している
  • 5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている
  • 業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている
  • 介護ソフトおよび情報端末の導入
  • 介護ロボットの導入 ・業務内容の明確化と役割分担を行った上で、間接業務については、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担い、介護職員がケアに集中できる環境を整備
  • 各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施

やりがい・働きがいの醸成

  • ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善
  • 地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施
  • 利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供
  • ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供
参考:厚生労働省老健局老人保健課「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え並びに事務処理手順及び様式例の提示について(案)の送付についてP23表5-1職場環境等要件の一部を抜粋」

2024年度新処遇改善加算の賃金配分ルール

新処遇改善加算では、職種ごとの配分ルールが廃止されました。「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある介護職員に重点的に配分しつつ、事業所内で柔軟な配分を認める」とされており、介護職員以外への配分も可能になっています。

配分ルールの撤廃により、2024年度新処遇改善加算から介護職員以外の加算が割り振り可能になりました。具体的にはパートや派遣職員が加算の対象となります。注意点として、柔軟な配分は認められていますが、職務内容や勤務実態に見合わない著しく偏った配分は禁止されています。例えば「一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させる」「同一法人内の一部の事業所だけに賃金改善を集中させる」などは行わないよう注意しましょう。

介護職員等処遇改善加算の取得手順

介護職員等処遇改善加算を算定するには、「体制等状況一覧表」「処遇改善計画書」「実績報告書」などの提出が必要です。 それぞれの書類には注意点があるため、取得に向けた流れとあわせて、以下で詳しく解説します。

手順①体制等状況一覧表(体制届出)を提出する

新加算等を算定するには、介護サービス事業ごとに「体制等状況一覧表」などの必要書類を提出する必要があります。
提出期限は、居宅系サービスは前月15日まで、施設系サービスは当月1日までとなっており、事業所の所在地を管轄する都道府県知事や市町村長へ提出します。

手順②処遇改善計画書の作成・提出

新加算等を算定するためには、改正後の基準に基づいた「処遇改善計画書」や「特定処遇改善計画書」を作成し、初めて算定する月の前々月末までに都道府県知事などへ提出する必要があります。
また、作成した書類は、根拠資料とともに2年間保存することが求められます。ただし、確認に十分な時間が確保できる場合、提出期限の延長が可能です。

加算算定により利用者の自己負担額が増加するため、加算取得前に重要事項説明書や同意書を更新し、利用者やその家族へ説明・交付し、同意を得ることが必要です。同意書の提出タイミングは明確には決まっていませんが、処遇改善計画書と同時期に提出する可能性が高いと考えられます。

手順③施策の実施

体制等状況一覧表(体制届出)の提出が完了し、処遇改善計画書の作成・提出が終わったら、計画書に基づいた施策を実行します。

手順④実績報告書の作成・提出

新加算等を算定した介護サービス事業所は、大臣基準告示に基づき、実績報告を別紙様式3-1および3-2に沿って作成し、各事業年度における最終の加算支払があった月の翌々月末までに、都道府県知事等へ提出する必要があります。
また、根拠資料は2年間保存することが求められます。

処遇改善加算を算定する際の注意点

新処遇改善加算の算定要件を満たすことを確認した上で加算を算定する

新処遇改善加算への移行にあたり、算定要件が変更されています。算定要件を満たさないことに気が付かず加算を算定した場合、不正請求と判断され、加算額の全額返還行政処分の対象となる可能性があるため、算定要件を満たすかよく確認するようにしましょう。

処遇改善加算に関する書類・記録はしっかり保管する

処遇改善加算の実施状況は、運営指導の際に確認されます。以下の書類や記録が確認対象となるため、2年間は必ず保管しましょう。

  • 処遇改善計画書・報告書
  • 職員への周知方法
  • 研修や職場環境の改善に関する記録
  • 雇用契約書
  • 給与の支払い状況(賃金台帳など)
  • 職員への適切な分配が確認できる証憑

規程を変更した際は届出を忘れない

処遇改善加算の取得に伴い、運営規程賃金規程などの作成・変更が必要となる場合があります。変更があった際は、以下の届出を忘れないよう注意しましょう。

  • 運営規程 → 指定権者へ届出
  • 賃金規程 → 労働基準監督署へ届出

加算の総額以上の賃金改善を行う

2025年度への繰越額を除く、処遇改善関連の加算の全額以上の賃金改善が必要です。加算を算定するには、「2024年度の加算額-2025年度への繰越額≦2024年度の賃金改善額」である必要があります。

前年度と比較して、加算の増加分以上の賃金改善を行う

2023年度と比較して増加した加算額以上の新たな賃金改善が求められます。基本的には、ベースアップ(基本給や毎月支払われる手当の一律引き上げ)が推奨されていますが、難しい場合はその他の手当やボーナスによる対応でも問題ありません。

加算以外の部分で賃金を引き下げない

処遇改善加算は、現在の賃金に上乗せして賃上げを行うためのものです。そのため、現在の賃金を引き下げ、その分を処遇改善加算で補填することはできません。

最後に

介護職員等処遇改善加算は、介護職員の賃金向上や職場環境改善を目指し、2024年度の報酬改定で新たに統合されました。従来の加算制度を簡素化し、事務負担の軽減や柔軟な運営を促進します。新加算は、キャリアパスや賃金改善、職場環境の向上を要件として、介護事業所の待遇改善に確実に繋がるよう設計されています。また、賃金配分のルールが柔軟になり、介護職員以外への配分も可能となりました。

事業所運営の安定のためにも算定要件や算定の流れをよく理解し、加算を取得するようにしましょう。

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