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介護の基礎知識

デイサービスの送迎における注意点とは?送迎範囲や送迎記録のルール

  • 公開日:2025年10月22日
  • 更新日:2025年10月22日

デイサービスを利用するうえで欠かせないのが「送迎サービス」です。自宅から施設までの移動をサポートすることで、利用者が安心して通所サービスを受けられるようになります。しかし、送迎には送迎範囲のルールや送迎記録など、事業所が気をつけなければならないポイントも多くあります。本記事では、デイサービスの送迎における注意点とあわせて、送迎範囲や送迎記録のルールについてわかりやすく解説していきます。

デイサービスの送迎業務とは?

デイサービスの送迎とは、利用者の自宅とデイサービス事業所の間をスタッフが車で送り迎えするサービスのことです。高齢者の中には、身体的な理由や認知症の影響で公共交通機関の利用や自力での移動が難しい方も多くいらっしゃいます。そのため、送迎はデイサービス利用に欠かせない大切な支援のひとつといえます。

具体的な業務内容は以下の通りです。

  • 福祉車両を運転し利用者の送迎をする
  • 送迎ルートの作成
  • 福祉車両の管理
  • 送迎記録の作成
  • 緊急時の連絡対応

また、事業所によっては、車いす対応車両やリフト付きの車を導入しており、介助が必要な方でも安心して利用できるよう工夫されています。

また、送迎の際はスタッフがご家族に利用者の様子を伝えたり、逆にご家族から体調や生活の変化について聞き取ったりする場面もあります。そのため、送迎は「移動」だけでなく、「コミュニケーションの時間」としての役割も果たしています。

このように、デイサービスの送迎は高齢者の通所を支える重要なサービスであり、安心して日常生活を送るための大切な支援となっています。

デイサービスの送迎は必須?行わない場合はどうなるの?

デイサービスの送迎は必須ではありません。しかし、事業所が送迎を行わない場合には減算が発生します。

この減算は、利用者自身が通所する場合や家族が送迎を行うなど、事業所が送迎を行わない場合に適用されます。ただし、「同一建物から通う場合の減算」が適用されている場合は、送迎減算の対象外となる点に注意が必要です。

算定単位数: 片道…−47単位/日 往復…−94単位/日
算定要件:利用者に対して居宅と事業所の間の送迎を行わない場合

デイサービスの送迎業務に必要な資格

デイサービスの送迎業務をするには、「普通自動車第一種免許」が必要です。事業所によってはバスで送迎をするケースもあるので、その場合は中型・大型の自動車免許の取得が必要になる場合もあります。

送迎業務を行うだけなら自動車免許があれば良いですが、送迎業務の際には利用者の降車介助を必要とするケースもありますので、介護福祉士や介護職員初任者研修など、介護業務に必要な資格があると安心です。介護職員初任者研修の資格は、2週間から3カ月程度で取得可能です。

デイサービスの送迎の基本的なルール

デイサービスの送迎には、以下のような基本的なルールがいくつか存在します。

送迎は原則利用者の自宅と事業所の間

デイサービスの送迎は、原則として「利用者の自宅」と「事業所(施設)」の間を対象としています。通常は、利用者の自宅玄関での乗降が基本ですが、転倒リスクが高い方や身体状況によっては、自室内まで介助を行う場合もあります。たとえば、ベッドからの起き上がりや車いすへの移乗など、安全を確保するために必要な支援が求められるケースです。

一方で、送迎先が自宅以外(例:駅・病院・親族宅など)であることは原則認められていません。ただし、利用者または家族のやむを得ない事情がある場合に限り、例外的に自宅以外への送迎が可能となることもあります。その際は、各自治体(市町村)による判断が必要であり、事前に相談・確認を行うことが重要です。

また、令和3年度の介護報酬改定では、通院時の乗降介助に関する制度(通院等乗降介助)の内容が見直されました。これにより、事業所と病院間の送迎なども条件付きで対応できるようになりましたが、自宅と事業所間の送迎を行わない場合は「送迎減算」が適用される点に注意が必要です。

令和6年度の介護報酬改定にて利便性の向上や運転専任職の人材不足等に対応する観点から、送迎先について利用者の居住実態のある場所を含めるとともに、他の介護事業所や障害福祉サービス事業所の利用者との同乗が可能となりました。

送迎範囲は施設ごとに区間が異なる

利用者の送迎にかかる距離や時間は、事業所ごとに異なります。施設から5分程度で到着するケースもあれば、30分ほどかかる場合もあります。

多くの施設では送迎範囲をあらかじめ区間で定めているため、1時間以上かけて送迎することはほとんどありません。

ただし、地域によっては介護施設が一つしかないケースもあり、そのような場合には長時間の送迎が必要になることもあります。

送迎記録を残す必要がある

デイサービスにおいて送迎を実施した場合には、適正にサービスが提供されたことを示す証拠として「送迎記録」を残すことが推奨されます。「送迎記録」とは、主に誰を・いつ・どこから・どこまで送迎するかといった情報が一覧で整理されている書類です。これは、通所介護の提供時間の確認や、介護報酬請求の正当性を証明するためにも重要な役割を果たします。記録方法については推奨されている記録様式はありませんが、出発時間や到着時間などの項目は送迎の管理や運営に役立つため、記録しておくと良いでしょう。

通所介護事業所を対象とした運営指導(旧:実地指導)の際には、「送迎記録」が確認文書のひとつとしてチェックされます。記録がない送迎は“サービスを提供した証拠がない”と見なされてしまう可能性があるため、自治体によって異なる部分ではありますが、送迎時間についての記録は残しておいたほうが望ましいでしょう。

送迎記録について詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
デイサービスの送迎表の記入項目とルート作成の効率化を行うポイントや作成における注意点

デイサービスの送迎を行う際の注意点

最適なルートで送迎する

デイサービスの運営において、送迎業務は職員の負担が大きく、時間や人手を大きく左右する重要な業務のひとつです。特に送迎ルートの組み方次第で、移動時間・待機時間・ガソリン代・人件費に大きな差が出ます。ルート作成は単純な距離だけでなく、実際の走行時間や交通状況(朝夕の渋滞など)も考慮することで、効率的に送迎が行えます。特に都市部では「近いのに遅い」「一方通行で遠回りになる」などの落とし穴があります。また、送迎対象の利用者の住所を地図上で整理し、エリアごとにグループ分けをしてからルートを組むと、無駄な移動を減らせます。地図アプリや介護ソフトの地図機能を活用するとスムーズです。

また、デイサービスの送迎では、事業所から遠い利用者から先にお迎えに行くのが一般的なルート設計の基本です。最初に遠い方をお迎えし、次々と近場の利用者を乗せながら事業所に向かうと、車内での待機時間を最小限にできます。

「乗車時間」「体調の配慮」「道路の混雑状況」についても考慮する必要があるため、必ずしも近い順とは限らない点に注意が必要です。

時間に余裕をもって送迎を行う

送迎ルートの確認や準備は、できるだけ早めに行うことが大切です。時間に余裕を持つことで、利用者に安心感を与えるだけでなく、安全な送迎にもつながります。

反対に、焦ってしまうと運転が乱暴になったり、事故のリスクを高めてしまう恐れがあります。落ち着いて対応できるよう、余裕を持ったスケジュールを意識しましょう。

事前に福祉車両の操作確認を行う

デイサービスの送迎では、福祉車両を使用するのが一般的です。

福祉車両には、車椅子のまま乗り降りできるリフトや、乗降をサポートするシートなど、ご高齢の方が移動しやすい工夫が施されています。

ただし、福祉車両には通常の自動車とは異なる操作が必要な場合があります。そのため、送迎前に操作方法を確認しておくことが大切です。事前に確認しておけば、スムーズな介助と安全な送迎につながります。

ご家族や利用者に、お迎えが遅れるケースがあることを伝えておく

送迎業務は、できるだけ定時に沿って行うことを基本としていますが、以下のような理由で予定より到着が遅れるケースも発生します。

  • 交通渋滞や悪天候による遅延
  • 先に訪問した利用者への介助に時間がかかった
  • 体調不良等による急なキャンセルや順番の変更
  • 道路工事・通行止めなどによるルート変更

こうした予期せぬ事態に備えて、あらかじめご家族や利用者に「多少の前後がある場合がある」ことを伝えておくことで、無用な不安や混乱を防ぐことができます。

利用者やご家族と積極的にコミュニケーションをとる

デイサービスの送迎は自宅まで行うため、利用者のご家族と接する機会が多くあります。

その際には、利用時の様子や体調を伝えるだけでなく、ご自宅での状況を伺うなど、日ごろからコミュニケーションを重ねて信頼関係を築くことが大切です。

送迎業務は、施設とご家族をつなぐ橋渡しの役割も担っています。利用者やご家族に安心していただけるよう、円滑なコミュニケーションを心がけましょう。

乗降時は利用者をサポートする

足腰が弱い利用者にとっては、車の乗り降りも大きな負担となる場合があります。実際に、送迎車のステップを踏み外して転倒してしまうなど、乗降時の事故が起こるケースも少なくありません。

そのため、乗降の際には細心の注意を払うことが必要です。また、介助に関する知識やスキルをしっかりと身につけることで、利用者が安心して身を任せられる信頼関係を築くことができます。

まとめ

デイサービスの送迎は、利用者の安全と安心を守るサービスです。送迎範囲は事業所ごとに定められており、無理のない運行計画を立てることが重要です。さらに、送迎記録の作成・保管は介護保険制度において必須であり、利用者の乗車・降車の時間や状況を正確に記録することで、事故防止やトラブル回避にもつながります。
送迎は単なる移動手段ではなく、利用者と家族に安心を届ける重要な役割を担っています。安全性・効率性・法令遵守を意識しながら、質の高い送迎サービスを提供しましょう。

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