介護の基礎知識
住所地特例とは|ケアマネが行うべき手続きは何があるの?
- 公開日:2026年02月27日
- 更新日:2026年02月27日
利用者が施設へ入所し、住民票を移した――そんなときに出てくるのが「住所地特例」です。住所と保険者が一致しないこの制度は、仕組みを理解していないと混乱しやすく、「ケアマネは何か手続きをするの?」と迷う場面も少なくありません。
この記事では、住所地特例の基本的な仕組みを踏まえたうえで、居宅ケアマネジャーが実務として押さえておきたい確認事項や注意点をわかりやすく整理していきます。
住所地特例とは?
住所地特例とは、対象となる施設に入所・入居し、その施設のある市町村へ住民票を移した場合でも、入所前に住んでいた市町村が引き続き介護保険の保険者になる仕組みです。本来、介護保険は住民票のある市町村が保険者となりますが、施設入所によって住所を移した場合には例外が設けられています。
住所地特例は、介護施設の多い市町村に介護給付費の財政負担が偏ってしまうのを防ぐ役割があります。そのため、住所地特例が適応された場合は、施設所在地の市町村ではなく、入所前に住んでいた市町村が保険者として介護保険を引き続き担当します。
また、対象施設から別の対象施設へと続けて入所した場合でも、原則として最初に住所地特例が適用された市町村がそのまま保険者となります。施設を移るたびに保険者が変わるわけではありません。
つまり住所地特例とは、「施設に入って住民票を移しても、介護保険は入所前の市町村が引き続き担当する仕組み」といえます。
住所地特例の対象者
住所地特例の対象となるのは、介護保険の被保険者のうち、対象施設へ入所・入居し、その施設所在地へ住民票を移した人です。単に入居しただけで住民票を移していない場合は対象になりません。なお、要介護認定を受けているかどうかは関係なく、要支援の方やまだ認定を受けていない自立の方であっても、条件を満たせば住所地特例の対象となります。
住所地特例の対象施設
対象となるのは、いわゆる介護保険施設である 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院に加え、有料老人ホームや軽費老人ホーム、養護老人ホームなどの老人ホームです。
また、サービス付き高齢者向け住宅であっても、有料老人ホームの定義に該当する場合は住所地特例の対象になります。具体的には、
①入浴・排せつ・食事の介護
②食事の提供
③洗濯や掃除などの家事支援
④健康管理
上記のうち、いずれか一つ以上のサービスを提供している場合が該当します。
また、介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目的としたリハビリ施設であり、原則として長期入所を前提とする施設ではありません。そのため、基本的には住民票を置くことは想定されていません。
ただし、実際の生活の本拠が施設に移っていると認められる場合など、一定の条件を満たせば住民票の異動が認められるケースもあります。例えば、「1年以上の入所が見込まれている」「在宅復帰が現実的に困難である」といった事情がある場合です。住民票の取り扱いについては自治体ごとに判断や運用が異なるため、実際に住民票を移せるかどうかは、事前に施設や市町村窓口へ確認することが重要です。
住所地特例の対象外となる施設
地域密着型サービスは基本的に保険者の市町村にある事業者のみ利用が可能なため、住所地特例の対象外となります。
- グループホーム(認知症高齢者共同生活介護)
- 地域密着型(定員29人以下)の特別養護老人ホーム
- 地域密着型(定員29人以下)の介護付き有料老人ホーム等
利用者が住所地特例になった場合にケアマネがやるべきこと
利用者が住所地特例になった場合、施設サービスに入所した場合はケアマネは原則関与しません。ですが、居宅系施設に入所した場合は居宅ケアマネが担当を継続するため、注意が必要です。
施設サービスに入所した場合
利用者が以下のような施設サービスに入居する場合は、居宅ケアマネではなく施設ケアマネが給付管理を行うため、居宅ケアマネは契約終了となり、原則関与しません。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
居宅系施設に入所した場合
利用者が以下のような居宅系施設に入居する場合は、引き続き居宅ケアマネが担当を継続します。
- 有料老人ホーム
- 軽費老人ホーム(ケアハウス)
- 養護老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
この場合は居宅ケアマネが担当を継続するため、これまでどおり居宅サービス計画の作成と給付管理が必要になります。
居宅系施設で住所地特例の対象になる場合の注意点
居宅系施設に入居する場合でも、住所を施設所在地へ移すと住所地特例の対象になることがあります。この場合にまず注意したいのは、「住民票を移したかどうか」と「その施設が住所地特例の対象施設に該当するかどうか」の確認です。単に入居しただけでは適用されず、実際に住民票を異動してはじめて住所地特例が成立します。
住所地特例が適用されると、住民票を移した先の市町村ではなく、入居前に住んでいた市町村が引き続き保険者となります。そのため、被保険者証に記載されている保険者名や保険者番号を必ず確認し、給付管理の提出先に誤りがないようにすることが重要です。見た目の住所と保険者が一致しないため、思い込みで処理すると請求誤りにつながるおそれがあります。
また、負担割合証や負担限度額認定証などの発行元も、住所地特例では元の市町村になります。更新時期や再発行の手続き先を誤らないよう、利用者や家族にも事前に説明しておくとトラブル防止につながります。
さらに、施設を退去した場合や、別の住所地特例対象施設へ転居した場合には、保険者の扱いがどうなるかをあらためて確認する必要があります。特に複数の対象施設を継続して利用するケースでは、どの市町村が保険者となるのかが通常の住所変更と異なるため、都度被保険者証で確認することが実務上の安全策です。
住所地特例の際にケアマネが行うべき手続きはあるの?
住所地特例の際、ケアマネが申請手続きを行う場面は基本的にはありません。住所地特例は介護保険法に基づく制度で、住民票の異動や保険者の整理は基本的に市町村間で処理されます。
そのため、
- 住所地特例の申請書をケアマネが提出する
- 保険者変更届を作成する
といった制度上の手続きは通常ありません。
しかし、手続きはなくても、確認責任はあります。具体的には、
- 被保険者証の保険者名の確認
- 保険者番号の確認
- 負担割合証の発行元の確認
- 給付管理提出先の確認
これらを怠ると請求誤りにつながります。特に住所地特例は「住所と保険者が一致しない」ため、思い込みミスが起きやすい部分です。
ご家族が行うべき手続き
住所地特例の場合、ケアマネは申請手続きを行わない場合が多いですが、利用者のご家族で手続きが必要になります。
多くの市区町村では、特例対象施設への入所時/他施設への移転時/退所時に介護保険住所地特例適用・変更・終了届を提出することが求められます。
例えば奈良市では『介護保険住所地特例適用・変更・終了届』を奈良市役所介護福祉課へ提出する必要があります。
また施設が入退所連絡票を自治体に提出することを求められるケースもあります。
具体的な手順は以下の通りです。
① 元の市町村で転出届を出す
まず、これまで住んでいた市町村の市民課などで転出届を提出します。この時点では通常の転出と同様の手続きです。あわせて、介護保険課にも入所予定であることを伝えます。
② 介護保険課での確認
対象施設(例:特別養護老人ホーム など)へ入所することを伝えます。
自治体によっては、以下が求められることがあります。
- 住所地特例適用届の提出
- 被保険者証の回収
- 後日差し替え発行の案内
③ 転出証明書を受け取る
市民課から転出証明書を受け取ります。これは住民票の異動に必要な書類です。
④ 施設所在地の市町村で転入届を出す
入所先の市町村で転入届を提出します。
⑤ 被保険者証の再交付
元の市町村(保険者)から、住所が書き換えられた介護保険被保険者証負担割合証などが送付されます。このとき、保険者名は「元の市町村」のままになっています。
まとめ
住所地特例とは、対象施設へ入所して住民票を移しても、入所前の市町村が引き続き介護保険の保険者となる制度です。
ケアマネジャーが特別な申請を行うわけではありませんが、対象施設かどうか、住民票を移したか、保険者がどこになるのかを必ず確認することが重要です。自治体によっては届出を求められる場合もあるため、最終的には保険者への確認が必要になります。
住所地特例のポイントは、「住民票の所在地」と「介護保険の保険者」が一致しないことがあるという点です。この仕組みを正しく理解し、利用者・家族へ説明できることがケアマネジャーに求められる役割といえるでしょう。