介護の基礎知識
介護の「申し送り廃止」とは?メリットや時間削減の成功事例をご紹介
- 公開日:2025年06月05日
- 更新日:2025年06月05日

介護の現場で長年当たり前のように行われてきた「申し送り」。職員同士の情報共有に欠かせないものとされてきましたが、近年では「申し送りを廃止した」「記録中心に切り替えた」という施設も増えてきました。
なぜ今、申し送りの見直しが進んでいるのでしょうか? その背景には、業務の効率化や職員の負担軽減、そしてケアの質を高めたいという現場の切実な声があります。本記事では、「申し送り廃止」の意味や目的、具体的なメリット、そして実際に時間削減に成功した施設の事例をご紹介します。
介護の申し送りとは?
介護における「申し送り」とは、職員同士が利用者の状態やケアの内容、注意事項などを共有するための情報伝達のことを指します。主にシフト交代時やチーム内の連携の場面で行われ、質の高いケアの提供と事故防止のために行う業務です。異常や変化を次のスタッフに伝えることで、事故や見落としを防ぎます。
申し送りでは主に以下の項目を共有します。
- バイタルサイン(体温・血圧など)の変化
- 食事・排泄・睡眠状況
- 転倒・体調不良・誤薬・異常行動などのトラブル
- 医師・家族からの指示や連絡事項
- 当日の行事予定や役割分担
介護の「申し送り廃止」とは?
申し送りの「廃止」は、申し送りを「やらない」ことではなく、「非効率な口頭申し送りをやめ、記録・システム中心の共有方法に移行する」という業務改革の一環です。ただし、人の観察力や感覚に頼る部分もある介護現場では、全てを記録だけに頼るのではなく、必要に応じて短時間の声掛けや補足共有が求められる場面もあります。
「介護の申し送りの廃止」という概念は、特定の個人が提唱したものではなく、現場の業務改善や効率化の必要性から、複数の医療・介護施設で自然発生的に取り組まれてきたものです。その中でも、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、看護業務の効率化を目的とした申し送りの見直しが進められました。
申し送り廃止の先駆的な事例

1998年(平成10年)、ある病院の看護部が業務改善の一環として「申し送り廃止」を目標に掲げ、看護記録の充実や勉強会を通じて段階的に申し送りの部分廃止から全面廃止へと移行しました。その結果、ベッドサイドケアの時間が増加し、看護記録も充実するなどの成果が報告されています 。
この取り組みは、看護業務の効率化とケアの質向上を目的としたものであり、以下のような具体的な成果が得られました。
- ベッドサイドケアの時間増加:申し送りに費やしていた時間を削減することで、看護師が患者のベッドサイドで直接ケアを行う時間が増加しました。これにより、患者とのコミュニケーションが深まり、より質の高い看護が提供できるようになりました。
- 看護記録の充実:申し送りを廃止するにあたり、看護記録の内容を充実させる必要がありました。これにより、記録の質が向上し、情報の共有がスムーズになりました。また、記録を通じて看護師間の情報伝達が確実に行われるようになり、業務の標準化にも寄与しました。
- 業務の効率化:申し送りの廃止により、看護師が業務開始前に集まる必要がなくなり、業務の効率化が図られました。これにより、時間外労働の削減や業務のスムーズな引き継ぎが可能となりました。
このように、申し送りの廃止は看護業務の改善に大きく寄与し、患者ケアの質向上にもつながることが示されました。現在でも、多くの医療機関がこの取り組みを参考に、業務の見直しや効率化を進めています。
申し送り廃止のメリット
介護現場における「申し送りの廃止(または見直し)」には、業務効率の向上や情報共有の質の改善など、多くのメリットがあります。代表的なメリットは以下の通りです。
業務効率の向上
介護現場では、シフトの交代時に行われる申し送りが長引いてしまい、本来のケア業務の時間が圧迫されることがしばしばあります。申し送りを廃止し、記録を中心とした情報共有に切り替えることで、このような非効率を解消できます。職員同士が一堂に会して情報を伝達する必要がなくなるため、交代時間に余裕が生まれ、業務の流れがスムーズになります。また、情報を記録で確認できる体制を整えることで、必要なときに必要な情報だけを効率よく確認できるようになり、無駄な動きが減ります。
情報共有の質の向上

口頭による申し送りは、伝える側の表現力や受け取る側の理解力に左右されるため、情報が曖昧になったり、重要な点が抜け落ちたりするリスクがあります。一方で、申し送りを廃止して記録による情報共有を徹底すると、誰が読んでも同じ内容を把握できるようになります。特にデジタル化されたシステムを使えば、複数の職員が同時に情報にアクセスできるため、リアルタイムでの連携も容易になります。このように記録中心の情報共有体制は、情報の正確性と信頼性を高め、現場での判断ミスやケアのズレを防ぐことにつながります。
属人化の防止と業務の標準化
申し送りは、経験豊富な職員が行うと的確で分かりやすいものになりますが、逆に言えば、その人に頼りきりになってしまう「属人化」が起こりがちです。つまり、情報の伝達力が人によってバラつくという課題があります。しかし申し送りを記録に一本化することで、このような属人化を防ぎ、誰でも同じレベルで情報を受け取れる仕組みがつくれます。結果として、職員のスキル差に左右されない、標準化されたケアが実現できるようになります。
職員のストレス軽減

申し送りは単なる情報共有の場であると同時に、職員にとっては「遅刻できない」「時間通りに揃わなければならない」といったプレッシャーの源にもなっていました。特に早番や夜勤明けなど、タイムスケジュールがタイトな中で行われる申し送りは、心身の負担を大きくしていたと言えます。申し送りを廃止すれば、そうした時間的・心理的なストレスから解放され、自分のペースで記録を確認・入力できるようになります。これにより、働きやすい職場環境の実現にもつながります。
ケアの質の向上
申し送りを記録に置き換えることで、職員はケア業務そのものにより多くの時間と意識を向けることができるようになります。シフト交代時に長時間申し送りに費やすことなく、利用者の様子を観察したり、直接関わったりする時間が確保されるため、より丁寧なケアが可能になります。また、記録がしっかり残されることによって、過去の状態や対応を振り返ることができ、ケアの改善やリスクマネジメントにも役立ちます。このように、申し送りの廃止は、ケアの質そのものを高める基盤づくりにもつながるのです。
介護の申し送り廃止の手順

以下では介護現場における申し送り廃止の手順を解説します。単に「やめる」のではなく、「代替手段を整えながら段階的に見直す」ことが重要です。
1. 申し送りの目的と課題を整理する
まず初めに行うべきは、申し送りが現場で果たしている役割と、そこに潜む課題を明確にすることです。たとえば「利用者の急変を確実に共有する」「情報の抜けを防ぐ」などの目的がある一方で、「時間がかかる」「伝達ミスがある」「属人的になっている」といった課題も見えてくるはずです。これらを整理することで、申し送りそのものを完全に廃止すべきか、部分的に見直すべきかといった方向性を検討しやすくなります。
2. 記録内容を充実させる
申し送りをやめるには、その代替となる「正確な記録」が不可欠です。したがって、申し送りに頼らなくても済むよう、職員が日々記録する内容をより具体的に、かつ観察・判断の根拠が分かるように整えていきます。「何が起きたか」「どう対応したか」「今後の注意点は何か」といった情報を、誰が見ても理解できるように記録することで、申し送りの必要性を減らすことができます。これには記録様式の見直しや、職員への記録研修が有効です。
3. 情報共有のツールを整備する
紙の記録だけでは、リアルタイムの情報共有には限界があります。そこで、多くの現場では、タブレットやPCを活用した介護ソフトやクラウド型の記録システムを導入し、情報共有の仕組みを再構築しています。こうしたICTツールを使えば、複数の職員が同時に記録を確認・入力できるため、申し送りに代わる情報共有手段として非常に有効です。また、重要な情報を「見える化」するために、ホワイトボードや掲示板を活用する事業所もあります。
4. 段階的に申し送りの削減を進める
申し送りの廃止は、一気に行うと現場に混乱が生じるため、段階的に進めるのが現実的です。たとえば、まずは朝の申し送りだけを記録ベースに移行し、夜間の申し送りは残すといった形からスタートします。職員の反応や記録内容の質を確認しながら、徐々に申し送りの頻度や時間を減らしていきます。並行して、「どのような情報は記録に必ず残すべきか」といったルールづくりや、日々の記録のチェック体制も整えていく必要があります。
5. 職員への研修と意識づけを行う
申し送りを廃止・見直すうえで最も大切なのが、職員の理解と協力を得ることです。なぜ申し送りをやめるのか、何をどう代替するのかを丁寧に伝え、不安や疑問を解消することが求められます。また、「記録の重要性」や「情報の伝え方」についての研修を行い、チーム全体で意識をそろえることが成功の鍵です。現場主導で話し合いながら進めることで、単なる業務変更ではなく「質の高いケアを実現するための改革」として定着させやすくなります。
介護の申し送り廃止を成功させるためのポイント

「申し送り廃止」を成功させるためのポイントは以下の通りです。
口頭で話す内容は要点に絞る
申し送りにて、記録を見て理解してもらうべき内容と、口頭で説明する内容は切り分けることが重要です。転倒や誤薬、事故などを次のシフトのスタッフが確実に把握するために、「何が起きたか」は口頭で伝えるようにしましょう。一方、事故の詳しい内容は記録を見てもらうようにします。そうすることで、申し送り時間が短縮するだけでなく、申し送りする人の伝え方に依存しなくなり、情報が正しく伝わります。また記録に残すことでいつでも見返すことができ、後から見返した際も記録が残ります。
10~15分間など、目標時間を決める
申し送りの時間を短縮するためには、「10〜15分で終わらせる」というルール決めや意識付けが大切です。時間を意識するだけでも、無駄のないやり取りが促進され、全体の業務効率が大きく改善します。申し送り時間を短縮することで、出来た時間は利用者との時間や残業時間の削減に充てられます。
目的を明確にする
大切なのは、「なぜ申し送りをやめるのか」という目的を明確にすることです。業務削減だけを目的にしてしまうと、現場から反発が出たり、情報伝達の質が下がったりする恐れがあります。申し送りの廃止は、あくまでより良い情報共有とケアの質向上のための手段であることを、スタッフ全体で共有しましょう。
記録の質を高める
申し送りをなくすには、記録が確実で読みやすく、信頼できるものであることが大前提です。誰が見ても同じように理解できるよう、事実と判断を分ける、具体的に書く、伝えるべき内容の優先順位をつけるといった記録の書き方を整える必要があります。記録をただ「残す」だけでなく、「伝える」ことを意識することが重要です。
ICTの活用でリアルタイム共有
タブレットやスマートフォンなどを使ったICTツールの導入は、申し送り廃止に大きく貢献します。介護ソフトを活用すれば、リアルタイムで記録の閲覧・入力ができ、離れていても最新情報を共有できます。時間や場所にとらわれない情報伝達が可能になることで、口頭の申し送りに依存しない体制をつくることができます。
また、口頭での申し送り時間を削減するためには、記録を詳細に記載することが重要です。そのためには素早く記録が行えるよう、スマホやタブレットでのデジタル化が重要です。手書きの記録だと記録を行う時間が長くなり、その分業務時間が増えてしまっては本末転倒です。ICT機器に苦手意識のある職員もいるかと思いますが、必要性を理解してもらい、練習すれば適応できます。そういったスタッフが多い場合はサポートが手厚いICTツールを選ぶのも一つの手です。
スタッフの不安に寄り添い、教育を行う
申し送りがなくなることで、「大事な情報を見落とさないか不安」「記録だけで本当に伝わるのか」といった声が出るのは自然なことです。その不安に寄り添いながら、記録の研修やケーススタディ、情報共有の方法に関する教育を継続的に行うことが欠かせません。現場の声を聞きながら進めることで、納得感のある改善につながります。
効果を振り返る
新しいやり方に移行したあとは、必ず「うまくいっているか」「困っていることはないか」を話し合う機会を設けましょう。申し送り廃止はゴールではなく、始まりです。記録や情報共有の質が保たれているか、抜けや漏れがないかを定期的に振り返る習慣をチームとして持つことで、安全性とケアの質の両立が可能になります。「申し送りをやめて良かった」と実感できるためには、運用後のメンテナンスと対話がとても大切です。
介護の申し送り廃止の成功事例

ある介護施設では、現場の看護師や介護士が中心となって申し送りの廃止や短縮に取り組んだ事例もあります。例えば、ある施設では、手書きの記録をパソコンやタブレットに移行し、記録内容を詳細にすることで、申し送りを廃止しても情報共有が円滑に行える体制を整えました。この取り組みには約1年半を要し、職員の意識改革やICTの導入が鍵となりました。
まとめ:申し送りの廃止は効率化だけでなく、ケアの質の向上に繋がります
申し送りの廃止は、単に「業務を減らす」という話ではなく、情報共有の方法を見直し、より質の高いケアにつなげるための取り組みです。
記録の充実やICTの活用によって、申し送りに頼らずとも正確かつ効率的に情報を共有できる体制を整えることが可能です。実際に、多くの施設が「時間にゆとりができた」「職員のストレスが軽減された」「利用者と向き合う時間が増えた」といった成果を上げています。
これからの介護現場では、「伝えること」から「共有すること」へと意識を変えていくことが求められています。申し送りを見直すことは、その第一歩になるかもしれません。
申し送りの廃止のための情報共有ツールは介護ソフトの「トリケアトプス」がおすすめ

これまで介護現場で当たり前だった「申し送り」。しかし、シフト交代のたびに全職員が集まって口頭で情報共有するスタイルは、時間がかかるうえに伝達ミスも起こりがちでした。そんな現場の課題を解決するのが、クラウド型介護ソフト「トリケアトプス」の介護記録機能です。
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