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介護の基礎知識

【2026年4月より開始】介護情報基盤を徹底解説|介護ソフトとの関係とは?

  • 公開日:2025年06月10日
  • 更新日:2025年06月10日

現在、要介護認定情報やレセプト情報、ケアプランなど、利用者に関する介護情報は各事業所や自治体に分散しており、電子的な共有が困難な状況にあります。こうした中で、厚生労働省は「介護情報基盤」の整備を進めています。

介護情報基盤とは、自治体、利用者、介護事業所、医療機関などが電子的に介護情報を閲覧・共有できる全国共通のプラットフォームです。この仕組みを活用することで、地域包括ケアシステムの深化・推進が期待されています。

本記事では介護情報基盤とは何かを詳しく解説するとともに、介護ソフトとの今後の関わりについても説明します。

介護情報基盤整備を行う背景

これから先、特に2040年ごろには、団塊ジュニア世代が65歳以上になり、高齢者の数がピークを迎えると予測されています。中でも、介護や医療のサポートがより多く必要になる「85歳以上」の人が大きく増えることが見込まれています。その一方で、働く世代(生産年齢人口)はどんどん減っていくため、介護の現場で働く人も不足していくと考えられています。

こうした状況に対応するためには、限られた人やお金といった資源をうまく使いながら、質の高い介護サービスを効率よく提供できる体制を整える必要があります。そのために、介護の現場や自治体では、ICT(情報通信技術)を活用して、日々の業務を効率化していくことが急務となっています。

介護情報基盤整備の目的

介護情報基盤を整備することで、利用者本人、市町村、介護事業所、医療機関などが、利用者に関する情報をインターネット上で確認・活用できるようになります。

これまでは紙の書類でやりとりしていた情報を、インターネットを通じて電子的にやりとりできるようになるため、職員の手間が減り、情報のやりとりも早くなります。また、この基盤に集まった情報を活用することで、異なる事業所や専門職同士の連携がしやすくなり、利用者の状態に合わせた、より良いケアを提供できるようになると期待されています。

出典:介護情報基盤について|厚生労働省

マイナンバーカードを使った医療・介護のデジタル化

今後は、マイナンバーカードを使って、医療や介護の手続きが更に便利になるように整備が進められています。具体的には、公費で医療費の一部を助成する制度の受給者証や、予防接種の接種券、母子健康診査の受診券、病院の診察券、そして介護保険証などを、マイナンバーカード1枚にまとめることで、カードひとつでさまざまな医療・介護サービスを受けられるようにする取り組みです。

このうち、公費医療の受給者証については2023年度末から利用が始まり、予防接種や母子保健、介護保険証については、2024年度から一部の自治体で先行的にスタートし、2026年度からは全国的に本格導入される予定です。

介護情報基盤にて共有する情報例

介護情報基盤にて共有できるようになる情報は以下の通りです。※情報範囲は未確定

  • 介護情報(レセプト)
  • 要介護認定情報
  • LIFE情報(ADL等)
  • ケアプラン
  • その他

介護情報基盤の整備がもたらすメリット

介護情報基盤を整備することで、自治体、利用者、介護事業所・医療機関において以下のような効果が期待されています。

自治体にとってのメリット

自治体は利用者がどのような自立支援や重度化防止の支援を受けているかを把握しやすくなり、それに応じた地域の介護保険サービスの計画や運営に役立てることができると期待されています。

介護情報基盤導入にあたっての自治体からの期待の声

  • 郵送でのやりとりでは、時間がかかり30日以内の認定を達成できない場合が多い。特に、主治医意見書の回収に時間を要している。発送状況の管理も大変。
  • 認定書類の開示請求について、 職員にとっては多数の業務があるなかで、それなりの時間を取られている。
  • 認定事務の間に介在する認定調査票や主治医意見書、審査会書類、審査結果通知など、様々な書類の郵送に、往復5日かかることもある。
  • 郵送の到着日によっては審査会にかけられない可能性もあるため、郵送部分は短縮できるとよい。
  • ケアマネジャーから認定が下りたか問い合わせる電話が頻繁にかかってきており、それに応対する負担がある。
  • 介護保険の被保険者証は65歳になると自治体から送付しているが、認定を受けるまで利用しないため、毎回利用の段になると被保険者証を紛失している方が多く、毎度再発行の事務を行うことになる。
  • 被保険者証とは別に、毎年夏に全ての要介護認定者分の負担割合証を印刷、郵送している。
  • 要介護度の決定、居宅介護支援の届出の際など、何度も追記が生じ、追記の度に再度印刷、郵送をしている。

利用者本人にとってのメリット

利用者本人は自分の介護情報をオンラインで確認できるようになることで、どんなサービスを受けているのかを把握しやすくなり、自立した生活の維持や重度化の予防につなげることができます。

介護事業者・医療機関にとってのメリット

介護事業者・医療機関は利用者の同意を得た上で、必要な介護・医療情報を把握することができるようになり、より的確で質の高いサービス提供が可能になります

介護情報基盤導入にあたってのケアマネジャー・介護事業所からの期待の声

  • 居宅介護支援では自治体窓口に移動するという業務すべてに手間がかかっており、要介護認定情報(概況調査・主治医意見書)が電子化・共有されることにより業務効率化が期待できる
  • 要介護認定結果がいつ来るか分からず自治体に問い合わせることがあり、要介護認定申請の進捗状況や結果が、確認したいときに画面上で参照できると助かる
  • 窓口が空いている時間内に庁舎を訪問する必要があり、日程調整が困難で、書類が本来必要なタイミング(入所時面談時 等)に書類を受領することが難しい
  • 居宅では紛失等により証情報の確認に手間がかかっており、電子化されることにより負担割合限度額証等、全被保険者が保持していない資格情報も確実に参照できるようになる
  • 居宅・施設ともに負担割合証の毎年8月頃の更新に係る確認・入力の手間が大幅に削減される
  • 事業所の介護ソフトとデータ連携できることにより、手入力の負荷削減、人為的ミスの削減が期待できる
  • 要介護度の高い利用者について、認定結果通知や介護被保険者証は事業所職員が市役所窓口で受け取ることもあるため、電子上で参照できるようになることで市役所に出向く機会が減るのはありがたい
  • 特定福祉用具販売や住宅改修の利用履歴を自治体やケアマネに問い合わせる必要があり、利用履歴を参照できると業務負担の軽減になる
  • 入退院の情報を電子的に共有できることについては利便性が高い。特にケアマネジャーが入院中の治療状況や入院前後のADL(入院によってどう変わったか)がわかると、ケアプランの作成に役立つ。
  • ケアプランデータ連携システムを使う事業所が増えるなど、利用者の普及による業務効率化を期待する
  • 居宅利用者が施設に移る際、施設サービス計画作成時に過去のケアプランを参照できるとよい

介護情報基盤による情報共有の範囲

介護情報基盤による情報共有の範囲は以下の通りです。

介護情報基盤の施行に向けて必要となる準備

国は今後、「介護情報基盤」を実際に動かすために、システムの設計や、介護事業者を支援する仕組みの整備、自治体のシステム改修へのサポート、そして必要な情報の早めの提供などを進めていきます。

そのために、市町村(介護保険の運営主体)、介護事業所、主治医意見書を作成する医療機関は、あらかじめ準備しておくことが必要です。

なお、どのようなシステムの改修や準備が必要になるのかといった詳しい内容は、今後「介護情報基盤の仕様書」や「自治体向けの標準仕様書」などで国から示される予定です。

主体
令和8年4月までの課題(主なもの)
・システム設計
・開発にかかる調整、事業者支援策の構築、自治体システム改修の支援、 早急な情報提供 等
市町村 (介護保険者)
・介護保険事務システムの標準化に伴う改修(介護情報基盤との連携が含まれる)等
※ 介護情報基盤の施行までに標準準拠システムへの移行が間に合わない場合には、既存システムの改修によって対応いただく。
介護事業所
・インターネット環境の整備
・介護情報基盤に接続し、情報を閲覧する端末の準備(既存端末も利用可能)
・マイナンバーカードを読み込むカードリーダーの準備
・閲覧端末のセキュリティ対策(端末認証、ウイルス対策ソフトの導入等) 等
主治医意見書を作成する医療機関
・主治医意見書を電子的に共有するための対応(既存ソフトの改修等) 等

介護情報基盤導入による業務効率化の具体例

介護情報基盤導入による業務効率化の具体例は以下の通りです。

①要介護認定事務の電子化

要介護認定事務の電子化を通じた自治体、介護事業所、医療機関等の業務負担軽減と認定にかかる日数が短縮されます。(以下の図の①~⑤が電子化される)

また、以下の紙でやりとりしている要介護認定事務について、介護情報基盤を活用した電子的な共有を可能とすることで、市町村・居宅介護支援事業所の大幅な事務負担軽減や、要介護認定に要する期間の短縮が期待されています。

  • 認定調査
  • 主治医意見書の提出
  • 認定審査会の開催
  • 認定事務の進捗確認
  • 認定情報の開示請求

②ケアプランの共有

介護情報基盤を活用することで、ケアプランを共有できるようになり、以下の事務負担軽減・審査事務の正確化が期待されます。

  • 紙ではなく情報基盤上で行うことで、利用者・居宅介護支援事業所の双方が、印刷・郵送・紙管理の手間やコストを削減できます。
  • 介護情報基盤を活用して計算ができ、事業所の事務負担軽減につながる可能性があります。
  • 特定事業所集中減算について、市町村が、管内の全てのケアプランを閲覧できることで、審査の精度を上げることが期待でき、減算の対象となる事業所に対し適時の指導が可能となることから、早期の改善に結びつけられる可能性があります。(初期の段階で市町村が指摘できれば、事業所が多額の報酬を返還する必要がなくなります。)

また、ケアプランを共有できることにより、以下のようなケアマネジメント・介護・医療の質の向上が期待されます。

  • 引継ぎ先の居宅介護支援事業所や介護保険施設等が、過去のケアプランを閲覧することで、サービスの利用状況だけでなく、生活のリズム等様々な情報を入手でき、円滑な支援の継続が可能となります。
  • 介護情報基盤から過去のケアプランも閲覧できることで、これまでの利用状況を踏まえたサービス提供ができます
  • 介護情報基盤から地域ケア会議前後のケアプランを確認することができ、比較ができます。
  • 入院時に医療機関がケアプランを確認できることで、これまでの生活を踏まえた治療に結びつけられます

 

なお、将来的には以下のような活用が行えるようになると期待されています。

  • 介護情報基盤上の膨大なケアプラン情報をAIに学習させることにより、AIを活用したケアプラン作成支援の実用化への活用
  • 同一条件(要介護度、年齢、地域等)に当てはまるモデルケアプランを閲覧する
  • 認知症の利用者の代わりに介護情報基盤上で家族がケアプランについて確認を行い同意する
  • 市町村が市町村内の全てのケアプランを閲覧し、それらを分析することで、地域の課題を網羅的に把握する

③LIFE情報の活用

出典:科学的介護情報システム|LIFE

現時点で、介護情報基盤で共有されるLIFE情報としては、「科学的介護推進体制加算」に関係する利用者フィードバック票を利用する予定です。この票には、利用者の体の状態や生活の様子など、幅広い情報が記録されています。

この情報を、利用者に関わっているケアマネジャーや介護事業所、医療機関の関係者、そして利用者本人とも共有することで、より質の高い介護や医療サービスの提供につながると期待されています。LIFE情報を活用するメリットは以下の通りです。

  • ケアマネがLIFE情報を閲覧することで本人の状態を踏まえたケアプランを作成できます。
  • 他事業所における利用者の状況及び評価を確認することで、状況に応じた適切なケアの提供につながります。
  • かかりつけ医は普段関わっている介護事業所におけるご本人の評価を確認することができ、不要な処方を減らすなど診療に活かすことができます。また、緊急受診時には状態が急激に落ちていることが多いが、元の状態を確認できることで、早期のリハビリ導入等を検討できるようになります。
  • 自身の状態や評価を確認でき、主体的な介護サービスの選択等につながります。

介護情報基盤と介護ソフトとの今後の関わり

介護情報基盤の導入により、今後、介護ソフトとの関係も大きく変わっていきます。これまで、介護事業所では利用者の情報を紙で管理したり、複数のシステムを使って手作業でデータを入力したりしてきました。しかし、介護情報基盤が整備されることで、こうした情報が一つにまとめられ、電子的に安全にやり取りできるようになります。

介護ソフトはこの介護情報基盤と直接つながることで、たとえば利用者の基本情報や被保険者証、ケアプラン、LIFE情報(科学的介護情報)などを自動で取得したり、他の事業所や医療機関とスムーズに共有できるようになります。これにより、ケアマネジャーや事業所の職員が、何度も同じ情報を入力する必要がなくなり、作業の手間やミスが大幅に減ります。また、情報の共有がスムーズになることで、病院からの退院後すぐに必要なケアを準備できるなど、サービスの質も向上します。さらに、利用者本人もマイナポータルを通じて自分の介護情報を確認できるようになるため、本人の理解や納得のもとでケアを進めることがしやすくなります。

このように、介護ソフトは今後、介護情報基盤と連携することで、単なる業務支援ツールから、情報共有とケアの質を支える「中核的なインフラ」へと進化していくことが期待されています。

まとめ:介護情報基盤の整備により、業務の効率化やサービスの質の向上が期待できます

2026年4月から本格的に始まる「介護情報基盤」は、これまで紙や分散されたシステムで管理されていた介護情報を一元化し、関係者同士がスムーズに情報をやりとりできるようにする、大きな改革です。自治体、介護事業者、医療機関、そして利用者本人が必要な情報にアクセスできるようになり、介護・医療の連携が進むとともに、業務の効率化やサービスの質の向上が期待されます。

介護ソフトの活用も今後ますます重要となる見込みであり、被保険者情報の自動取得やケアプランの共有、LIFE情報の登録など、日常業務を支える中核的な役割を担っていくことになります。

デジタル化が進む介護の現場において、今から準備を進めておくことが、より良いサービス提供と業務改善のカギとなります。今後の動向をしっかりと把握し、変化に対応していくことが求められます。

参考文献:介護情報基盤について|厚生労働省
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