介護の基礎知識
【2024年改定対応】令和7年4月1日適用の業務継続計画(BCP)未策定減算とは?
- 公開日:2025年04月02日
- 更新日:2025年04月02日

2024年の介護報酬改定により、「業務継続計画未策定減算」が新たに創設されました。特に、業務継続計画をまだ策定していない施設の経営者にとっては、その算定要件や減算される単位数、施行時期などの詳細が気になるところではないでしょうか。この記事では、それらのポイントについてわかりやすく解説します。
業務継続計画未策定減算とは?
「業務継続計画未策定減算」とは、感染症や災害に対応するための業務継続計画(BCP)が策定されていない介護施設に対し、基本報酬を減算する制度です。介護施設における業務継続計画の策定を促進する目的で、2024年の介護報酬改定に伴い導入されました。
業務継続計画(BCP)とは?
「業務継続計画(BCP)」とは、自然災害や感染症の流行などの緊急事態に備え、介護施設が事業を継続するための具体的な指針や行動計画をまとめたものです。
現在、全ての介護施設において、この業務継続計画の策定が義務付けられています。未策定の場合には基本報酬の減算対象となるため、早急に対応することが重要です。
業務継続計画未策定減算が導入された背景
厚生労働省の資料「業務継続に向けた取組の強化等(改定の方向性)」によると、令和5年度改定検証調査において、感染症や自然災害に対する業務継続計画を策定していない事業所が全体の8割に上ることが明らかになりました。
この実態を踏まえ、介護施設における業務継続計画の策定を促進するために、「業務継続計画未策定減算」が導入されることとなりました。
業務継続計画未策定減算の算定要件と単位数
業務継続計画未策定による減算を避けるためには、算定要件や単位数を正確に理解しておくことが重要です。ここでは、業務継続計画未策定減算の算定要件と単位数についてわかりやすく解説します。
業務継続計画未策定減算の算定要件
業務継続計画未策定減算の算定要件は「感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が策定されていない場合」です。感染症と自然災害のどちらかが未策定の場合でも、減算の対象となるため注意しましょう。
業務継続計画未策定減算の単位数
業務継続計画未策定減算の単位数は以下の通りです。
サービス種別 | 単位数 |
---|---|
施設、居住系サービス | 所定単位数の100分の3に相当する単位数を減算 |
その他のサービス | 所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算 |
施設や居住系サービスでは3%、その他のサービスでは1%の所定単位数が減算されます。
業務継続計画未策定減算の介護サービスごとの施行時期
令和7年3月31日までの間、以下の条件を満たしている場合には「業務継続計画未策定減算」は適用されません。
- 感染症の予防およびまん延防止のための指針の整備
- 非常災害に関する具体的な計画の策定
さらに、以下のサービスについては、令和7年3月31日までの間は業務継続計画未策定減算が適用されません。
- 訪問系サービス
- 福祉用具貸与
- 居宅介護支援
介護施設によっては、減算の適用時期が異なるため、自施設の施行時期をしっかり確認しておくことが重要です。詳しい介護サービスごとの移行時期は以下の表をご確認ください。
対象サービス | 施行時期 |
---|---|
通所介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、看護小規模多機能型居宅介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、介護予防短期入所生活護、介護予防短期入所療養介護、介護予防特定施設入居者生活介護、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型共同生活介護 |
令和6年4月
※ただし、令和7年3 月31日までの間、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しない。 |
通所リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーショ ン |
令和6年6月
※上記①の※と同じ |
訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、福祉用具貸与、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、居宅介護支援、介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防福祉用具貸与、介護予防支援 | 令和7年4月 |
業務継続計画未策定減算の施行にあたり必要な届出
減算とならないためには、適切に措置を講じるとともに、一部のサービス種別においては「基準型」の届出書類の提出が必要です。下記の対象サービス実施事業所は、必ず届出書類の提出を行うよう注意しましょう。
「基準型」の届出がない場合に減算となる介護サービス
「基準型」の届出がない場合に令和7年4月適用の業務継続計画(BCP)未策定減算が適用となる介護サービスは以下となります。
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 夜間対応型訪問介護
- 総合事業訪問型サービス
居宅介護支援および介護予防支援に関しては、「基準型」の届出は不要ですが、感染症および非常災害の両方に対応した業務継続計画の策定が求められます。これらの計画策定や必要な措置が実施されていない場合は、「業務継続計画未策定減算」の対象となります。
地域密着型サービス(例:地域密着型通所介護)や総合事業通所型サービスは、すでに令和6年4月から減算適用対象のサービスとして、経過措置を適用した届出が行われています。そのため、以下の条件を満たしていれば、新たな届出は不要です。
- 感染症と非常災害の両方の業務継続計画を令和6年度中に策定している
- その計画に基づいた必要な措置を講じており、加算区分に変更がない
ただし、令和6年度中に両方の業務継続計画を策定し、必要な措置を講じることができない場合は、令和7年4月以降に「基準型」の要件を満たさなくなるため、「減算型」の届出が必要となります。届出の提出期限や提出方法は各自治体にお問い合わせください。
届出がない場合の取扱い
「業務継続計画(BCP)未策定減算」と「身体拘束廃止未実施減算」について、提出期限までに「基準型」としての届出が行われていない場合、「減算型」とみなされます。
そのため、届出を行わないまま令和7年4月以降のサービス提供分について介護報酬を減算せずに請求すると、国保連合会の審査で返戻となる可能性があるため注意しましょう。
業務継続計画未策定減算についてのよくある質問

業務継続計画未策定減算に関するよくあるご質問を、「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」より以下にて抜粋しました。
問164 業務継続計画未策定減算はどのような場合に適用となるのか
感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合、かつ、当該業務継続計画に従い必要な措置が講じられていない場合に減算の対象となる。
なお、令和3年度介護報酬改定において業務継続計画の策定と同様に義務付けられた、業務継続計画の周知、研修、訓練及び定期的な業務継続計画の見直しの実施の有無は、業務継続計画未策定減算の算定要件ではない
問166 行政機関による運営指導等で業務継続計画の未策定など不適切な運営が確認された場合、「事実が生じた時点」まで遡及して当該減算を適用するのか。
業務継続計画未策定減算については、行政機関が運営指導等で不適切な取り扱いを発見した時点ではなく、「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡及して減算を適用することとなる。
例えば、通所介護事業所が、令和7年 10 月の運営指導等において、業務継続計画の未策定が判明した場合(かつ、感染症の予防及びまん延の防止のための指針及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っていない場合)、令和7年 10 月からではなく、令和6年4月から減算の対象となる。
また、訪問介護事業所が、令和7年 10 月の運営指導等において、業務継続計画の未策定が判明した場合、令和7年4月から減算の対象となる。
まとめ
業務継続計画未策定減算は、感染症や災害に対応するための業務継続計画(BCP)が策定されていない介護施設に対し、基本報酬を減算する制度です。介護施設における業務継続計画の策定を促進する目的で、2024年の介護報酬改定に伴い導入されました。業務継続計画未策定は全てのサービスに義務付けられています。施行時期は介護サービスによってことなるため、自施設の施行時期をしっかり確認し、対応を進めましょう。