介護の基礎知識
機能訓練指導員とは?必要資格や配置で算定できる加算
- 公開日:2025年04月04日
- 更新日:2025年04月04日

寝返りや起き上がり、立ったり座ったり歩いたりといった基本的動作の衰えを回復し、あるべき状態に戻すことを目的に行うのが「機能訓練」です。機能訓練指導員とは、機能訓練についての専門知識を生かし、日常生活に必要な機能の低下を防ぐためのトレーニングを行うデイサービスにおける職種の一つです。
機能訓練指導員とは?
介護保険法で定められた「機能訓練指導員」とは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、そして一定の実務経験を有するはり師及びきゅう師といった資格を持つ専門職を指します。これらの職種は、「日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者」とされており、実際に利用者に対して機能訓練の方法等を指導し訓練を実施します。「管理者」「生活相談員」などと同様、デイサービスにおける職種であり、資格名ではありません。
機能訓練指導員の対象となる資格
機能訓練指導員として勤務するためには、以下の資格のいずれかを保有している必要があります。
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 看護職員
- 柔道整復師
- あん摩マッサージ指圧師
- はり師・きゅう師(※一定の実務経験を有する者)
これらの資格を持っていることで、デイサービスで「機能訓練指導員」として勤務することができます。また、介護福祉士の資格は機能訓練指導員の対象外のため、機能訓練のサービスを提供する際の配置には注意が必要です。
「はり師・きゅう師」は実務経験が必要
平成30年度の介護報酬改定により、機能訓練指導員の対象資格として「一定の実務経験を有するはり師およびきゅう師」が新たに追加されました。この変更は、機能訓練指導員の確保を進め、利用者の心身機能の維持を促進することを目的としています。
「一定の実務経験を有する」はり師およびきゅう師とは?
機能訓練指導員の対象となる、「一定の実務経験を有する」はり師およびきゅう師の、一定の実務経験とは何でしょうか。ここでいう「一定の実務経験」とは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格を持つ機能訓練指導員が配置された事業所で、6か月以上勤務し、機能訓練指導に従事した経験があるはり師およびきゅう師を指します。
実務時間や日数、具体的な業務内容に関する細かな規定はありませんが、機能訓練指導員としての業務頻度や内容を踏まえ、はり師・きゅう師が十分な経験を積んだと事業所の管理者が判断できることが求められます。
はり師・きゅう師を採用する際の「一定の実務経験」の確認方法
事業所で新たに、はり師・きゅう師の資格を持つ者を機能訓練指導員として採用する際は、以下の点を確認する必要があります。
- 理学療法士などの資格を持つ機能訓練指導員が配置されている事業所で、6か月以上機能訓練指導に従事した経験があるか
- 機能訓練指導に従事した事業所の管理者が、その経験を証明する書面を作成しているか
機能訓練指導員の仕事内容
機能訓練指導員の主な仕事内容は、利用者の身体機能の維持・向上を目的とした訓練を提供することです。具体的には、以下のような業務を行います。
- 利用者の生活環境や身体機能の評価:利用者の家庭環境や日常生活の状況を把握し、身体機能や健康状態を評価します。
- 個別機能訓練計画の作成と定期的な見直し:利用者ごとに個別機能訓練計画を作成し、3ヶ月ごとに見直しを行います。
- 機能訓練の指導と実施:利用者に対して適切な機能訓練の方法を指導し、実際に訓練を実施します。
機能訓練指導員の配置で算定できる「個別機能訓練加算」
以下は通所介護にて機能訓練指導員を配置することで算定できる「個別機能訓練加算」の単位数です。
■個別機能訓練加算(Ⅰ)イ:56単位/日
専従の機能訓練指導員を1名以上配置 ※配置時間の定めなし
■個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ:76単位/日
専従の機能訓練指導員を2名以上配置 ※配置時間の定めなし
※(Ⅰ)イと(Ⅰ)ロの併算定不可
※さらにLIFEを活用することで、個別機能訓練加算(Ⅱ):20単位/月を算定することができます。
機能訓練指導員の対象資格には「看護職員」も含まれます。定員11名以上のデイサービスでは看護職員の配置が義務付けられているため、看護職員を活用して「個別機能訓練加算」を算定している事業所は多くあります。まだ個別機能訓練加算を算定していない場合は、ぜひ導入を検討してみましょう。
個別機能訓練加算の業務分担
個別機能訓練加算を算定する際、「生活環境や身体機能の評価」および「個別機能訓練計画の作成・定期的な見直し」は、多職種が協力して実施することが可能です。必ずしも機能訓練指導員が単独で対応する必要はありません。
しかし、「機能訓練の実施」に関しては、機能訓練指導員が直接行うことが求められます。
通所介護以外で「個別機能訓練加算」を算定できる介護サービス
以下は通所介護以外で「個別機能訓練加算」を算定できる介護サービスです。
- 地域密着型通所介護
個別機能訓練加算(Ⅰ)イ:56単位/日
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ:76単位/日
個別機能訓練加算(Ⅱ):20単位/月 - 短期入所生活介護
個別機能訓練加算:56単位/日 - 介護老人福祉施設
- 特定施設入居者生活介護
- 地域密着型介護老人福祉施設
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
個別機能訓練加算(Ⅰ):12単位/日
個別機能訓練加算(Ⅱ):20単位/月
個別機能訓練加算(Ⅲ):20単位/月 - 認知症対応型通所介護
個別機能訓練加算(Ⅰ):27単位/日
個別機能訓練加算(Ⅱ):20単位/月
まとめ
機能訓練指導員は、日常生活に必要な身体機能の低下を防ぎ、回復を支援する役割を担う専門職です。特定の資格があるわけではなく、理学療法士や作業療法士、看護職員、柔道整復師などが該当し、一定の実務経験を有するはり師・きゅう師も対象に含まれます。機能訓練の業務は、利用者の生活環境や身体機能の評価、個別機能訓練計画の作成、そして実際の訓練指導と実施が含まれます。特に個別機能訓練加算の算定には、多職種の協力が可能ですが、訓練の実施は機能訓練指導員が直接行う必要があります。デイサービスでは看護職員を活用した算定事例も多く、まだ導入していない事業所は積極的に検討すべきでしょう。