介護の基礎知識
【2024年度介護報酬改定】通所介護(デイサービス)の口腔機能向上加算をわかりやすく
- 公開日:2025年02月19日
- 更新日:2025年11月06日
デイサービスにおける口腔機能向上加算は、通所介護事業所や通所リハビリテーション事業所において、口腔機能が低下している方やそのリスクがある方に対して、要介護状態の進行防止や要支援状態からの改善を目指すサービスを提供した場合に算定できる加算です。
2024年(令和6年)度の介護報酬改定では口腔機能向上加算に関する見直しは行われませんでした。
本記事では、通所介護(デイサービス)における口腔機能向上加算(Ⅰ)の算定要件について、わかりやすく解説します。
口腔機能向上加算の単位数・算定要件
口腔機能向上加算には、(Ⅰ)と(Ⅱ)があります。その違いは、LIFEへの情報提供をおこないフィードバックを活用するかどうかです。口腔機能向上加算(Ⅱ)を算定する場合には、LIFEの活用が必要となります。
口腔機能向上加算(Ⅰ)の算定要件(単位数:1回150単位※月2回を限度)
口腔機能向上加算(Ⅰ)の算定要件は以下の通りです。
- 言語聴覚士、歯科衛生士または看護職員を1名以上配置していること
- 利用者の口腔機能を利用開始時に把握していること
- 言語聴覚士、歯科衛生士、看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種の者が共同して利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画を作成していること
- 口腔機能改善管理指導計画に従い、言語聴覚士、歯科衛生士または看護職員が口腔機能向上サービスを行っていること
- 利用者の口腔機能を定期的に記録していること
- 利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画の進捗状況を定期的に評価していること
- 評価の結果について、担当の介護支援専門員、主治医、主治歯科医に情報提供すること
- 定員超過利用・人員基準欠如に該当していないこと
口腔機能向上加算(Ⅱ)の算定要件(単位数:1回160単位※月2回を限度)
- 口腔機能向上加算(Ⅰ)の要件を満たすこと
- 利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画等の内容等の情報をLIFEを用いて厚生労働省に提出していること
- サービスの質の向上を図るため、LIFEへの提出情報及びフィードバック情報を活用し、利用者の状態に応じた口腔機能改善管理指導計画の作成(Plan)、当該計画に基づく支援の提供(Do)、当該支援内容の評価(Check)、その評価結果を踏まえた当該計画の見直し・改善(Action)の一連のサイクル(PDCAサイクル)により、サービスの質の管理を行うこと
口腔機能向上加算のサービス対象になる利用者
口腔機能向上加算には、算定できる利用者が定められており、すべての通所介護利用者に一律で算定できるわけではありません。口腔機能向上加算を算定できるのは、以下のいずれかの条件に該当し、口腔機能向上サービスが必要と認められる利用者です。
- (イ)認定調査票における嚥下、食事摂取、口腔清潔のいずれかが「1」以外に該当する者
- (ロ)基本チェックリストの口腔機能に関連する項目(13)(14)(15)のうち、2項目以上が「1」に該当する者
- (ハ)その他、口腔機能が低下している、またはそのおそれがある者
それぞれの詳細について、以下で説明します。
(イ)認定調査票における嚥下、食事摂取、口腔清潔のいずれかが「1」以外に該当する者
認定調査票で、次の3項目のいずれかが「1」(できる・介助されていない)以外に該当する者が対象となります。
- No.2-3 嚥下に関する項目
- 1.できる 2.見守り等 3.できない
- No.2-4 食事摂取に関する項目
- 食事摂取について、あてはまる番号に一つだけ○印をつけてください。
1.介助されていない 2.見守り等 3.一部介助 4.全介助 - No.2-7 口腔清潔に関する項目
- 口腔清潔について、あてはまる番号に一つだけ○印をつけてください。
1.介助されていない 2.一部介助 3.全介助
(ロ)基本チェックリストの口腔機能に関連する項目(13)(14)(15)のうち、2項目以上が「1」に該当する者
以下の口腔機能に関連する項目(13)(14)(15)のうち、2項目以上が「1」(はい)に該当する者が対象です。
- No.13 半年前に比べて固いものが食べにくくなったか
- 1.はい 2.いいえ
- No.14 お茶や汁物等でむせることがあるか
- 1.はい 2.いいえ
- No.15 口の渇きが気になるか
- 1.はい 2.いいえ
(ハ)その他、口腔機能が低下している、またはそのおそれがある者
(イ)および(ロ)に該当しない場合でも、次のような利用者には算定が可能です。
- 認定調査票の特記事項に、口腔機能が低下している、またはそのおそれがあることが示されている者
- 主治医意見書で摂食・嚥下機能に関する記載や特記すべき事項があり、口腔機能の低下が確認される者
- 視診により、口腔内の衛生状態に問題があると判断される者
- 医師、歯科医師、介護支援専門員、サービス提供事業所等からの情報提供により、口腔機能の低下が確認される者 など
以上の基準に当てはまる者が口腔機能向上加算の対象者となります。
口腔機能向上加算のサービス対象にならない利用者
口腔機能向上加算のサービス対象に該当する利用者であっても、以下の条件に該当する場合は、口腔機能向上加算を算定することができません。そのため、加算を算定する事業所は、利用者が受けている歯科医療や介護サービスの内容について、利用者本人やその家族、ケアマネジャーと十分に情報を共有し、確認することが求められます。
<口腔機能向上サービス対象外の利用者>
- 複数の事業所を利用しており、他の事業所で口腔機能向上加算を算定している者(事業所における請求回数に限度を設けていること、複数事業所において算定した場合の利用者負担等の観点から口腔機能向上加算を算定できるのは1事業所に限られます)
- 口腔機能向上加算の算定に対して、同意を得られない者
口腔機能向上加算の注意点
- 口腔機能向上サービスは、利用者ごとのケアマネジメントの一環として提供されます。
- 利用者が歯科医療を受診しており、医療保険で「摂食機能療法」を算定している場合、または「摂食機能療法」を算定していない場合であっても、介護保険における口腔機能向上サービスで「摂食・嚥下機能に関する訓練の指導または実施」を行っていない場合は、加算を算定することはできません。
- 介護予防の単位数は、各自治体によって異なる場合があります。本加算には、利用者の介護度(要支援または要介護)に応じて算定回数に上限があります。例えば、要介護1~5の場合、口腔機能向上サービスを月に3回以上提供しても、ひと月あたりの加算額は150単位×2回=300単位となります。同様に、要支援や総合事業の場合も、サービス提供回数にかかわらず、ひと月あたりの加算額は150単位となります。
口腔ケアについて
口腔機能とは?
「食べる」「話す」「笑う」「呼吸する」といった基本的な動作を支える重要な機能です。加齢とともに、噛む力や飲み込む力が低下しやすく、ADL(生活動作)の維持や健康寿命の延伸にも深く関わっています。
口腔機能が低下すると、食事や会話が困難になり、対人関係にも影響を及ぼします。その結果、外出や外食の機会が減り、社会とのつながりが希薄になりがちです。また、口の周りの筋肉が衰え、動きが悪くなることで、表情や容姿に変化が生じ、言語的・非言語的コミュニケーション能力も低下します。これにより、人との関わりが難しくなり、閉じこもりがちになったり、買い物や公共交通機関の利用といった知的能力を必要とする活動が減少する可能性があります。口腔機能の低下は不活発な生活につながり、寝たきりや認知機能の低下リスクが高まることが懸念されるため、積極的な口腔ケアを行うことは非常に重要です。
「固いものが噛みにくい」「口が渇く」「むせやすくなった」などの症状が現れた場合、適切な対応を行い、口腔機能の低下を防ぐ必要があります。
デイサービスにおける口腔機能向上サービスとは?
科学的根拠に基づき、口腔機能の維持・向上が高齢者の健康促進に寄与することが認められたことから、口腔機能向上加算が導入されました。口腔機能向上サービスは、口腔機能が低下している方や、そのリスクがある方を対象に、要介護状態の重度化を防ぎ、要支援状態からの改善を目指して提供されます。口腔機能向上サービスの具体的な内容は以下の通りです。
<口腔機能向上サービスの主な内容>
- 口腔体操
・唇や舌、頬の筋肉を動かすことで、発声や咀嚼、嚥下機能を向上させる。
- 咀嚼・嚥下訓練
・食べ物をしっかり噛み、飲み込む力を高めるための訓練。
- 口腔清掃指導
・歯磨きや口腔ケアの方法を指導し、誤嚥性肺炎などのリスクを軽減する。
- 水分摂取の指導
・口腔内の乾燥を防ぎ、唾液の分泌を促すための適切な水分補給を指導。
- 専門職(歯科医師・歯科衛生士)との連携
・口腔状態の評価や、専門的なケア・指導を実施。
口腔機能向上加算のQ&A
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」より、口腔機能向上加算についてのQ&Aを抜き出しました。
栄養改善加算・口腔機能向上加算について 問33
Q.それぞれ別の通所介護・通所リハビリテーション事業所にしている場合、それぞれの事業所で同時に栄養改善加算又は口腔機能向上加算を算定することはできるのか。
A.御指摘の件については、ケアマネジメントの過程で適切に判断されるものと認識しているが、①算定要件として、それぞれの加算に係る実施内容等を勘案の上、1事業所における請求回数に限度を設けていること、②2事業所において算定した場合の利用者負担等も勘案すべきことから、それぞれの事業所で栄養改善加算又は口腔機能向上加算を算定することは基本的には想定されない。
まとめ
デイサービスにおける口腔機能向上加算は、口腔機能の低下が見られる高齢者に対し、専門職が口腔ケアや訓練を提供することで、健康維持や要介護状態の進行を防ぐことを目的とした加算です。2024年度の介護報酬改定では、この加算の算定要件に変更はなく、これまでと同様の基準で運用されます。
口腔機能向上加算は、利用者の生活の質を向上させ、健康維持をサポートする重要な加算です。適切なケアを提供することで、高齢者が安心して食事を楽しみ、誤嚥や口腔内のトラブルを防ぐことにつながります。
本記事は、作成時点での最新の資料・情報に基づいています。具体的な解釈や申請手続きについては、最新の情報をご確認のうえ、必要に応じて自治体などの関係機関へお問い合わせください。