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介護の基礎知識

【2024年(令和6年)度】夜間対応型訪問介護の介護報酬改定のポイントまとめ

2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、人口構造や社会経済状況の変化を踏まえ、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止への対応」、「働きやすい職場環境を整備し、良質な介護サービスの効率的提供を目指す」、「制度の安定性・持続可能性の確保」といった視点が重視されました。この結果、本体改定率は「1.59%」のプラス改定となっています。本記事では、2024年度介護報酬改定の中から、夜間対応型訪問介護に関する改定内容について解説します。

2024年度介護報酬改定の施行日

厚生労働省の実施した「第236回介護給付費分科会」において、介護報酬改定の施行日がサービス種別によって、2024年4月と2024年6月に別れることが示され、夜間対応型訪問介護の介護報酬改定は、「2024年4月1日」より施行されました。

2024年6月に施行されたサービスは、「訪問リハビリテーション」、「訪問看護」、「通所リハビリテーション」、「居宅療養管理指導」となります。それ以外のサービス種別は、2024年4月に施行されました。

介護報酬改定のポイント①基本報酬

基本報酬は報酬改定により14~36単位増加しました。

介護報酬改定のポイント②人員配置基準における両立支援への配慮

介護現場で治療と仕事の両立が可能な環境を整備し、職員の離職防止や定着促進を図るため、各サービスにおける人員配置基準や報酬算定の見直しが行われました。

  • 「常勤」の計算にあたって、職員が育児・介護休業法等による育児・介護等の短時間勤務制度を利用する場合に加え、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱う
  • 「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も「常勤換算数:1」と扱う

※改定前は、「母性健康管理措置による短時間勤務」と「育児・介護休業法による短時間勤務制度」に該当する職員が、常勤1・常勤換算数1として計算することが認められていました。

介護報酬改定のポイント③管理者の責務及び兼務範囲の明確化等

介護サービスの質を確保しながら事業所を効率的に運営するため、管理者の責務が明確化されました。管理者は、サービス提供の場面などで発生する事象を適切かつ迅速に把握し、職員や業務を一元的に管理・指揮することが求められます。

また、管理者が兼務できる事業所の範囲についても見直しが行われ、責務を果たせる場合であれば、必ずしも同一敷地内の事業所や施設でなくても問題ないことが明示されました。

介護報酬改定のポイント④いわゆるローカルルールについて

都道府県や市町村に対して、人員配置基準に関する「ローカルルール」については、厚生労働省令の範囲内で、地域の実情に合った内容とすることが求められています。また、事業者から説明を求められた場合には、そのルールが地域で必要とされる理由を説明できるようにすることが求められます。

介護報酬改定のポイント⑤「書面掲示」規制の見直し

運営基準省令において、事業所の運営規程の概要などの重要事項について、「書面掲示」に加え、インターネット上で情報を閲覧できるようにすることが求められます。これにより、介護サービス事業者は重要事項をウェブサイトに掲載・公表することが原則必須となりました。この制度は2025年度(令和7年度)から義務化されます。

介護報酬改定のポイント⑥業務継続計画未策定減算の創設

感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点から、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合の減算が新設されました。

単位数
所定単位数の-1/100
算定要件
業務継続計画未策定減算は、感染症や非常災害に備えた業務継続計画(BCP)が策定されていない場合に適用されます。詳しくは以下の通りです。
  • 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定すること
  • 当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること

介護報酬改定のポイント⑦高齢者虐待防止措置未実施減算の創設

利用者の人権の擁護、虐待の防止等をより推進する観点から、虐待の発生又はその再発を防止するための措置が講じられていない場合の減算が新設されました。

単位数
所定単位数の-1/100
算定要件
以下の措置が行われていない場合、基本報酬が減額されます。
  • 虐待防止委員会の開催
  • 防止方針(指針)の作成
  • 職員向け研修の実施
  • 担当者の指定

介護報酬改定のポイント⑧身体的拘束等の適正化の推進

身体的拘束等のさらなる適正化を図るため、利用者や他の利用者の生命または身体を保護する必要がある緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行うことが禁止されました。

また、やむを得ず身体的拘束等を行った場合には、その方法や時間、利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由について記録することが義務付けられています。
必要な措置は以下の通りです。

  •  身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3月に1回以上開催するとともに、その結果について、介護職員その他従業者に周知徹底を図ること。
  • 身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること。
  • 介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。

介護報酬改定のポイント⑨認知症専門ケア加算の見直し

訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算について、認知症高齢者の重症化の緩和や日常生活自立度Ⅱの利用者に対して、適切に認知症の専門的ケアを行うことを評価する観点から、利用者の受入れに関する要件を見直します。

単位数(変更なし)
認知症専門ケア加算(Ⅰ) 1日につき3単位
認知症専門ケア加算(Ⅱ) 1日につき4単位
※ 夜間対応型訪問介護(Ⅱ)については、認知症専門ケア加算(Ⅰ)90単位/月、認知症専門ケア加算(Ⅱ)120単位/月
算定要件
算定要件の変更点は以下の太字の箇所です。

<認知症専門ケア加算(Ⅰ)>
ア 認知症高齢者の日常生活自立度以上の者が利用者の2分の1以上
イ 認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の者が20人未満の場合は1以上、
20人以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10又は端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置
ウ 認知症高齢者の日常生活自立度以上の者に対して、専門的な認知症ケアを実施した場合
エ 当該事業所の従業者に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催

<認知症専門ケア加算(Ⅱ)>
ア 認知症専門ケア加算(Ⅰ)のイ・エの要件を満たすこと
イ 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の20以上
ウ 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者に対して、専門的な認知症ケアを実施した場合
エ 認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施
オ 介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、研修を実施又は実施を予定

介護報酬改定のポイント⑩介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化(介護職員等処遇改善加算の創設)

介護職員等処遇改善加算は、介護職員の処遇改善を目的に設けられた加算です。介護報酬改定では介護現場で働く方々にとって、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう加算率の引上げが行われました。また、2023年度までは、処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算の3つに分かれていましたが、2024年度より一本化され、改めて介護職員等処遇改善加算が新設されました。

単位数
夜間対応型訪問介護における単位数は以下の通りです。
算定要件
算定要件は以下の通りです。
  • 一本化後の新加算全体について、職種に着目した配分ルールは設けず、事業所内で柔軟な配分を認める。
  • 新加算のいずれの区分を取得している事業所においても、新加算Ⅳの加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てることを要件とする。
    ※ それまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所が、一本化後の新加算を新たに取得する場合には、収入として新たに増加するベースアップ等支援加算相当分の加算額については、その2/3以上を月額賃金の改善として新たに配分することを求める。

介護報酬改定のポイント⑪テレワークの取扱い

人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めている職種のテレワークに関して、以下の基準を満たしていることを前提に、取扱いの明確化を行い、厚生労働省から職種や業務ごとに具体的な考え方が示されることになりました。

  • 個人情報を適切に管理していること
  • 利用者の処遇に支障が生じないこと

介護報酬改定のポイント⑫特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化

特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域は、令和6年度の介護報酬改定にて対象地域が明確化されました。

変更点
報酬改定による変更点は以下の通りです。
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和三年法律第十九号)第二条第一項に規定する過疎地域

↓ 変更後

過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和三年法律第十九号)第二条第二項により公示された過疎地域

過疎地域その他の地域で、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難であると認められる地域であって、特別地域加算の対象として告示で定めるものについて、前回の改正以降、新たに加除する必要が生じた地域において、都道府県及び市町村から加除の必要性等を聴取した上で、見直しが行われました。厚生労働大臣の定める特別地域は以下の通りです。

<特別地域加算>
①離島振興対策実施地域
②奄美群島
③振興山村
④小笠原諸島
⑤沖縄の離島
⑥豪雪地帯、特別豪雪地帯、辺地、過疎地域等であって、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難な地域

<中山間地域等における小規模事業所加算>
①豪雪地帯及び特別豪雪地帯
②辺地
③半島振興対策実施地域
④特定農山村
⑤過疎地域

<中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算>
①離島振興対策実施地域
②奄美群島
③豪雪地帯及び特別豪雪地帯
④辺地
⑤振興山村
⑥小笠原諸島
⑦半島振興対策実施地域
⑧特定農山村地域
⑨過疎地域
⑩沖縄の離島

介護報酬改定のポイント⑬特別地域加算の対象地域の見直し

過疎地域などでサービスの確保が著しく困難と認められる地域について、特別地域加算の対象地域として告示で指定されるものについては、前回の改正以降、対象地域の追加や除外が必要な場合、自治体からの必要性などの意見を聴取し、見直しが行われることとなりました。

最後に

本記事は、以下の最新資料を基に作成されています。

参考:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省

今後、厚生労働省からの解釈通知や各自治体による詳細な通知・資料が公開される予定です。具体的な解釈や申請手続きについては、その都度、最新の情報をご確認のうえ、ご判断ください。

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