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介護の基礎知識

【2024年(令和6年)度】居宅療養管理指導の介護報酬改定ポイントまとめ

  • 公開日:2025年01月27日
  • 更新日:2025年12月12日

2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、人口構造や社会経済状況の変化を踏まえ、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止への対応」、「働きやすい職場環境を整備し、良質な介護サービスの効率的提供を目指す」、「制度の安定性・持続可能性の確保」といった視点が重視されました。この結果、本体改定率は「1.59%」のプラス改定となっています。本記事では、2024年度介護報酬改定の中から、居宅療養管理指導に関する改定内容について解説します。

2024年度介護報酬改定の施行日

厚生労働省の実施した「第236回介護給付費分科会」において、介護報酬改定の施行日がサービス種別によって、2024年4月と2024年6月に分かれることが示され、居宅療養管理指導の介護報酬改定は、「2024年6月1日」より施行されました。

2024年6月に施行されたサービスは、居宅療養管理指導の他は、「通所リハビリテーション」、「訪問看護」、「訪問リハビリテーション」となります。それ以外のサービス種別は、2024年4月に施行されました。

介護報酬改定のポイント①基本報酬(点数)

医師による居宅療養管理指導は、「在宅時医学総合管理料(在医総管)」および「特定施設入居時医学総合管理料(特医総管)」の算定状況に応じて、(Ⅰ)と(Ⅱ)に区分され、それぞれ報酬単位が異なります。在医総管は、在宅療養中の利用者に対し、特医総管は特定施設に入居する利用者に対して、通院が困難な場合に計画的な医学管理に基づく定期的な訪問診療を実施した際に算定される診療報酬です。これらを算定していない場合には居宅療養管理指導(Ⅰ)が適用され、算定している場合には(Ⅱ)が適用されます。

また、薬剤師がオンラインで服薬指導を行った場合には、月1回を限度に46単位の加算が可能です。

2024年度介護報酬改定では、基本報酬の各単位数がそれぞれ+1増え、微増となりました。

介護報酬改定のポイント②人員配置基準における両立支援への配慮

介護現場で治療と仕事の両立が可能な環境を整備し、職員の離職防止や定着促進を図るため、各サービスにおける人員配置基準や報酬算定の見直しが行われました。

  • 「常勤」の計算にあたって、職員が育児・介護休業法等による育児・介護等の短時間勤務制度を利用する場合に加え、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱う
  • 「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も「常勤換算数:1」と扱う

※改定前は、「母性健康管理措置による短時間勤務」と「育児・介護休業法による短時間勤務制度」に該当する職員が、常勤1・常勤換算数1として計算することが認められていました。

介護報酬改定のポイント③管理者の責務及び兼務範囲の明確化等

介護サービスの質を確保しながら事業所を効率的に運営するため、管理者の責務が明確化されました。管理者は、サービス提供の場面などで発生する事象を適切かつ迅速に把握し、職員や業務を一元的に管理・指揮することが求められます。

また、管理者が兼務できる事業所の範囲についても見直しが行われ、責務を果たせる場合であれば、必ずしも同一敷地内の事業所や施設でなくても問題ないことが明示されました。

介護報酬改定のポイント④いわゆるローカルルールについて

都道府県や市町村に対して、人員配置基準に関する「ローカルルール」については、厚生労働省令の範囲内で、地域の実情に合った内容とすることが求められています。また、事業者から説明を求められた場合には、そのルールが地域で必要とされる理由を説明できるようにすることが求められます。

介護報酬改定のポイント⑤書面掲示規制の見直し

運営基準省令において、事業所の運営規程の概要などの重要事項について、「書面掲示」に加え、インターネット上で情報を閲覧できるようにすることが求められます。これにより、介護サービス事業者は重要事項をウェブサイトに掲載・公表することが原則必須となりました。この制度は2025年度(令和7年度)から義務化されます。

介護報酬改定のポイント⑥医療用麻薬持続注射療法加算の新設

医療用麻薬持続注射療法加算とは、薬剤師が行う居宅療養管理指導について、在宅患者に対して適切な薬物療法を提供する観点から新設された加算です。

在宅で医療用麻薬持続注射療法を行っている患者に対して、注入ポンプによる麻薬の使用など在宅での療養の状況に応じた薬学的管理及び指導を行うことを評価します。

単位数
1回につき250単位
算定要件
算定要件は以下の通りです。
  • 在宅で医療用麻薬持続注射療法を行っている利用者に対して、その投与及び保管の状況、副作用の有無等について当該利用者又はその家族等に確認し、必要な薬学的管理指導を行った場合に、1回につき250単位を所定単位数に加算する。
    ※ 疼痛緩和のために厚生労働大臣が定める特別な薬剤の投薬が行われている利用者に対して、必要な薬学的管理指導を行っている場合に算定する加算(100単位)との併算定は不可。
  • 麻薬及び向精神薬取締法第3条の規定による麻薬小売業者の免許を受けていること。
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第39条第1項の規定による高度管理医療機器の販売業の許可を受けていること。

介護報酬改定のポイント⑦在宅中心静脈栄養法加算の新設

在宅中心静脈栄養法加算とは、薬剤師が行う居宅療養管理指導について、在宅患者に対して適切な薬物療法を提供する観点から新設された加算です。

在宅中心静脈栄養法が行われている患者に対して、輸液セットを用いた中心静脈栄養法用輸液等の薬剤の使用など在宅での療養の状況に応じた薬学的管理及び指導を行うことを評価します。

単位数
1回につき150単位
算定要件
算定要件は以下の通りです。
  • 在宅中心静脈栄養法を行っている利用者に対して、その投与及び保管の状況、配合変化の有無について確認し、必要な薬学的管理指導を行った場合に、1回につき150単位を所定単位数に加算する。
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第39条第1項の規定による高度管理医療機器の販売業の許可を受けている又は同法第39条の3第1項の規定による管理医療機器の販売業の届出を行っていること。

介護報酬改定のポイント⑧身体的拘束等の適正化の推進

身体的拘束等のさらなる適正化を図るため、利用者や他の利用者の生命または身体を保護する必要がある緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行うことが禁止されました。

また、やむを得ず身体的拘束等を行った場合には、その方法や時間、利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由について記録することが義務付けられています。
必要な措置は以下の通りです。

  •  身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3月に1回以上開催するとともに、その結果について、介護職員その他従業者に周知徹底を図ること。
  • 身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること。
  • 介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。

介護報酬改定のポイント⑨居宅療養管理指導における管理栄養士及び歯科衛生士等の通所サービス利用者に対する介入の充実

居宅療養管理指導費について、通所サービス利用者に対する管理栄養士による栄養食事指導及び歯科衛生士等による歯科衛生指導を充実させる観点から、算定対象を通院又は通所が困難な者から通院困難な者に見直しを行います。

■管理栄養士が行う場合
注1 在宅の利用者であって通院又は通所が困難なものに対して、(中略)1ヶ月に2回を限度として、所定単位数を算定する。

↓ 改定後

注1 在宅の利用者であって通院が困難なものに対して、(中略)1月に2回を限度として、所定単位数を算定する。

■歯科衛生士等が行う場合
注1 在宅の利用者であって通院又は通所が困難なものに対して、(中略)1ヶ月に4回を限度として、所定単位数を算定する。

↓ 改定後

注1 在宅の利用者であって通院が困難なものに対して、(中略)1月に4回を限度として、所定単位数を算定する。

介護報酬改定のポイント⑩居宅療養管理指導におけるがん末期の者に対する歯科衛生士等の介入の充実

居宅療養管理指導について、全身状態の悪化とともに口腔衛生管理の頻度が増加する終末期がん患者の歯科衛生士等による歯科衛生指導を充実させる観点から、終末期がん患者の利用者について居宅療養管理指導(歯科衛生士等が行う場合)の算定回数上限を緩和する。

算定要件
変更点は以下の太字の箇所となります。

利用者に対して訪問歯科診療を行った歯科医師の指示に基づき、当該利用者を訪問し、実地指導を行った場合に、単一建物居住者(当該利用者が居住する建物に居住する者のうち、当該指定居宅療養管理指導事業所の歯科衛生士等が、同一月に指定居宅療養管理指導を行っているものをいう。)の人数に従い、1月に4回(がん末期の利用者については、1月に6回)を限度として、所定単位数を算定する。

介護報酬改定のポイント⑪管理栄養士による居宅療養管理指導の算定回数の見直し

終末期等における、きめ細かな栄養管理等のニーズに応じる観点から、一時的に頻回な介入が必要と医師が判断した利用者について期間を設定したうえで追加訪問することを可能とする見直しを行う。

算定要件(追加内容)
見直しにより追加された算定要件は以下の通りです。
  • 計画的な医学的管理を行っている医師が、利用者の急性増悪等により一時的に頻回の栄養管理を行う必要がある旨の特別の指示を行う。
  • 利用者を訪問し、栄養管理に係る情報提供及び指導又は助言を行う。
  • 特別の指示に基づく管理栄養士による居宅療養管理指導は、その指示の日から30日間に限り、従来の居宅療養管理指導の限度回数(1月に2回)を超えて、2回を限度として行うことができる。

介護報酬改定のポイント⑫薬剤師による情報通信機器を用いた服薬指導の評価の見直し

オンライン服薬指導に係る医薬品医療機器等法のルールの見直しを踏まえ、薬剤師による情報通信機器を用いた居宅療養管理指導について、以下の見直しを行う。

ア 初回から情報通信機器を用いた居宅療養管理指導の算定を可能とする。
イ 訪問診療において交付された処方箋以外の処方箋に係る情報通信機器を用いた居宅療養管理指導についても算定可能とする。
ウ 居宅療養管理指導の上限である月4回まで算定可能とする。

単位数
情報通信機器を用いた場合:1回につき45単位(月1回まで)→1回につき46単位(月4回まで)
算定要件
診療報酬における在宅時医学総合管理料に規定する訪問診療の実施に伴い、処方箋が交付された利用者であること。→削除
指定居宅サービス介護給付費単位数表の居宅療養管理指導費のハ(2)を月に1回算定していること。→削除

介護報酬改定のポイント⑬特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化

過疎地域などでサービスの確保が著しく困難と認められる地域について、特別地域加算の対象地域として告示で指定されるものについては、前回の改正以降、対象地域の追加や除外が必要な場合、自治体からの必要性などの意見を聴取し、見直しが行われることとなりました。

介護報酬改定のポイント⑭特別地域加算の対象地域の見直し

過疎地域などでサービスの確保が著しく困難と認められる地域について、特別地域加算の対象地域として告示で指定されるものについては、前回の改正以降、対象地域の追加や除外が必要な場合、自治体からの必要性などの意見を聴取し、見直しが行われることとなりました。

介護報酬改定のポイント⑮居宅療養管理指導における高齢者虐待防止措置及び業務継続計画の策定等に係る経過措置期間の延長

居宅療養管理指導について、事業所のほとんどがみなし指定であることや、体制整備に関する更なる周知の必要性等を踏まえ、令和6年3月31日までとされている以下の義務付けに係る経過措置期間を3年間延長することとしました。

  • 虐待の発生又はその再発を防止するための措置
  • 業務継続計画の策定等

最後に

本記事は、以下の最新資料を基に作成されています。

参考:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省

今後、厚生労働省からの解釈通知や各自治体による詳細な通知・資料が公開される予定です。具体的な解釈や申請手続きについては、その都度、最新の情報をご確認のうえ、ご判断ください。

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