介護の基礎知識
【2024年(令和6年)度】訪問看護の介護報酬改定ポイントまとめ
- 公開日:2025年01月23日
- 更新日:2025年12月12日
2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、人口構造や社会経済状況の変化を踏まえ、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止への対応」、「働きやすい職場環境を整備し、良質な介護サービスの効率的提供を目指す」、「制度の安定性・持続可能性の確保」といった視点が重視されました。この結果、本体改定率は「1.59%」のプラス改定となっています。本記事では、2024年度介護報酬改定の中から、訪問看護に関する改定内容について解説します。
2024年度介護報酬改定の施行日
厚生労働省の実施した「第236回介護給付費分科会」において、介護報酬改定の施行日がサービス種別によって、2024年4月と2024年6月に分かれることが示され、訪問看護の介護報酬改定は、「2024年6月1日」より施行されました。
2024年6月に施行されたサービスは、訪問看護以外に、「訪問リハビリテーション」、「通所リハビリテーション」、「居宅療養管理指導」となります。それ以外のサービス種別は、2024年4月に施行されました。
訪問看護の基本報酬の改定
訪問看護費・介護予防訪問看護費の基本報酬について、以下のように改定が行われました。
訪問看護
基本報酬は全体としてプラス改定となりました。基本単位は訪問看護ステーションの場合で1~3単位、病院又は診療所の場合で1~2単位(いずれも1回につき)引き上げられました。また、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスと連携する場合は、月に7単位の引き上げとなっています。
介護予防訪問看護
介護予防訪問介護についても訪問看護とほぼ同様で、1回につき1~3単位のプラスとなりました。
訪問看護の加算・減算等の主な改定
加算・減算等については、以下のように加算や区分の新設、算定要件の変更等の改定が行われました。
専門管理加算の新設
医療ニーズの高い訪問看護利用者が増加する中、より質の高い訪問看護を適切に提供するため、専門性の高い看護師が指定訪問看護などの実施に関して計画的に管理を行う取り組みを評価する新たな加算が設けられました。
- 専門管理加算の算定要件
- 以下のいずれも満たす場合
1.緩和ケア、褥瘡ケア又は人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が計画的な管理を行った場合
・悪性腫瘍の鎮痛療法又は化学療法を行っている利用者
・真皮を越える褥瘡の状態にある利用者
・人工肛門又は人工膀胱を造設している者で管理が困難な利用者
2.特定行為研修を修了した看護師が計画的な管理を行った場合
・診療報酬における手順書加算を算定する利用者
※対象の特定行為
・気管カニューレの交換
・胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
・膀胱ろうカテーテルの交換
・褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
・創傷に対する陰圧閉鎖療法
・持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
・脱水症状に対する輸液による補正
遠隔死亡診断補助加算の新設
離島等に居住する利用者の死亡診断について、診療報酬における対応との整合性を図る観点から、ターミナルケア加算を算定し、看護師が情報通信機器を用いて医師の死亡診断の補助を行った場合に算定できる新たな加算が設けられました。
- 遠隔死亡診断補助加算の算定要件
- 情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が、医科診療報酬における死亡診断加算を算定する利用者について、主治医の指示に基づき、情報通信機器を用いて医師の死亡診断の補助を行った場合。
業務継続計画未策定減算の新設
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点から、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合の減算が新設されました。
- 業務継続計画未策定減算の算定要件
- 業務継続計画未策定減算は、感染症や非常災害に備えた業務継続計画(BCP)が策定されていない場合に適用されます。詳しくは以下の通りです。
- 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定すること
- 当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること
高齢者虐待防止措置未実施減算の新設
利用者の人権の擁護、虐待の防止等をより推進する観点から、虐待の発生又はその再発を防止するための措置が講じられていない場合の減算が新設されました。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算の算定要件
- 以下の措置が行われていない場合、基本報酬が減額されます。
- 虐待防止委員会の開催
- 防止方針(指針)の作成
- 職員向け研修の実施
- 担当者の指定
口腔連携強化加算の新設
口腔連携強化加算は、介護施設と歯科医院が情報を共有することで算定可能な加算です。歯科医療機関から提供される専門的な情報を活用し、利用者に適切な口腔ケアを行うことを目的としています。
- 口腔連携強化加算の算定要件
- 以下のいずれも満たす場合
- 事業所の従業者が、口腔の健康状態の評価を実施した場合において、利用者の同意を得て、歯科医療機関及び介護支援専門員に対し、当該評価の結果を状況提供した場合に、1ヶ月に1回に限り所定単位数を加算する。
- 事業所は利用者の口腔の健康状態に係る評価を行うに当たって、診療報酬の歯科点数表区分番号にC000に掲げる歯科訪問診療料の算定の実績がある歯科医療機関の歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、当該従業者からの相談等に対応する体制を確保し、その旨を文書等で取り決めていること。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えている場合又は特定の加算を算定していない場合の減算の新設
訪問看護の役割に基づいたサービスが適切に提供されるよう、理学療法士などのサービス提供状況や加算の算定状況に応じて、理学療法士などが訪問する際の基本報酬に減算が新たに設けられました。
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えている場合または特定の加算を算定していない場合の減算の算定要件
- 以下の要件を満たしている場合、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問1回につき8単位が減算となります。
- 訪問看護事業所における前年度の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること
- 緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算をいずれも算定していないこと
利用を開始した日の属する月から起算して12月を超えた期間に介護予防訪問看護を行った場合の減算の見直し
緊急時訪問看護加算の区分の新設
訪問看護等における 24 時間対応体制を充実する観点から、夜間対応する看護師等の勤務環境に配慮した場合を評価する新たな区分である「緊急時訪問看護加算(Ⅰ)」が新設されました。
- 緊急時訪問看護加算の算定要件
- 緊急時訪問看護加算(Ⅰ)、緊急時訪問看護加算(Ⅱ)のそれぞれの算定要件は以下の通りです。
<緊急時訪問看護加算(Ⅰ)>(新設)
- 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。
(1)利用者又はその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にあること。
(2)緊急時訪問における看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備が行われていること。
<緊急時訪問看護加算(Ⅱ)>
- 緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の(1)に該当するものであること。
初回加算の区分の新設
要介護者等のより円滑な在宅移行を訪問看護サービスとして推進する観点から、看護師が退院・退所当日に初回訪問することを評価する区分である「初回加算(Ⅰ)」が新設されました。
- 初回加算の算定要件
- 退院当日か翌日以降に実施するかによって加算の区分が(Ⅰ)と(Ⅱ)に分けられました。
- 初回加算(Ⅰ)(新設)
新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所等から退院した日に指定訪問看護事業所の看護師が初回の指定訪問看護を行った場合に所定単位数を加算する。ただし、初回加算(Ⅱ)を算定している場合は、算定しない。 - 初回加算(Ⅱ)
新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所等から退院した日の翌日以降に初回の指定訪問看護を行った場合に所定単位数を加算する。ただし、初回加算(Ⅰ)を算定している場合は、算定しない。
ターミナルケア加算の単位数の見直し
介護保険の訪問看護等におけるターミナルケアの内容が医療保険におけるターミナルケアと同様であることを踏まえ、単位数の見直しが行われました。
- ターミナルケア加算の算定要件
- 算定要件は以下の通りとなり、今までと変更はありません。
- 24時間連絡できる体制を確保し、必要に応じて訪問できる体制を整備していること
- 体制の届出を行っていること
- 主治医との連携の下に、ターミナルケアに係る計画、支援体制について利用者とその家族に説明し、同意を得てターミナルケアを行っていること
- 死亡日、死亡日前14日以内に2日(末期の悪性腫瘍等の特定の利用者については1日)以上ターミナルケアを行っていること
- ターミナルケアの提供について必要な事項(以下の事項)が適切に訪問看護記録書に記録されていること
- 終末期の身体状症状の変化、それに対する看護に関する記録
- 療養や死別に関する利用者とその家族の精神的な状態の変化、それに対するケアの経過についての記録
- 看取りを含めたターミナルケアの各プロセスにおいて利用者とその家族の意向を把握し、それに基づくアセスメントと対応の経過の記録
- ターミナルケアの実施にあたっては、他の医療関係者や介護関係者と十分な連携を図るよう努めること
訪問看護の介護報酬に係るその他の改定
特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化
特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域は、令和6年度の介護報酬改定にて対象地域が明確化されました。
- 変更点
- 報酬改定による変更点は以下の通りです。
- 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和三年法律第十九号)第二条第一項に規定する過疎地域
↓ 変更後
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和三年法律第十九号)第二条第二項により公示された過疎地域
過疎地域その他の地域で、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難であると認められる地域であって、特別地域加算の対象として告示で定めるものについて、前回の改正以降、新たに加除する必要が生じた地域において、都道府県及び市町村から加除の必要性等を聴取した上で、見直しが行われました。厚生労働大臣の定める特別地域は以下の通りです。
<特別地域加算>
①離島振興対策実施地域
②奄美群島、
③振興山村
④小笠原諸島
⑤沖縄の離島、
⑥豪雪地帯、特別豪雪地帯、辺地、過疎地域等であって、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難な地域
<中山間地域等における小規模事業所加算>
①豪雪地帯及び特別豪雪地帯
②辺地、
③半島振興対策実施地域
④特定農山村、
⑤過疎地域
<中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算>
①離島振興対策実施地域
②奄美群島、
③豪雪地帯及び特別豪雪地帯
④辺地
⑤振興山村
⑥小笠原諸島
⑦半島振興対策実施地域
⑧特定農山村地域
⑨過疎地域
⑩沖縄の離島
特別地域加算の対象地域の見直し
過疎地域などでサービスの確保が著しく困難と認められる地域について、特別地域加算の対象地域として告示で指定されるものについては、前回の改正以降、対象地域の追加や除外が必要な場合、自治体からの必要性などの意見を聴取し、見直しが行われることとなりました。
退院時共同指導の指導内容の提供方法の柔軟化
退院時共同指導加算について、文書以外の方法で指導内容を提供することが可能となりました。
訪問看護の人員、設備、運営の基準、その他の改定
テレワークの取扱いの明確化
人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めている職種のテレワークに関して、以下の基準を満たしていることを前提に、取扱いの明確化を行い、厚生労働省から職種や業務ごとに具体的な考え方が示されることになりました。
- 個人情報を適切に管理していること
- 利用者の処遇に支障が生じないこと
訪問看護における24時間対応のニーズに対する即応体制の確保
訪問看護における24時間対応について、看護師等に迅速に連絡が取れる体制が確保されている場合、看護師等以外の職員も利用者や家族からの電話連絡を受けられるよう、提供体制に関する要件が見直されました。
- 体制の要件等
- 以下の全てに該当し、24時間対応体制に係る連絡相談に支障がない体制であれば、24時間対応体制に係る連絡相談の担当者が当該訪問看護ステーションの看護師等以外の職員でも認められることになりました。
- (ア)看護師等以外の職員が、利用者や家族等からの電話等による連絡・相談に対応する際のマニュアルが整備されている
- (イ)緊急の訪問看護の必要性の判断を保健師または看護師が速やかに行える連絡体制と緊急の訪問看護が可能な体制が整備されている
- (ウ)訪問看護ステーションの管理者は、連絡相談を担当する看護師等以外の職員の勤務体制及び勤務状況を明らかにする
- (エ)看護師等以外の職員は、電話等により連絡・相談を受けた際に、保健師または看護師へ報告し、報告を受けた保健師または看護師は、当該報告内容等を訪問看護記録書に記録する
- (オ)アからエについて、利用者及び家族等に説明し、同意を得る
- (カ)指定訪問看護事業者は、連絡相談を担当する看護師等以外の職員に関して都道府県知事に届け出る
身体的拘束等の適正化の推進
身体的拘束等のさらなる適正化を図るため、利用者や他の利用者の生命または身体を保護する必要がある緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行うことが禁止されました。
また、やむを得ず身体的拘束等を行った場合には、その方法や時間、利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由について記録することが義務付けられています。
必要な措置は以下の通りです。
- 身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3月に1回以上開催するとともに、その結果について、介護職員その他従業者に周知徹底を図ること。
- 身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること。
- 介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。
人員配置基準における両立支援への配慮
介護現場で治療と仕事の両立が可能な環境を整備し、職員の離職防止や定着促進を図るため、各サービスにおける人員配置基準や報酬算定の見直しが行われました。
- 「常勤」の計算にあたって、職員が育児・介護休業法等による育児・介護等の短時間勤務制度を利用する場合に加え、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱う
- 「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も「常勤換算数:1」と扱う
※改定前は、「母性健康管理措置による短時間勤務」と「育児・介護休業法による短時間勤務制度」に該当する職員が、常勤1・常勤換算数1として計算することが認められていました。
「書面掲示」規制の見直し
運営基準省令において、事業所の運営規程の概要などの重要事項について、「書面掲示」に加え、インターネット上で情報を閲覧できるようにすることが求められます。これにより、介護サービス事業者は重要事項をウェブサイトに掲載・公表することが原則必須となりました。この制度は2025年度(令和7年度)から義務化されます。
まとめ
本記事は、以下の最新資料を基に作成されています。
今後、厚生労働省からの解釈通知や各自治体による詳細な通知・資料が公開される予定です。具体的な解釈や申請手続きについては、その都度、最新の情報をご確認のうえ、ご判断ください。