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介護の基礎知識

要介護認定調査(基本調査)「第4群:精神・行動障害」の記載例

  • 公開日:2023年02月17日
  • 更新日:2025年01月28日

ここからの記述は、要介護認定「認定調査員テキスト2009」改訂版より抜粋しております。

「第4群 精神・行動障害」は、被害的、昼夜逆転等の精神症状等や、介護に抵抗、物を壊したり、衣類を破いたりする等の行動に関して調査を行う項目の群(グループ)です。この群の評価軸は、すべて有無となり、当該行動があったか、なかったかという事実が評価の基準となります。

選択肢の選択基準

「 1. ない 」
・その問題となる行動が、過去1か月間に1度も現れたことがない場合やほとんど月1回以上の頻度では現れない場合をいいます。
・意識障害、寝たきり等の理由により、その問題となる行動が現れる可能性がほとんどない場合も含まれます。
「 2. ときどきある 」
・少なくとも1か月間に1回以上、1週間に1回未満の頻度で現れる場合をいいます。
「 3. ある 」
・少なくとも1週間に1回以上の頻度で現れる場合をいいます。

調査上の留意点

「精神・行動障害」とは、社会生活上、場面や目的からみて不適当な行動の頻度を評価する項目です。ここでは行動が、過去1か月間(この間に環境が大きく変化した場合は、その変化後から調査日まで)の状況から、現在の環境でその行動が現れたかどうかに基づいて選択します。これらの行動に対して、特に周囲が対応をとっていない場合や介護の手間が発生していなくても、各項目に規定されている行動が現れている場合は、頻度に基づき選択します。
本項目は、実際の対応や介護の手間とは関係なく選択されるため、対象者への対応や介護の手間の状況については、特記事項に頻度とともに記載し、介護認定審査会の二次判定(介護の手間にかかる審査判定)の判断を仰ぐことが重要です。
また、基本調査項目の中には該当する項目が存在しないものの類似の行動またはその他の精神・行動障害などにより具体的な「介護の手間」が生じていることが聞き取りにより確認された場合は、類似または関連する項目の特記事項に、具体的な介護の手間の内容と頻度を記載し、介護認定審査会の二次判定の判断を仰ぐことができます。
調査にあたっては、調査対象者や家族に不愉快な思いを抱かせないように質問に留意する必要があります。認定調査員が調査時に質問を工夫し、あるいは、「日頃の行動や介護上でなにか困ったことや問題がありますか」といった質問を糸口に、調査対象者の現在の感情の起伏、問題となる行動を具体的に聞き取り、該当する項目を選択してもよいです。
一定期間の観察が必要であり一度で選択できない、または、選択するために異なる職種の認定調査員による再度の調査が必要な場合等、やむを得ない事情がある時のみ2 回目の調査を実施します。その場合については、「特記事項」に具体的な状況を記入します。調査対象者の状況(意識障害・性格等)、施設等による予防的な対策(昼夜逆転に対応するための睡眠薬の内服等)、治療の効果も含めて、選択肢に示された状況の有無で選択します。

4-1 物を盗られたなどと被害的になる

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「物を盗られたなどと被害的になる」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「物を盗られたなどと被害的になる」行動とは、実際は盗られていないものを盗られたという等、被害的な行動のことです。

調査上の留意点

「物を盗られた」ということだけでなく、「食べ物に毒が入っている」「自分の食事だけがない」等の被害的な行動も含みます。

特記事項の例

  • 食べ物に毒が入っていると言い、食事を拒否することがあるため(1 回/週)、「3.ある」を選択する。少し時間をおけば食事を再開することが多いが、その都度、納得させるための説明の手間を要している。
  • 訪問介護で訪問するホームヘルパーがお金を盗んだと言うことが週に 1 回程度あるため、「3.ある」を選択する。このほか、現在、ホームヘルパーの訪問(3 回/週)のたびに悪態をつく。ヘルパーや家族はストレスを感じているが、特に対応をせずに聞き流している。

4-2 作話

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「作話」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「作話」行動とは、事実とは異なる話をすることです。

調査上の留意点

自分に都合のいいように事実と異なる話をすることも含みます。起こしてしまった失敗を取りつくろうためのありもしない話をすることも含みます。

特記事項の例

  • 現在、入所中で、この 1 か月間ではないため、「1.ない」を選択する。しかし、居室が変更になる前までは、他の入所者に「職員さんが呼んでいる」「あなたの悪口を○○さんが言っている」等と事実と異なることを、ほぼ毎日話していた。トラブルにいたることはなく、特別の対応は行っていない。
  • 日中独居であるが、家族が帰宅後、「○○さんがたずねてきた」「集金に来た」など、事実と異なることを毎日のように報告するとの家族から聞き取る。頻度から「3.ある」を選択する。家族はそのたびに確認を行っており手間となっている。

4-3 泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」行動とは、悲しみや不安などにより涙ぐむ、感情的にうめくなどの状況が不自然なほど持続したり、あるいはそぐわない場面や状況で突然笑い出す、怒り出す等、場面や目的からみて不適当な行動のことです。

調査上の留意点

元々感情の起伏が大きい等ではなく、場面や目的からみて不適当な行動があるかどうかで選択します。

特記事項の例

  • 家族の話では、昔から涙もろく、昔の話などをしていると、直ぐに泣いてしまうということであるが、場面や目的からみて不適当な行動ではないため、「1.ない」を選択する。家族も慣れているため、軽くなだめる程度で、特に対応はしていない。
  • 談話室などで職員と穏やかに会話していると突然怒り出して収まらなくなることが、週に 1 回程度あることから「3.ある」を選択する。職員はそのたびにそばに付き添い、なだめるため手間がかかっている。

4-4 昼夜の逆転がある

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「昼夜の逆転がある」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「昼夜の逆転がある」行動とは、夜間に何度も目覚めることがあり、そのために疲労や眠気があり日中に活動できない、もしくは昼と夜の生活が逆転し、通常、日中行われる行為を夜間行っているなどの状況をいいます。

調査上の留意点

夜更かし(遅寝遅起き)など単なる生活習慣として、あるいは、蒸し暑くて寝苦しい、周囲の騒音で眠られない等の生活環境のために眠られない場合は該当しないです。夜間眠れない状態やトイレに行くための起床は含みません。

特記事項の例

  • 家族の話では、夜中にタンス等をあけて預金通帳を探し始める(2 回/週)とのことのため、「3.ある」を選択する。また家族はその際、本人が寝付くまで付き添っている。
  • 夜間頻尿のため、夜中に 2~3 回ほどは起きることがあるが、昼夜の生活が逆転しているわけではないので「1.ない」を選択する。

4-5 しつこく同じ話をする

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「しつこく同じ話をする 」行動の頻度を評価する項目です。

調査上の留意点

もともと、性格や生活習慣から、単に同じ話をすることではなく、場面や目的からみて不適当な行動があるかどうかで選択します。

特記事項の例

  • 家族の話では、昔から同じ話をすることが多かったということであるが、場面や目的からみて不適当な行動ではないため、「1.ない」を選択する。
  • 話をするときは常に「私は自律神経失調症で」から会話を始める。明らかに話している内容と無関係に同じ話をするので、「3.ある」を選択する。

4-6 大声をだす

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「大声をだす」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「大声をだす」行動とは、周囲に迷惑となるような大声をだす行動のことです。

調査上の留意点

もともと、性格的や生活習慣から日常会話で声が大きい場合等ではなく、 場面や目的からみて不適当な行動があるかどうかで選択します。

特記事項の例

  • 介護者である妻を呼ぶ際に、「大声をだす」ことが多いが、もともと、性格や生活習慣から声が大きいもので、場面や目的からみて不適当な行動ではないため、「1.ない」を選択する。
  • 毎日夕方になると外に向かって大声で怒鳴り始めるので、家族は毎回なだめている。興奮しており、落ち着くまで 30 分は目が離せない。場面や目的からみて不適当な行動のため「3.ある」を選択する。

4-7 介護に抵抗する

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「介護に抵抗する」行動の頻度を評価する項目です。

調査上の留意点

単に、助言しても従わない場合(言っても従わない場合)は含みません。

特記事項の例

  • 介助のあらゆる場面で、介護者の手を払ったり介護を拒否することが、ほぼ毎日ある。他の介護者が話しかけ、気持ちを落ち着かせながら介助を行っており、介護の手間となっている。
  • 家族の話では、夜間の尿失禁があるため、毎日、夜寝る前にトイレに行くように声をかけるが、そのまま寝てしまい、尿失禁が週に 1 度ほどあるとのことであるが、この「介護に抵抗する」行動には該当しないと考えられるため、「1.ない」を選択する。

4-8  「家に帰る」等と言い落ち着きがない

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「『家に帰る』等と言い落ち着きがない」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「『家に帰る』等と言い落ち着きがない」行動とは、施設等で「家に帰る」と言ったり、自宅にいても自分の家であることがわからず「家に帰る」等と言って落ち着きがなくなる行動のことです。「家に帰りたい」という意思表示と落ち着きのない状態の両方がある場合のみ該当します。

調査上の留意点

単に「家に帰りたい」と言うだけで、状態が落ち着いている場合は含みません。

特記事項の例

  • 現在、入所中であり、毎日のように「家に帰りたい」「家に帰して欲しい」と職員に話しはするが、状態としては落ち着きがないという程の行動はおきていないため、「1.ない」を選択する。
  • 現在、自宅で家族と同居しているが、毎日「家に帰る」と言い出し、家の中をうろうろしだし落ち着きがなくなるため「3.ある」を選択する。普段は、特に対応しなくてもそのうち落ち着くが、月に 2~3 回興奮して暴れるときがあり、そのたびに家族はなだめなければならず手間がかかっている。

4-9 一人で外に出たがり目が離せない

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「一人で外に出たがり目が離せない」行動の頻度を評価する項目です。

調査上の留意点

環境上の工夫等で外に出ることがなかったり、または、歩けない場合等は含みません。

特記事項の例

  • 以前は、目を離すとすぐに家の外に出てしまっていたが、下肢の筋力低下が進んでからは、歩行することができなくなったため、実際に外に出て行くことはないため「1.ない」を選択する。
  • 毎日のように施設の入り口まで出て行き、タクシーを呼ぶように事務員に話しかけることから、「3.ある」を選択する。居室に戻るまで 5 分程度は説明をしなければならず、手間となっている。

4-10 いろいろなものを集めたり、無断でもってくる

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「いろいろなものを集めたり、無断でもってくる」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「いろいろなものを集めたり、無断でもってくる」行動とは、いわゆる収集癖の行動のことです。

調査上の留意点

昔からの性格や生活習慣等で、箱や包装紙等を集めたり等ではなく、明らかに周囲の状況に合致しない行動のことです。

特記事項の例

  • 昔からの性格や生活習慣等で、不要と思える箱や新聞紙を捨てないでいるが、明らかに周囲の状況に合致しない行動ではないため、「1.ない」を選択する。
  • 毎日庭に出て石を拾ってきては自室内に保管している。部屋の大部分を占拠しており、明らかに周囲の状況に合致しない行動であり「3.ある」を選択する。収集した石を勝手に廃棄すると本人が怒るため、家族はそのままにしている。

4-11 物を壊したり、衣類を破いたりする

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「物を壊したり、衣類を破いたりする」行動の頻度を評価する項目です。

調査上の留意点

実際に物が壊れなくても、破壊しようとする行動がみられる場合は評価します。壊れるものを周囲に置かないようにする、破れないようにする等の工夫により、「物を壊したり、衣類を破いたりする」行動がみられない場合は、「 1. ない」を選択します。 この場合予防的手段が講じられていない場合の状況、発生する介護の手間、頻度について特記事項に記載します。明らかに周囲の状況に合致しない、物を捨てる行為も含みます。

特記事項の例

  • 食事中に、おわんを地面に叩きつけるような行動が、月に数回みられることから「2.ときどきある」を選択する。樹脂製のため壊れることはないが、食べ物が散乱するため掃除が手間になっている。
  • 気に入らないことがあると周囲のものをとって投げることが月 1 回ほどあり、家族は、掃除等に手間を要しているとのこと。頻度より「2.ときどきある」を選択する。

4-12 ひどい物忘れ

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「ひどい物忘れ」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「ひどい物忘れ」行動とは、認知症の有無や知的レベルは問いません。この物忘れによって、何らかの行動が起こっているか、周囲の者が何らかの対応をとらなければならないような状況(火の不始末など)をいいます。

調査上の留意点

電話の伝言をし忘れるといったような、単なる物忘れは含みません。周囲の者が何らかの対応をとらなければならないような状況については、実際に対応がとられているかどうかは選択基準には含まれないが、具体的な対応の状況について特記事項に記載します。ひどい物忘れがあっても、それに起因する行動が起きていない場合や、周囲の者が何らかの対応をとる必要がない場合は、「 1. ない」を選択します。

特記事項の例

  • 買い物の度に近所のスーパーで大量の卵を購入し、冷蔵庫の中には、食べられる量以上の卵が入れられているため、「3.ある」を選択する。家族は、調理等で冷蔵庫を開けるついでに確認し、余分な卵があれば捨てているが、大した手間ではないという。
  • 食事をしたことは覚えていないが、しつこく食事を要求するといった行動はないため、「1.ない」を選択する。
  • 火を使わないように伝えているが、自分で調理できると思っており、ガスを付けっぱなしにし、鍋を焦がすことが月に 2~3 回程度みられるため「2.ときどきある」を選択する。家族が気をつけているが、目を離したすきに火を使うことがある。

4 -13 意味もなく独り言や独り笑いをする

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「意味もなく独り言や独り笑いをする」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「意味もなく独り言や独り笑いをする」行動とは、場面や状況とは無関係に(明らかに周囲の状況に合致しないにも関わらず)、独り言を言う、独り笑いをする等の行動が持続したり、あるいは突然にそれらの行動が現れたりすることです。

調査上の留意点

性格的な理由等で、独り言が多い等ではなく場面や目的からみて不適当な行動があるかどうかで選択します。

特記事項の例

  • 家族の話では、昔から独り言の癖があるとのことであるが、場面や目的からみて不適当な行動ではないため、「1.ない」を選択する。
  • なにも無いところに向かって一人で話しかけていることが週 1 回ほどあるので、「3.ある」を選択する。今のところなにも対応はしていない。

4-14 自分勝手に行動する

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「自分勝手に行動する」頻度を評価する項目です。
ここでいう「自分勝手に行動する」とは、明らかに周囲の状況に合致しない自分勝手な行動をすることです。

調査上の留意点

いわゆる、性格的に「身勝手」「自己中心的」等のことではなく、場面や目的からみて不適当な行動があるかどうかで選択します。

特記事項の例

  • 家族の話では、昔から自分勝手に行動することがあって、性格的に「身勝手」「自己中心的」等のことで、周囲の状況に合致しない行動ではないため、「1.ない」を選択する。
  • 深夜遅くに「買い物に行くからついてこい」といって聞かなくなることが週に 2~3 回ある。周囲にあいている店はないが、靴を履くまで納得しないことも多いことから「3.ある」を選択する。

4-15 話がまとまらず、会話にならない

1.ない 2.ときどきある 3.ある

調査項目の定義

「話がまとまらず、会話にならない」行動の頻度を評価する項目です。
ここでいう「話がまとまらず、会話にならない」行動とは、話の内容に一貫性がない、話題を次々と変える、質問に対して全く無関係な話が続く等、会話が成立しない行動のことです。

調査上の留意点

いわゆる、もともとの性格や生活習慣等の理由から、会話が得意ではない(話下手)等のことではなく、 明らかに周囲の状況に合致しない行動のことです。            

特記事項の例

  • 話の内容に一貫性がない、話題を次々と変える、質問に対して全く無関係な話が続く等があるが、家族の話では、昔からのことであり、明らかに周囲の状況に合致しない行動ではないため、「1.ない」を選択する。家族は慣れているため特に支障は生じていない。
  • 今晩の献立を話していると、突然、昔の仕事の話をするなど、会話にならないことが毎日のようにあるため、「3.ある」を選択する。対応しないと機嫌が悪くなるため、家族は、適当に話をあわせて対応している。

出典:認定調査員テキスト2009(改訂版)

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