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介護の基礎知識

【2024年改定対応】居宅介護支援の特定事業所加算とは?ケアマネが知っておくべき概要や算定要件

特定事業所加算は、質の高いケアマネジメントを提供する事業所を評価する加算です。
この加算を取得することで事業所の収益を向上させ、経営の安定につなげることができるため、経営者にとってはぜひ取得を目指したい加算と言えます。今回は、居宅介護支援における特定事業所加算の算定要件について、それぞれの区分ごとに詳しく解説します。

2024年の介護報酬改定での変更ポイント

居宅介護支援の特定事業所加算は、2024年の介護報酬改定にて単位数や算定要件が見直されました。報酬改定による変更点は以下の通りです。

  • 多様化・複雑化する課題に対応するため「特定のテーマに関する事例検討会・研修などに参加していること」が算定要件に追加
  • 介護支援専門員の専任要件について、介護予防支援や総合相談支援事業を行う場合に兼務が可能であることを明確化
  • 運営基準減算に関わる算定要件を削除
  • 介護支援専門員が取り扱う1人当たりの利用者数に関する算定要件を見直し

これらの改定により、課題の多様化に対応しつつ、事業所の柔軟な運営を可能にする内容となっています。

特定事業所加算とは

特定事業所加算とは、一定の条件を満たし、質の高い介護サービスを提供している事業所を評価するための制度です。この制度は介護保険法に基づいており、訪問介護サービスと居宅介護支援に適用されています。特定事業所加算を取得している事業所には、達成している要件の区分に応じて手当が支払われる仕組みとなっています。達成要件が多いほど加算単位が大きくなり、それに伴って支給される手当の額も増えるのが特徴です。

居宅介護支援における特定事業所加算の単位数・算定要件

居宅介護支援における特定事業所加算の単位数と算定要件はそれぞれ以下の通りです。 加算を取得するためには、各区分に応じた算定要件を満たすことが求められます。

特定事業所加算(Ⅰ):519単位

居宅介護支援における特定事業所加算の4つの区分のうち、もっとも算定要件が厳しいのが、特定事業所加算(Ⅰ)です。取得が難しい分、単位数も1ヵ月あたり519単位と、4つの区分の中でもっとも大きな手当が得られます。

特定事業所加算(Ⅰ)を取得するためには、以下の算定要件を満たしていることが求められます。

1.専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を2名以上配置していること*¹
2.専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の介護支援専門員を3名以上配置していること*¹
3.利用者に関する情報又はサービス提供に当たっての留意事項に係る伝達等を目的とした会議を定期的に開催すること
4.24時間連絡できる体制を確保し、かつ、必要に応じて利用者等の相談に対応する体制を確保していること
5.算定日が属する月の利用者の総数のうち、要介護状態区分が要介護3、要介護4及び要介護5である者の占める割合が100分の40以上であること
6.当該指定居宅介護支援事業所における介護支援専門員に対し、計画的に研修を実施していること
7.地域包括支援センターから支援が困難な事例を紹介された場合においても、当該支援が困難な事例に係る者に指定居宅介護支援を提供していること
8.家族に対する介護等を日常的に行っている児童や、障害者、生活困窮者、難病患者等、高齢者以外の対象者への支援に関する知識等に関する事例検討会、研修等に参加していること
9.居宅介護支援費に係る特定事業所集中減算の適用を受けていないこと*²
10.指定居宅介護支援事業所において指定居宅介護支援の提供を受ける利用者数が当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員1人当たり45名未満(居宅介護支援費(Ⅱ)を算定している場合は50名未満)であること
11.介護支援専門員実務研修における科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力又は協力体制を確保していること*³
12.他の法人が運営する指定居宅介護支援事業者と共同で事例検討会、研修会等を実施していること
13.必要に応じて、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービス(介護給付等対象サービス以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等をいう)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること

*¹:利用者に対する指定居宅介護支援の提供に支障がない場合は、当該指定居宅介護支援事業所の他の職務と兼務をし、又は同一敷地内にある他の事業所の職務と兼務をしても差し支えない
*²:運営基準減算に関する記述が削除(2024年4月1日以降)
*³:平成28年度の介護支援専門員実務研修受講試験の合格発表の日から適用

実務経験や知識の豊富な人材を揃えているだけでなく、介護度の高い利用者にも積極的に介護サービスを提供しているかが大きな評価ポイントとなっていると考えられます。

特定事業所加算(Ⅱ)の算定要件:421単位

特定事業所加算(Ⅱ)を取得するには、特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件のうち、要件5を除いた12項目を満たす必要があります。ただし、要件1における主任介護支援専門員の配置人数は1名以上とされ、特定事業所加算(Ⅰ)よりも要件が緩和されています。このため、特定事業所加算(Ⅱ)は比較的取得しやすいといえるでしょう。

特定事業所加算(Ⅲ):323単位

特定事業所加算(Ⅲ)の取得においても、特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件のうち要件5を除いた12項目を満たす必要があります。ただし、要件1では主任介護支援専門員の配置人数が1名以上に、要件2では介護支援専門員の配置人数が2名以上に緩和されており、条件がさらに達成しやすくなっています。

特定事業所加算(A):114単位

特定事業所加算(A)は2021年4月の介護報酬改正で新設された区分です。1か月あたりの加算単位数が114単位と、他の区分に比べて控えめですが、その分取得しやすい条件が設定されています。この区分を取得するには、特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件のうち、要件5を除く12項目を満たす必要があります。ただし、要件4、6、11、12については他の事業所と連携することで要件を満たすことが可能です。さらに、要件1では主任介護支援専門員の配置人数が1名以上に、要件2では介護支援専門員が常勤・非常勤それぞれ1名以上と定められ、要件が緩和されています。

特定事業所加算(A)が新設された背景には、小規模な事業所でも特定事業所加算を取得しやすくすることで、地域全体の介護サービスの質を向上させるという厚生労働省の意図があります。この加算を取得することで、事業所間で協力し合い、地域の介護課題に取り組む機会を増やすことにもつながるでしょう。

居宅介護支援における特定事業所加算を取得する際の注意点

特定事業所加算を取得し、実際に加算を受けるためには、各市区町村に必要な届出を行い、承認を得ることが必要です。
この手続きでは、介護支援専門員の在籍状況や、1年間の会議予定表、直近3か月分の介護給付費請求書など、要件を満たしていることを証明する根拠書類の提出が求められます。ただし、必要な書類の内容や形式は市区町村ごとに異なるため、各自治体のウェブサイトなどで事前に確認する必要があります。

また、特定事業所加算(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)、(A)は同時に算定することができない点に注意が必要です。さらに、年度の途中で要件を満たさなくなった場合や状況に変更が生じた際には、速やかに変更手続きを行わなければなりません。

居宅介護支援の特定事業所加算のよくある質問

「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」に掲載されているQ&Aをご紹介します。詳しい内容は以下のリンクよりご確認いただけます。

令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)

令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)令和6年3月15日 問116

Q.「家族に対する介護等を日常的に行っている児童、障害者、生活困窮者、難病患者等の高齢者以外の対象者への支援に関する知識等に関する事例検討会、研修等に参加していること」について、自ら主催となって実施した場合や「他の法人が運営する指定居宅介護支援事業者と共同で事例検討会、研修会等を実施」した場合も含まれるか。

A.含まれる。

令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)令和6年3月15日 問117

Q.「家族に対する介護等を日常的に行っている児童、障害者、生活困窮者、難病患者等の高齢者以外の対象者への支援に関する知識等に関する事例検討会、研修等に参加していること」について、これらの対象者に対し支援を行った実績は必要か。

A.
・ 事例検討会、研修等に参加していることを確認できればよく、支援実績までは要しない。
・ なお、当該要件は、介護保険以外の制度等を活用した支援が必要な利用者又はその家族がいた場合に、ケアマネジャーが関係制度や関係機関に適切に繋げられるよう必要な知識等を修得することを促すものであり、ケアマネジャーに対しケアマネジメント以外の支援を求めるものではない。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

特定事業所加算は、質の高いケアマネジメントを提供する事業所を評価する加算制度で、2024年の介護報酬改定で要件や単位数が見直されました。新たに小規模事業所でも取得しやすい特定事業所加算(A)が設けられ、地域全体の介護サービス向上が目指されています。取得には市区町村への届出が必要で、年度途中の変更時には速やかな手続きが求められます。

本記事が居宅介護支援事業所様のお役に立ちますと幸いです。

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