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介護の基礎知識

経口維持加算の算定要件や計画書など2021年最新情報を解説

  • 公開日:2024年12月05日
  • 更新日:2025年02月28日

経口維持加算は、経口摂取支援を行うことで、対象者が食事を口から摂取する喜びを維持できるよう、多職種が協力して支援することで得られる加算です。
本記事では、経口維持加算の概要や、具体的な算定要件や経口摂取支援の流れについて解説します。

経口維持加算とは?

経口維持加算は、中度から重度の要介護者や認知症高齢者に対して、より質の高い口腔ケアを提供するための制度です。この加算の主な目的は、対象者が食事を口から摂取する喜びを維持できるよう、多職種が協力して支援することにあります。この加算は、認知機能や嚥下機能の低下により経口摂取が困難になった方を対象としています。施設は対象者に適切な環境と体制を整備し、医師等の指示に基づいた支援計画を作成してケアを実施することで算定が可能となります。

経口維持加算の対象事業者は?

経口維持加算の対象となる介護事業所は、施設サービスと地域密着型サービスに分けられます。

<施設サービス>

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院

<地域密着型サービス>

  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

経口維持加算の算定要件・単位数

経口維持加算を算定するには、まず前提条件を満たしたうえで、算定要件を満たす必要があります。
経口維持加算には、経口維持加算(I)、経口維持加算(Ⅱ)の2つがあります。算定要件と単位数がそれぞれ異なるため、順番に解説します。

経口維持加算を算定するための前提条件

経口維持加算(I)、経口維持加算(Ⅱ)の解説の前にまず、経口維持加算を算定するには、以下の5つの前提条件をすべてを満たしている必要があります。

1.通所介護費算定方法に規定する基準に該当しないこと
2.入所者、入院患者の摂食あるいは嚥下機能が医師により適切に評価されていること
3.誤嚥などが起こった場合の管理体制が整えられていること
4.食べやすく工夫した食事など、誤嚥を防止するための適切な配慮がなされている
5.医師、管理栄養士、看護職員、介護支援専門員、その他の職種の者が共同して2~4を実践できる体制が編成されていること

経口維持加算(Ⅰ):400単位/月

経口維持加算(Ⅰ)では、嚥下障害によって、管理栄養士による栄養ケアマネジメントだけでは経口維持が難しい利用者が対象になります。算定要件は以下の3つです。

1.前提要件を満たしていること
2.医師、歯科医師の指示のもと多職種が共同して、入所者の栄養管理のための食事の観察・会議などを行い、対象者ごとに経口維持計画書を作成していること
3.医師、歯科医師の指示のもと経口維持計画にしたがって、管理栄養士や栄養士が栄養管理を行っていること

上記3点を満たした場合に、1ヵ月につき400単位を加算することができます。

経口維持加算(Ⅱ):100単位/月

経口維持加算(Ⅱ)の算定要件は以下の2つです。

1.協力歯科医療機関が経口維持加算(Ⅰ)を算定していること
2.入所者の栄養管理のための食事の観察・会議などに、医師、歯科医師、歯科衛生士または言語聴覚士が加わっていること

上記2点を満たした場合に、1ヵ月につき100単位を加算することができます。

以上の通り、「経口維持加算(Ⅰ)」が算定できないと、「経口維持加算(Ⅱ)」も算定できないことになります。また、経口維持加算は、経口移行加算と同時算定はできません。栄養マネジメント強化加算を算定できない場合も同様に算定できません。

経口維持加算の対象者

経口維持加算の対象者は、まず現在口から食事を摂取していることが前提条件となります。この条件を満たす入所者に対して、様々な検査や評価が実施されます。具体的には、嚥下造影検査(レントゲン)、内視鏡検査、水飲みテスト、反復唾液嚥下テスト、頸部聴診法などが用いられます。これらの検査結果により摂食機能障害や誤嚥が認められた場合、その入所者は経口維持加算の対象者として認定されます。

経口維持加算が算定できる経口摂取支援の流れ

経口維持加算が算定できる経口摂取支援の流れの一例は以下の通りです。

①ミールラウンド(食事観察・食事回診)を行う

まず、経口維持加算の算定にあたっては、対象者の食事状況を詳細に観察することが重要です。このため、月に1回以上、ミールラウンド(食事観察・食事回診)を実施します。

この観察では、事前の利用者の状況などの情報を元に、対象者の機能維持や改善の可能性を探ることに重点を置きます。状況によっては、より正確な評価のために咽頭マイクなどの機器を導入するなど、専門機材を使用することもあります。観察の質を一定に保ち、支援の一貫性を確保するため、観察ポイントやスケールを統一することが大切です。ミールラウンドに医師、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士のいずれか1名以上が参加している場合に経口維持加算(Ⅱ)が算定できます。

②多職種会議を行う

次に、栄養マネジメントの一環として、多職種による会議を月1回以上開催します。ミールラウンド後に行われるケースも多く、この会議では、対象者の日常生活の様子やミールラウンドでの観察結果を共有し、総合的な評価を行います。

多角的な視点から対象者の状況を検討することで、より効果的な支援策を立案することができます。多職種会議に医師、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士のいずれか1名以上が参加している場合に経口維持加算(Ⅱ)が算定できます。

③経口維持計画を作成する

最後に、これらの観察や会議の結果を踏まえて、経口維持計画を作成します。この計画書の様式例は厚生労働省のホームページで公開されており、施設はこれを参考に個々の対象者に適した計画を立てることができます。規定の様式は無いため、自分で作成することもできます。
経口維持計画書の主な項目は以下の通りです。

  • 1.経口による継続的な食事の摂取のための支援の観点
    食事の観察を通して気づいた点
    多職種会議における議論の概要
  • 2.経口による食事の摂取のための計画

このプロセスを通じて、対象者の経口摂取能力の維持・改善に向けた体系的な支援が可能となります。

栄養マネジメント加算及び経口移行加算等に関する事務処理手順例及び様式例の提示について

経口維持加算を算定するにあたっての注意点

経口維持加算を算定するには、適切な手続きを踏み、必要な要件を満たすことが求められます。特に、計画の作成や記録の管理、家族の同意取得など、細かな対応が必要となります。以下に、算定時の重要な注意点をまとめました。

毎月のミールラウンドと会議の実施が必須

経口維持加算は毎月算定可能ですが、要件として月に1回の経口維持計画の作成が求められています。そのため、ミールラウンドや会議を必ず毎月実施し、その結果を反映した経口維持計画を作成しなければなりません。

栄養アセスメントシートへの記録を徹底する

ミールラウンドや会議の実施記録がないと、実地指導や監査の際に証明できません。そのため、日付や食事の調整内容などを栄養アセスメントシートに記録することが重要です。また、記録作業が業務の負担とならないよう、記入しやすい様式を整備することも必要です。

計画内容の変更時は家族の再同意を得る

経口維持計画は、毎月のミールラウンドや会議を踏まえて作成するため、本人や家族の同意が必要です。ただし、計画に変更がない場合は署名を省略できます。一方で、食事の摂取方法などに変更があった場合は、その内容を説明し、本人や家族に改めて署名での同意を得る必要があります。

経口維持計画書の記入のポイント

記入の際には、ミールラウンドなどで観察した身体状況や栄養状態、また食事に関する本人の意向を具体的に記載します。観察だけに頼らず、本人や家族から直接話を聞き取ることも重要です。会議後には、ミールラウンドや本人および家族の意向を踏まえ、解決すべき課題や達成すべき目標を整理して経口維持計画に反映させます。

また、支援内容に変更が生じた場合はその内容も記録します。さらに、施設サービス計画書に栄養ケアや経口維持計画を統合して作成することも可能で、その際は経口維持に関する部分が明確にわかるよう工夫する必要があります。

経口維持加算についてのよくある質問

以下では「平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」の中の、経口維持加算についての問いをピックアップしております。

平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)問 71

Q.栄養マネジメント加算、経口移行加算、経口維持加算、低栄養リスク改善加算の算定にあたって歯科医師の関与や配置は必要か。

A.多職種共同で計画を立案する必要があるが、歯科医師の関与及び配置は必須ではなく、必要に応じて行うものである。

平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)問 72

Q.水飲みテストとはどのようなものか。また、算定期間が6月以内という原則を超える場合とはどのようなときか。

A.経口維持加算は、入所者の摂食・嚥下機能が医師の診断により適切に評価されていることが必要である。代表的な水飲みテスト法である窪田の方法(窪田俊夫他:脳血管障害における麻痺性嚥下障害ースクリーニングテストとその臨床応用について。総合リハ、10(2):271-276、1982)をお示しする。
また、6月を超えた場合であっても、摂食機能障害を有し、誤嚥が認められる入所者であって、医師又は歯科医師の指示に基づき、継続して誤嚥防止のための食事の摂取を進めるための特別な管理が必要とされる場合は、引き続き算定出来る。ただし、この場合において、医師又は歯科医師の指示は、おおむね1月ごとに受けるものとする。

平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)問 73

Q.経口維持加算(Ⅰ)の嚥下機能評価について、造影撮影や内視鏡検査以外での評価(水飲みテストなど)で嚥下機能評価している場合でも可能か。

A.現に経口により食事を摂取している者であって、摂食機能障害を有し、水飲みテスト(「氷砕片飲み込み検査」、「食物テスト(food test)」、「改訂水飲みテスト」等を含む。)、頸部聴診法、造影撮影(医科診療報酬点数表中「造影剤使用撮影」をいう。)、内視鏡検査(医科診療報酬点数表中「喉頭ファイバースコピー」をいう。)等により50誤嚥が認められる場合に算定出来るものである。

参考:平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)

まとめ

経口維持加算は、介護施設で中度~重度の要介護者や認知症高齢者の口腔機能や摂食機能を維持・改善するための制度です。医師や歯科医師、管理栄養士など多職種が協力し、ミールラウンドや多職種会議を実施し、経口維持計画書を作成することで経口維持加算を取得することができます。

経口維持加算には算定要件によって2つの種類があり、「経口維持加算(Ⅰ)」は月400単位、「経口維持加算(Ⅱ)」は月100単位が加算されます。利用者が口から食べる喜びを守るため、専門的な評価や支援体制が求められます。

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