介護の基礎知識
【2024年度改定対応】看護体制強化加算についてわかりやすく解説
- 公開日:2024年12月03日
- 更新日:2025年02月19日

看護体制強化加算は、在宅で生活する中重度の要介護者に対する医療ニーズへの対応を強化するために設けられた加算です。具体的には、緊急時訪問看護加算、特別管理加算、ターミナルケア加算の一定割合以上の実績がある事業所を評価する仕組みで、平成27年度の介護報酬改定により新設されました。2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、この加算の単位数や要件に変更はありませんでした。
本記事では、訪問看護における「看護体制強化加算」の算定要件や単位数、看護体制強化加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いや算定にあたっての注意点について解説します。訪問看護ステーションなどを運営する際には、加算や減算の内容を正確に把握し、適切な介護保険請求を行いましょう。
訪問看護における看護体制強化加算の単位数と算定要件
訪問看護の看護体制強化加算の単位数
訪問看護の看護体制強化加算の種類と単位数は以下の表の通りです。

看護体制強化加算(Ⅰ)の算定要件
- 医療ニーズの高い利用者へ対応する体制を整備し、都道府県知事に届出を行うこと
- 事業所の看護師等が利用者、その家族へ説明して、同意を得ること
- 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、緊急時訪問看護加算を算定した利用者の割合が50%以上であること
- 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、特別管理加算を算定した利用者の割合が20%以上であること
- 算定日が属する月の前12月間において、ターミナルケア加算を算定した利用者が「5人以上」であること
- 指定訪問看護ステーションの場合、従業者の総数のうち看護職員の占める割合が60%以上であること
看護体制強化加算(Ⅱ)の算定要件
- 医療ニーズの高い利用者へ対応する体制を整備し、都道府県知事に届出を行うこと
- 事業所の看護師等が利用者、その家族へ説明して、同意を得ること
- 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、緊急時訪問看護加算を算定した利用者の割合が50%以上であること
- 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、特別管理加算を算定した利用者の割合が20%以上であること
- 算定日が属する月の前12月間において、ターミナルケア加算を算定した利用者が「1人以上」であること
- 指定訪問看護ステーションの場合、従業者の総数のうち看護職員の占める割合が60%以上であること(令和5年4月1日施行)
看護体制強化加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い

訪問看護における看護体制強化加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは、算定要件と単位数です。
看護体制強化加算(Ⅰ)は算定要件に「常勤の看護師を1人以上配置している」を含みます。看護体制強化加算(Ⅱ)は「入所者25人ごとに常勤換算で1人以上看護師を配置し、24時間の連絡体制を整えている」を含みます。
看護体制強化加算(Ⅰ)は「常勤」のみが対象であり、非常勤職員を含めることはできません。そのため、特に医療依存度の高い利用者への対応能力を評価する加算と言えます。
看護体制強化加算(Ⅱ)は常勤職員だけでなく、非常勤職員の勤務時間も換算して基準を満たすことが可能なため、医療依存度の低い利用者にも対応できる事業所を対象とする加算と言えます。
介護予防における看護体制強化加算の単位数と算定要件
介護予防訪問看護の看護体制強化加算の単位数
介護予防の看護体制強化加算の種類と単位数は以下の表の通りです。

介護予防訪問看護の看護体制強化加算の算定要件
- 医療ニーズの高い利用者へ対応する体制を整備し、都道府県知事に届出を行うこと
- 事業所の看護師等が利用者、その家族へ説明して、同意を得ること
- 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、緊急時介護予防訪問看護加算を算定した利用者の割合が50%以上であること
- 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、特別管理加算を算定した利用者の割合が20%以上であること
- 指定介護予防訪問看護ステーションの場合、従業者の総数のうち看護職員の占める割合が60%以上であること(令和5年4月1日施行)
看護体制強化加算を算定する際の注意点

- (1)家族へ説明し同意を得る
- 看護体制強化加算を算定するには、加算の内容について利用者またはその家族に説明を行い、同意を得る必要があります。同意は口頭でも可能ですが、同意を得たことを記録として残しておくことが重要です。
- (2)医療機関との連携および地域の訪問看護人材の確保・育成
- 算定にあたっては、医療機関と連携しながら、看護職員の出向や研修派遣などの人材交流を進めることで、在宅療養支援の能力向上を図ります。また、地域における訪問看護人材の確保や育成に貢献する取り組みを実施することが望まれます。
- (3)(Ⅰ)または(Ⅱ)の一方のみ選択可能
- 看護体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)は、利用者ごとに選択して算定することはできません。事業所はどちらか一方を選択し、その選択に基づいて届出を行います。
- (4)割合が基準を下回った場合の対応
- 算定要件で定められた割合は、継続して維持することが求められます。もし割合が基準を下回った場合は、速やかに変更の届出を行う必要があります。
新たに加算を算定する場合、加算内容に変更が生じた場合、または算定を終了する場合には、必要書類を作成して都道府県などの担当窓口に提出する必要があります。
なお、前月の15日までに届出を行うことで、翌月から加算を算定することが可能です。
看護体制強化加算の届出方法
看護体制強化加算を算定するには、都道府県への届出が必要です。
まず、加算を算定するためには、すべての要件を満たしていることを確認しなければなりません。実績をもとに、要件を確実にクリアしているかを確認します。この加算は、直近6か月間の実績を基に算定されるため、開設から半年未満の事業所は算定できません。
要件を満たしていることを確認したら、都道府県へ届出申請を行います。この際、看護体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)のいずれかを選択します。提出書類には、過去6か月間の「緊急時訪問看護加算」「特別管理加算」「ターミナル加算」の算定数や、総従業員数、看護職員の常勤換算数を記載する必要があります。
届出書類は郵送または窓口で提出し、都道府県による受理・確認を経て、加算の算定が可能となります。
看護体制強化加算の届出期限
加算の算定を開始する場合、加算の種類を変更する場合、または加算を取り下げる場合には、届出が必要です。ただし、変更がない場合は届出の提出は不要です。届出の締切は、算定を開始する前月の15日までとなっています。例えば、4月から算定を開始する場合は、3月15日までに届出を行わなければなりません。
具体的な流れとしては、まず利用者およびその家族に加算の算定開始について説明し、同意を得ます。その後、過去6か月間の実績を届出書に記載し、期日までに都道府県へ提出します。都道府県が受理すれば、4月分の実績から看護体制強化加算の算定が可能となります。
看護体制強化加算の届出書類
届出書類のフォーマットは各都道府県のホームページに掲載されていますが、地域によって異なる場合があるため、事業所の指定権者である都道府県のホームページから最新の書式をダウンロードしてください。必要な書類には、「看護体制強化加算に係る届出書」に加え、「介護給付費算定に関する届出書」および「介護給付費算定にかかる体制等状況一覧表」などが含まれます。
看護体制強化加算の届出先
届出の提出先は都道府県の担当窓口です。提出先の住所や担当課は各都道府県のホームページに記載されていますので、郵送時には送付先を誤らないよう事前に確認しましょう。
また、看護体制強化加算の届出を行う際には、他にも算定可能な加算がないかを併せて確認しておくことをおすすめします。
看護体制強化加算のQ&A

「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)」より、看護体制強化加算についてのQ&Aを抜き出しました。
令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)看護体制強化加算について 問1
Q.看護体制強化加算に係る経過措置について、令和5年4月1日以後に「看護職員の離職等」により基準に適合しなくなった場合の経過措置が示されているが、看護職員の離職以外にどのようなものが含まれるのか。
A.看護職員の離職以外に、看護職員の病休、産前産後休業、育児・介護休業又は母性健康管理措置としての休業を取得した場合が含まれる。
最後に
この記事は、作成時点で入手可能な最新の資料や情報に基づいています。制度の具体的な解釈や申請手続きについては、最新の情報を随時ご確認のうえ、自治体などの担当窓口にお問い合わせください。