介護の基礎知識
介護事業所の経費削減アイディア29選|人件費や水道光熱費をコストカットする工夫
- 公開日:2025年07月30日
- 更新日:2025年07月30日

介護報酬の伸び悩みや物価上昇、人手不足など、介護事業所を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。こうした中で安定した運営を続けていくためには、サービスの質を落とさず、経費を効率的に管理・削減していくことが重要な経営課題となっています。特に、人件費や光熱費、水道費、消耗品費などは、介護事業所の支出の中でも大きな割合を占めており、ちょっとした工夫や見直しで大きなコスト削減効果が得られる可能性があります。
本記事では、介護事業所で実践しやすい具体的な経費削減のアイディア29選をご紹介します。現場の負担を増やさず、持続可能な形でコストを見直していくためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
介護サービス事業所の主な経費項目と経費削減のアイデア
経費削減を行うために、まずは介護サービス事業所でかかっている経費項目を把握することが重要です。以下では介護サービス事業所でかかる主な経費項目と、項目ごとの経費削減のアイデアをご紹介します。
① 人件費

人件費は、介護事業所の経費の中でも最も大きな割合を占める項目です。介護職員・看護師・相談員・管理者・事務スタッフなど、すべての従業員の給与、賞与、通勤手当、社会保険料、退職金などが含まれます。人手を必要とする業種であるため、他の業界に比べても人件費の比率が高く、全体の経費の50〜60%程度を占めるケースも珍しくありません。また、職員の資格取得支援や研修費用なども、広義には人材投資としての人件費に含まれます。
■経費削減のアイデア
1.業務の効率化
介護ICTの導入により、介護記録やケアプラン作成、スケジュール調整や請求業務、勤怠管理やシフト作成などの業務を効率化することが可能です。これらの時間を短縮することで、職員の稼働率を高めることができるだけでなく、残業時間が減るため、残業代の削減や離職率の低下に繋がります。ケア業務に集中できるためケアの質が向上する効果もあります。ICT機器には以下のような種類があります。
- 介護ソフト
- 見守りセンサー
- 音声入力・AI記録支援ツール
- ナースコール連携システム
- バイタル自動測定・連携機器
- 勤怠・シフト管理システム
- eラーニング・研修管理ツール
- データのクラウド化
- チャットやビデオ通話ツール
- インカム
導入には費用がかかることが多いですが、ICT補助金やIT補助金などの補助金・助成金を活用することで費用を抑えて導入できる場合もあります。
2.離職率の低減
人材の採用・育成には時間とコストがかかります。介護職員の採用にかかる費用は、一般的に正社員で30~50万円アルバイトで5~10万円程度です。一度採用した職員が短期間で離職してしまうと、その分コストも無駄になってしまうため、離職率を下げることが重要です。令和5年度の厚生労働省の調査によると、介護職の離職理由は、1位が人間関係、2位が理念や運営への不満、3位が他に良い仕事があったため、4位が収入、5位が将来の見込みが立たなかったためとなります。介護業界の離職理由についてさらに知りたい場合は以下の記事をご参考にしてください。
介護業界の人手不足の原因は?離職理由から見る人材確保に効果的な取り組み
離職理由の改善アイデアは以下の通りです。
- 人間関係…ハラスメント研修やリーダー研修の充実や、業務マニュアル・指示系統明文化
- 理念や運営…介護の質を経営目標に組み込む、現場と経営層の対話機会の定期化、ICT・介護ソフトの導入
- 収入…業務効率化・処遇改善加算の算定
- 将来の見込み…キャリアパスの設定
3.配置の最適化
業務内容や利用者数に対して過剰な人員配置がされていないかを定期的に見直すことが大切です。ピーク時間帯や閑散時間帯の業務量を分析し、効果的な人員配置を行うことで、効率的な運営につながります。例えば以下の方法があります。
- 介護助手が家事援助を行い、介護職員が介護を行う
- 入浴介助の担当者を日ごとに決める
- 申し送りの記録・伝達係を固定する
- 看護師と介護職の連携強化でバイタル測定のタイミングを調整
4.多能工化の促進
一人の職員が複数の業務をこなせる体制を整えることで、柔軟な人員運用が可能になります。たとえば、介護職員が送迎や事務作業にも対応できれば、無駄な人員配置を減らすことができます。そのためにはICTの導入などで業務を効率化し、時間を生み出す必要があります。
また、一人の職員が複数の役割を担う方法もあります。例えば、デイサービスの場合、管理者は管理上支障のない範囲なら、施設内または同一敷地内にある事業所・設備にて管理業務以外の仕事を兼務できます。つまり、管理者が有資格者であれば、生活相談員や機能訓練指導員と兼務が可能となり、1人で多くの人員基準を満たすことができるため、管理者が資格を取得しておくことで、少ない人数で人員基準を守ることができるようになります。
② 光熱費

電気・ガス・灯油など、エネルギーに関わる費用は施設規模や季節に応じて大きく変動します。冷暖房や照明、給湯設備、厨房設備など、施設内のさまざまな機器が日常的に稼働しており、光熱費の削減は経営改善に直結します。
■経費削減のアイデア
5.LED照明への切り替え
従来の蛍光灯や白熱灯からLED照明に切り替えることで、消費電力を大幅に削減できます。LEDは寿命も長く、交換頻度も少ないため、長期的にはコスト削減に大きく寄与します。
6.空調の適正管理
空調設備の設定温度を適正化し、冷房は28℃前後、暖房は20℃程度を目安に運用することで、無駄な電力使用を抑えられます。また、フィルターの定期清掃や機器の保守点検を行うことで、エネルギー効率の維持につながります。
7.電気の自動制御システムの導入
照明や空調をタイマーやセンサーで自動制御するシステムを導入することで、消し忘れや過剰使用を防ぐことができます。とくにトイレや廊下などの共用スペースでは、センサー式照明が有効です。
8.デマンド監視と契約容量の見直し
電力会社との契約内容を見直し、実際の使用量に合った契約容量に変更することで、基本料金の無駄を省ける可能性があります。
9.窓にプチプチ(気泡緩衝材)を貼る
窓にプチプチ(気泡緩衝材)を貼る方法でも光熱費削減が行えます。
一般的な窓ガラスは、外気温の影響を受けやすく、夏場は熱気が入りやすく、冬場は室内の暖気が逃げやすいという特徴があります。こうした熱の出入りが空調負荷を増大させ、結果として冷暖房費の上昇につながります。プチプチを窓に貼ることで、気泡層が断熱材の役割を果たし、熱の移動を抑制します。
- 冬季:室内の暖気を外に逃がしにくくなり、暖房効率が向上
- 夏季:直射日光や熱気の侵入を軽減し、室温の上昇を抑制
- 通年:空調の使用時間や設定温度を見直すことができ、光熱費の低減につながる
10.省エネ家電に買い替える
光熱費を抑えるためには、使用している設備や機器そのものを見直すことも非常に効果的です。特に古い機器は、電力・ガス消費が多く、省エネ性能も現代の製品と比較して大きく劣ります。例えば最新の業務用エアコンはインバーター制御や温度感知センサー付きで、必要な電力のみで稼働するため、電気代を大きく抑えられます。業務用冷蔵庫・冷凍庫は断熱性能や省エネモードが強化された新型は、旧型比で30〜50%の省電力化が見込めます。節水・節電型洗濯機は水の使用量を抑えながらも十分な洗浄力がある機器は、水道代と電気代の両方の削減につながります。今使っている家電が古くなっていれば、省エネに対応した最新機器に買い替えを検討してみても良いかもしれません。
家電の多くは毎年モデルチェンジされますが、前年モデルと最新モデルの省エネ性能に大きな差がない場合もあります。前年モデルを購入したり、性能の良い中古品を購入することで、安く購入できる場合もあります。
③ 食費

入所施設やデイサービスなどで提供される食事にかかる費用です。仕入れる食材の原価だけでなく、調理スタッフの人件費、外注している場合は給食委託費なども含まれます。
■経費削減のアイデア
11.食材のロス削減
利用者の食事量や好みを把握し、無駄な盛り付けや食べ残しが出ないよう工夫することで、食材費を抑えることができます。下処理済みの食材の活用や冷凍保存技術の導入も有効です。
12.仕入れルートの見直し
複数業者から見積もりを取り、価格・品質・納品条件などを比較することで、コストパフォーマンスの高い業者を選定できます。また、定期的な仕入れ価格の見直しも重要です。
13.調理効率の向上
献立の組み合わせや調理工程を工夫し、仕込み時間を短縮することで人件費やガス代の削減にもつながります。調理機器の見直しもポイントです。例えば、自動炒め機や回転釜、電気フードプロセッサー・自動みじん切り機の導入などの方法があります。
14.食材の一括発注・まとめ買い
週ごと・月ごとのまとめ買いや、他事業所との共同仕入れなどにより、単価を抑える工夫も有効です。
④ 水道費

入浴介助、洗濯、調理、清掃、手洗いなど、介護施設では大量の水が使用されます。施設の規模が大きくなるほど、その費用も膨らみやすいため、工夫が求められる項目です。
■経費削減のアイデア
15.節水型設備の導入
節水トイレや自動水栓、シャワーヘッドなど、少ない水量でも十分な効果を発揮する機器への切り替えが効果的です。初期投資が必要ですが、数年で元が取れるケースもあります。
例えば、節水シャワーヘッドは最大で30〜50%の節水が可能な製品もあり、水道代の削減に直結します。使用するお湯の量が減るため、ガスや電気などの給湯エネルギーコストも軽減できます。入浴介助のある介護施設では、シャワーは毎日頻繁に使用されるため、家庭用より耐久性が高く清掃しやすい素材・構造を選ぶと安心です。現場の使い勝手・安全性・設備の相性をしっかり確認しながら、費用対効果の高い機種を選定するとよいでしょう。
16.職員の節水意識向上
水の使い方について職員間で共通認識を持ち、「使わない時は止める」「無駄な流しっぱなしをしない」など、日常の意識改革によってコスト削減が図れます。
17.再利用水の活用
洗濯排水や雨水をトイレ洗浄用や清掃用水として活用する再利用設備の導入も、長期的な節水対策として検討の余地があります。
18.漏水チェックの定期実施
配管や設備の故障・劣化による漏水は、気づかないうちに水道代を押し上げます。定期点検と早期修理が重要です。
⑤ 消耗品費

トイレットペーパー、ペーパータオル、マスク、手袋、洗剤、文房具、オムツなど、日々消費される物品にかかる費用です。単価は低くても積み重なると大きな金額になります。
■経費削減のアイデア
19.適正な在庫管理
余剰在庫や在庫切れを防ぐことで、不要な追加発注や二重発注を防げます。棚卸しを定期的に行い、無駄のない在庫回転を意識しましょう。
20.ペーパーレス化の推進
タブレット端末や記録ソフトの活用により、紙の使用量を削減できます。記録や申し送りを電子化することで、事務作業の効率化とともに消耗品費も抑えられます。
21.共同購入の活用
法人内の複数施設での一括購入や、地域の事業所同士での共同購入により、スケールメリットを活かした価格交渉が可能になります。
22.使い捨て用品の見直し
必要以上に使い捨て用品に頼らず、繰り返し使える布製品や洗浄可能な器具を検討するのも一案です。ただし、感染症対策が求められる医療的ケアや排泄ケアなどでは、使い捨てが前提の場面もあるため注意が必要です。使い捨てから再利用可能なものへ切り替えを検討できる具体的なアイテム例は以下の通りです。
- 不織布製使い捨てエプロン→ナイロン製・防水布製エプロン
- ペーパーおしぼり→布おしぼり(煮沸・漂白可)
- 口腔ケア用のうがい用紙コップ→プラスチック製・洗浄殺菌対応コップ
- オムツ交換用の使い捨て防水シート→洗える防水布シート・防水タオル
- 使い捨て手袋→用途限定で耐洗浄タイプのゴム手袋
⑥ 通信費

電話・インターネット回線・FAX・携帯端末などにかかる通信費を見直すことで経費削減に繋がります。毎月当たり前に引き落とされているからと放置していると、実際の利用状況に合わない契約が続いていてムダな支出が膨らんでいるケースも少なくありません。
23.通話料やプランの見直し
電話を多く使う事業所では、定額プランや通話定額オプションに切り替えるだけで月々の料金が大きく下がることがあります。逆に、使用頻度が低い回線で高額なプランを契約している場合も要注意です。
24.不要なFAX回線・複数回線の整理
介護業界ではFAXの使用頻度がまだ高い傾向にありますが、使われていないFAX番号や複数の契約回線が残っていないかチェックしましょう。また、FAXをクラウドFAXに切り替えることで、紙・トナー代・保守費用も同時に削減できます。
25.クラウドPBXへの移行
施設内の電話環境をインターネット回線を利用した電話システム(クラウドPBX)に切り替えることで、内線・外線通話をスマホやPCでも対応可能になり、回線費用の削減と業務効率化を両立できます。
26.携帯端末の見直し
支給している職員用携帯が旧プランのまま高額になっているケースは要注意です。格安SIMの活用や不要端末の整理で、1台あたり月数千円の削減が見込めます。
特に効果の大きい介護の経費削減アイデア

介護ソフトの導入
介護記録や請求業務、シフト管理などを手作業で行っている事業所では、ICT化による効率化の余地が大きく残っています。介護ソフトを導入することで、以下のような効果が期待できます。
- 記録・入力作業の短縮による残業削減
- 請求ミス・返戻の防止による損失回避
- 紙や印刷物の削減(ペーパーレス化)
- 職員間の情報共有がスムーズになり、業務ストレスも軽減
初期費用や月額利用料がかかるものの、それ以上に人件費やミスによるロスの削減効果が大きいため、長期的には“投資以上の効果”が見込める施策です。特に現場の負担軽減や離職率の低下にもつながるため、経営面・運営面の両方にメリットがあります。
厚生労働省の資料によると、ケアプランデータ連携機能を搭載する介護ソフトを使用した場合、人件費・印刷費・郵送費・交通費・通信費が削減されることで、大幅なコスト削減となります。人件費を考慮した場合、約81万6千円/年の削減、人件費削減を考慮しない場合でも約7万2千円/年の削減になると発表しており、介護ソフトによる経費削減の効果が大きいことがわかります。

使っていないサブスクリプションサービスの解約
近年、業務用ソフトウェアやクラウドサービス、セキュリティツールなどのサブスクリプション契約(定額課金型)を導入している事業所も増えていますが、「契約したまま使っていない」「以前は使っていたが今は不要」というケースが意外と多くあります。たとえば以下のようなケースです。
- 使われていない帳票作成ソフトや名簿管理システム
- 職員全員に契約していたが、実際には数名しか利用していないサービス
- 無料期間終了後に自動課金されていたサービス
このような契約を定期的に棚卸しし、不要なものを解約・統合するだけで、毎月数千円〜数万円の固定費を削減できる可能性があります。小さな金額でも、「何もしていないのに支払っている」経費こそ、見直し効果の高いポイントです。
また、記録・書類作成・請求を一気通貫で行える介護ソフトを導入することで、記録ソフトと請求ソフトで別々の費用を払う必要がなくなり経費削減に繋がります。また、一つのソフトでデータを管理できることで、転記作業やデータ転送が不要になり、効率化にも繋がります。
備品・家具の中古品・リユース活用
事務机、収納棚、椅子、送迎車の車載備品など、事業所運営に必要な物品は数多くありますが、すべてを新品で揃える必要はありません。リユース業者や自治体・法人向け中古流通サイトを活用すれば、定価の半額以下で同等の品質の備品を調達できるケースも多くあります。特に効果的なのは以下の備品・家具の中古品活用です。
- 職員用のロッカーや作業台
- 共用スペース用の机・椅子
- 書類棚やキャビネット類
- 中古のパソコンやプリンター(一定の保証付き)
また、他施設や法人内で不要になった備品を共有・再配置することで、購入費そのものをゼロにすることも可能です。耐久性や保証が求められるものは新品を、そうでないものは中古やリユースで活用するといった使い分けの工夫が、賢いコスト削減の鍵となります。
介護の経費削減を行う手順

経費削減に取り組む際、すべての支出を一斉に見直そうとすると、現場への負担が大きくなり、かえって混乱を招く恐れがあります。経費削減の際は以下の手順に沿って行いましょう。
①視覚化して経費の割合を把握する
②優先順位を付けて取り組む
③具体的な改善プランを立てる
④無理のない範囲で削減策を導入
⑤数字で成果を確認する
⑥仕組み化して継続的に運用する
①視覚化して経費の割合を把握する

経費削減に取り組む際に、まずは現状を正確に把握することが重要な第一歩です。どの項目にどれだけの費用がかかっているのかを整理することで、ムダの発見や改善の優先順位が明確になり、現実的な対策を立てることができます。
特に介護事業所では、「人件費が多いことは分かっているけれど、実際にどれくらいか?」という定量的な認識が曖昧になりがちです。そこでおすすめなのが、経費内訳をグラフや表で見える化することです。たとえば、以下のような手順で取り組むとスムーズです。
1.過去1年分の経費データを収集する
月ごとの帳簿や会計ソフトから、費目ごとの支出額を集計します。
2.項目ごとに分類する
人件費、光熱費、食費、水道費、消耗品費、設備費、委託費など、分かりやすい分類にまとめます。
3.円グラフや棒グラフに変換する
全体の中でどの経費がどれだけの割合を占めているのかを視覚的に把握できるようにします。ExcelやGoogleスプレッドシートを使えば簡単に作成できます。以下のグラフジェネレーターを使用しても簡単にグラフの作成が行えます。
②優先順位を付けて取り組む
グラフで現状かかっている経費の割合を把握した後は、適切な優先順位を付けて経費削減に取り組んで行きます。優先順位を付けることで効率よく改善を進めることができます。優先順位の付け方は以下の通りです。
■支出の割合が大きいものから着手する
まず注目すべきは、全体の支出に占める割合が大きい費目です。たとえば多くの介護施設では、「人件費」「食費」「光熱費」などが大きな割合を占めています。こうした項目は金額も大きいため、少しの工夫や改善でも全体のコスト削減効果が大きくなるのが特徴です。
グラフなどで経費内訳を可視化してみると、「思っていたよりこの項目が大きかった」といった新たな発見があることも。まずは、金額的なインパクトの大きい支出から見直しを始めるのが、最も合理的です。
■削減が容易なものから取り組む
次に意識したいのが、削減が比較的簡単で、すぐに実行できる費用です。たとえば、「電気をつけっぱなしにしない」「紙の使用を減らす」「水道の使用をこまめに止める」など、現場のちょっとした意識や運用ルールの見直しで改善できる経費は、初期費用もかからず、導入のハードルが低いため効果的です。
こうした「取り組みやすさ」のある削減ポイントを優先することで、現場に負担をかけずにコスト意識を高める第一歩にもなります。
■質を落とさず削減できるものを選ぶ
介護サービスにおいて、コスト削減を進めるうえで最も大切なのは、サービスの質を損なわないことです。たとえば、調理工程の見直しや仕入れ先の再検討によって食費を抑えたり、ICT機器の導入で記録業務を効率化して人件費を削減したりといった方法であれば、利用者や職員の満足度を維持しながらコストを減らすことが可能です。
一方で、サービス内容や提供時間の縮小、消耗品の極端な削減など、現場のストレスや利用者の不満につながる削減は、かえって職員の離職や信頼低下を招くリスクがあります。あくまで「質を保ちつつ無駄をなくす」ことを前提に、納得感のある削減対象を選ぶことが重要です。
③具体的な改善プランを立てる

優先順位が決まったら、次は「どの項目を、いつ、どのように削減するか」を具体的に計画に落とし込みます。ただ「節約しよう」と曖昧に構えるのではなく、数値目標や担当者を明確にした実行可能なプランを作ることが大切です。
たとえば、「光熱費を削減する」という目標であれば、次のように具体化します:
- 目的:電気代を前年比で10%削減する
- 手段:施設全体の照明をLEDに切り替える(○月完了予定)
- 対応者:施設管理者が見積もりと業者手配を担当
- 補足:切り替え後1か月ごとに使用量をチェック
また、削減対象が複数ある場合は、短期・中期・長期に分けてスケジュールを組むことで、現場に負担をかけず段階的に進めることができます。職員への周知やマニュアル化も並行して行うと、後々の実行がスムーズになります。
④無理のない範囲で削減策を導入
計画が立ったら、いよいよ実行フェーズです。ただしここで大切なのは、一気にやろうとしないこと。現場に過度な負担をかけてしまうと、かえって職員の不満や混乱を招く可能性があります。
たとえば、「紙の使用量を減らす」場合に、いきなりすべて電子化するのではなく、まずは「申し送りだけタブレットに移行」など一部から試すのが現実的です。
業務フローやルールが変わる場合、事前に現場スタッフの理解を得てから進めることが非常に重要です。経費削減が「管理者だけの話」にならないように、全職員に目的や効果を共有したり、現場の意見を取り入れることが重要です。社内報や掲示物などで進捗を伝えるのも効果的です。
⑤数字で成果を確認する

削減策を実行した後は、その効果を「感覚」ではなく「数字」で検証することが非常に重要です。
「たしかに光熱費が下がった気がする」ではなく、具体的な数値データでビフォーアフターを比較することで、どの取り組みが効果的だったのかを客観的に判断できます。
前年同月比、前々月比などの「同条件」で比較することで、正確な成果が見えます。特に光熱費や食費などは、季節による変動も加味して分析します。
注意点としては、たとえ数値的に効果が出ていても、「現場が疲弊している」「利用者の満足度が下がった」など副作用がある場合は改善が必要です。数値と現場感覚の両面から効果を評価する姿勢が大切です。
評価のタイミングは、「1ヵ月後に簡易評価」「3ヵ月後に本格評価」など、あらかじめスケジュールを決めておくと、継続的な見直しがしやすくなります。
⑥仕組み化して継続的に運用する
評価の結果、効果が確認できた施策は、一過性で終わらせずに「仕組み化」して定着させることが最終目標です。せっかく成功した取り組みも、「担当者が異動したら元に戻った」「いつの間にか意識されなくなった」というケースは少なくありません。定着させるための工夫は以下の通りです。
- ルールやマニュアルに落とし込む
成功した削減策は、運用ルールや業務マニュアルに明文化し、誰が見てもわかる形にしておくことが大切です。 - スタッフ教育の一部に組み込む
新任職員向けの研修や日常のOJTの中で、経費削減の視点を持たせることで、職員全体のコスト意識が高まります。 - 継続的な見直しの仕組みをつくる
定期的に経費状況を見直す「コスト会議」や、「職員からアイデアを募集する提案箱」を設けるなど、継続的に改善する文化を醸成することが理想です。
これらのステップを一度で終わらせず、定期的に繰り返すPDCAサイクルとして運用していくことで、経費削減は一時的な取り組みから、事業所の文化として定着していきます。
ICTによる具体的な改善事例

ICTを活用して導入効果が出た事例を、具体的な数値と合わせてご紹介します。介護サービス事業所の経費削減のご参考にしていただければと思います。
A事業所の事例紹介(訪問介護)

課題
これまでA事業所では、訪問介護のたびに複写式の記録書に手書きで記入し、利用者から署名・捺印をもらって、事業所に提出するという業務フローを採用していました。報酬請求については、介護報酬請求ソフトを使ってパソコンで処理しています。
すでに市内の別の事業所でICTを導入した実績があり、その効果を実感していたことから、別の訪問介護事業所にもICTを導入して、業務の効率化・品質向上を進めたいという目的で導入を行いました。
導入したICT機器とその効果
A事業所では、タブレット端末を導入し、記録業務と介護報酬請求ソフトが連動するシステムを使用しました。この介護ソフトの導入により、次のような効果が得られています。
- 訪問介護員の記録がリアルタイムで確認できる
- 事業所に立ち寄らなくてもよくなり、直行直帰が可能に
- 電子署名対応やシフト表の自動作成ができる
- 記録がデジタル保管されるため、紙の保管スペースが不要に
A事業所では非常勤の訪問介護員が多いため、個々の都合に合わせた柔軟な働き方が行いやすくなり、介護ソフトは人手不足への対策としても期待されていました。
導入効果
A事業所において導入したソフトは、サービスの提供記録だけでなく、訪問介護計画の共有や申し送りもリアルタイムで行えるため、サービス提供責任者の報酬請求業務の短縮だけでなく「訪問介護計画のリアルタイム閲覧」「申し送りの効率化」「情報共有による訪問指示内容の伝達漏れ」が実現しました。1ヵ月あたりの効果は以下の通りです。
- 記録業務…106.4 時間の減少
- 報酬請求業務…22.5 時間の減少
- 残業時間…5 時間の減少
B事業所の事例紹介(通所介護)

課題
B事業所では、介護業界の人手不足を大きな課題と捉え、限られた人材の中でいかに業務の生産性を高めるかが重要だと考えていました。特に、事務作業の負担を減らすことが有効だと判断し、介護サービスの記録作業に注目。ICTを活用して記録時間を短縮し、その効果や必要な条件を確認することを目的に、介護ソフトを導入しました。
B事業所では、それまで記録や請求などすべて紙で管理しており、ICT導入により業務フローが大きく変化しました。
導入したICT機器と効果
B事業所では、タブレット端末を導入し、次のような機能を活用しました。
- 「日報入力」画面で、通所介護利用者の入退所情報、バイタル、加算情報などが入力可能
- 各法人の介護報酬請求ソフトと連動しており、記録から請求までの作業を一体化
ただし、このタブレットでは報酬請求に必要な情報のみが記録対象であり、たとえば業務日誌のような自由記述型の記録は対応しておりません。
導入効果
B事業所において導入した介護ソフトの介護記録は、報酬請求に関わる日々のサービス提供内容に限られていましたが、日々のサービス提供記録及び介護報酬請求業務をいずれも紙媒体で行っていたことから、本事業によって報酬請求業務の記録時間は大幅に削減されました。1ヵ月あたりの効果は以下の通りです。
- 記録業務…5 時間の減少
- 報酬請求業務…67 時間の減少
- 1 ヶ月の総労働時間とケア提供の時間比率…74%→75%
- 残業時間…10 時間の減少
介護事業所の経費削減なら介護ソフトの「トリケアトプス」がおすすめ

介護サービス事業所の経費削減を行ううえで、介護ソフトの導入は非常に効果的です。効率化による人件費の削減や紙代の節約、職員の離職防止による採用・育成コスト削減、さらには請求業務ミスの削減による「損失防止」に貢献します。
なかでも「トリケアトプス」は、介護記録やケアプラン、請求業務やシフト作成まで一気通貫型で効率化できるソフトです。複数システムを契約しなくても、一つのソフトで複数機能を満たすため、経費を抑えることが可能です。また、バラバラだった情報がシームレスになることで、介護記録から実績を作成したり、利用者情報や既存情報を活用できるなど、情報を活用できるようになります。情報の一元化により、ソフト間の転記の手間が不要になり、ミスの防止や事務作業の効率化に繋がります。
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イメージキャラクターのトリケアちゃんが見守ってくれる、女性に人気の可愛い操作画面です♪ - 03 ご利用いただいている事業者様の92%が「サポートに満足」と回答
- ソフトの使い方で分からないことがあれば、お電話頂ければ、専任のオペレーターが丁寧に対応致します。
開発元が運営も行っているため、わからないことは丁寧にしっかりとご説明することができます。電話もつながりやすく、困っている時にすぐ頼っていただけます。 - 04 お客様のお声から機能を開発
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まとめ

経費削減というと「何かを削る」「我慢する」といったイメージを持たれがちですが、実際には無駄をなくすことから始めるのが成功の鍵です。人件費や光熱費、水道費など、日々発生する経費の中にも、工夫次第で効率化できる部分は多く存在します。本記事でご紹介したようなアイディアを取り入れ、現場に無理なく、効果的な削減策を一歩ずつ導入していくことが、安定した経営とサービス品質の両立につながります。まずは身近なところから、できることから、ぜひ取り組んでみてください。
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