介護の基礎知識
【訪問看護】医療保険のオンライン請求・オンライン資格確認とは?導入手順をわかりやすく
- 公開日:2025年07月10日
- 更新日:2025年07月10日

訪問看護ステーションでも対応が義務化されている、医療保険のオンライン請求やオンライン資格確認。「そもそも何が変わるの?」「訪問看護にはどう関係するの?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。このブログでは、オンライン請求とオンライン資格確認の基本的な仕組みや違い、導入までの手順について、訪問看護の視点からわかりやすく解説します。業務負担軽減にもつながるオンライン対応をスムーズに進めるために、ぜひ参考にしてください。
訪問看護のオンライン請求とは?

訪問看護のオンライン請求とは、レセプト(診療報酬明細書)を紙ではなく、電子データとしてオンラインで国保連や支払基金に送信する仕組みのことです。これにより、従来のようにレセプトを印刷・郵送する手間が不要となり、請求業務の効率化やスピードアップが実現します。令和6年(2024年)12月2日よりオンライン請求・オンライン資格確認が義務化されました。
訪問看護のオンライン資格確認とは?

訪問看護におけるオンライン資格確認とは、利用者のマイナンバーカードを活用し、医療保険の資格情報をリアルタイムで確認できる仕組みです。訪問看護ステーションが専用のモバイル端末を使い、利用者宅などで本人確認を行い、その場で最新の資格情報を取得します。
2024年12月からは健康保険証の新規発行が終了し、マイナ保険証への移行が進められていることから、オンライン資格確認の導入はすでに義務化されています。従来の紙の保険証確認に比べ、正確性と効率性が大幅に向上することが期待されています。
オンライン請求・オンライン資格確認の経過措置
やむを得ない事情により導入が間に合わない・できない訪問看護ステーションは令和6年10月31日までに届出を行うことで、期限付きの経過措置の適用を受けることができます。やむを得ない事情とは以下の通りです。
やむを得ない事情 | 期限 | オンライン請求 | オンライン資格確認 |
---|---|---|---|
① 電気通信回線設備に障害が発生した場合 | 障害が解消されるまで | ○ | × |
② 令和6年10月末までにベンダーと契約締結したが、導入に必要なシステム整備が未完了の場合(システム整備中) |
システム整備が完了する日まで (遅くとも令和7年6月末まで) |
○ | ○ |
③ オンライン請求/オンライン資格確認に必要な光回線ネットワーク環境が整備されていない場合(ネットワーク環境事情) | オンライン請求/オンライン資格確認に必要な光回線ネットワーク環境が整備されてから6ヶ月後まで | ○ | ○ |
④ 改築工事中の場合 | 改築工事が完了するまで | ○ | ○ |
⑤ 廃止・休止に関する計画を定めている場合 | 廃止・休止まで(遅くとも令和7年6月末まで) | ○ | ○ |
⑥ その他特に困難な事情がある場合 ※従業者の年齢が現在71歳以上である場合 | 特に困難な事情が解消されるまで | ○ | ○ |
令和7年7月現在は経過措置の適用は終了しているため、オンライン請求・オンライン資格確認は必ず対応するようにしましょう。
オンライン資格確認・オンライン請求のメリット

印刷・発送が不要に
レセプトを電子データで送信できるため、印刷・封入・郵送などの作業が不要になり、事務作業の負担が大幅に軽減されます。
返戻のリスクが軽減
オンライン資格確認の活用により、レセプト作成時、資格情報(被保険者番号等)の手入力が不要となります。それにより、資格情報の不備による返戻が減り、再提出の手間も減少します。
診療/薬剤情報・特定健診情報の閲覧が可能になる
オンライン資格確認の導入により、本人の同意を得ることで「診療情報」「薬剤情報」「特定健診情報」の閲覧が可能になります。これにより、主治医からの情報提供書が届く前でも、利用者の過去の受診歴や処方薬の内容をリアルタイムに把握でき、より的確な看護ケアにつなげることができます。
訪問看護でオンライン請求・オンライン資格確認を導入するための手順

導入に必要な主な準備項目
- ネットワーク回線の敷設(導入支援事業者)
オンライン資格確認・オンライン請求を行うには、専用のネットワーク回線の敷設が必要です。ネットワークの敷設は導入支援事業者が担当し、申込から完了まで数週間〜1ヶ月程度かかることが一般的です。 - モバイル端末(スマホ・タブレット・ノートPCなど)
利用者宅でマイナンバーカードを読み取るために必要です。既存の業務用端末も活用可能。 - 資格確認端末/オンライン請求用PC
専用ソフトをインストールして利用します。オンライン資格確認・請求のどちらにも兼用できます。 - レセプト作成ソフト(レセコン)の改修
医療保険のオンライン請求に対応するため、現在使っているレセコンの改修が必要です。 - 電子証明書の取得
オンライン請求・資格確認に使用する端末の正当性を証明するために必要です。ポータルサイトから申請・ダウンロードします。
① ネットワーク環境の整備(導入支援事業者)
オンライン資格確認・オンライン請求を行うには、専用のネットワーク回線の敷設が必要です。使用する回線は、以下のいずれかの方式が求められます。
- IP-VPN接続方式
- IPsec+IKE接続方式
これらは、医療情報を安全にやり取りするためのセキュアな通信環境です。ネットワークの敷設は導入支援事業者が担当し、申込から完了まで数週間〜1ヶ月程度かかることが一般的です。
※なお、医療機関と併設している場合などは、既設ネットワークを共用できるケースもあります。この場合は新たな敷設が不要となるため、導入支援事業者に事前に相談しましょう。
② レセプト作成用の端末を準備する
オンライン請求を行うには、レセプト作成用ソフトを使用して請求データを作成する必要があります。そのため、ソフトの動作要件を満たすパソコンなどの端末を用意することが前提です。
すでに請求ソフトを使用しているパソコンがある場合は、基本的に新たな端末を準備する必要はありません。ただし、新たに導入する場合は、ソフトの仕様に合ったスペックの端末を選ぶようにしましょう。
③ レセプト作成用ソフトを準備する
現在使用しているレセプト作成ソフトがある場合は、そのソフトが訪問看護の医療保険請求に対応したオンライン請求機能を備えているかを、開発元のシステムベンダーに確認しましょう。
- 現在ソフトを導入していない
- 使用中のソフトがオンライン請求に「対応予定なし」
上記のパターンに当てはまる場合には、オンライン請求に対応しているソフトへの乗り換えや新規導入が必要になります。なお、「トリケアトプス」はオンライン請求に対応しているため、現在トリケアトプスを利用中であれば、新たなソフト契約や切り替えは不要です。
④ オンライン請求・オンライン資格確認用の端末を準備する
オンライン請求およびオンライン資格確認を導入するにあたり、オンライン資格確認に対応するOSが搭載された専用のパソコン端末を用意することが推奨されています。
この端末は、オンライン請求とオンライン資格確認の両方を1台で兼用することが可能です。導入時は、推奨される仕様に準拠した端末を選びましょう。詳しい要件については、以下の国が提示している「資格確認端末において満たすべき要件」をご確認ください。
⑤ レセプトソフトの改修・設定(レセコン事業者)
オンライン資格確認では、利用者のマイナンバーカードの読み取りや本人確認のための顔写真撮影が必要です。これらの操作を行うために、NFC機能(マイナンバーの情報を読み取る機能)を搭載したスマートフォンやタブレット端末を用意する必要があります。ただし、すでにNFC対応のモバイル端末をステーションで業務利用している場合は、新たに購入する必要はありません。
また、マイナンバーカードの読み取りを行う際には、対応端末を使って「マイナ在宅受付Web」にアクセスする必要があります。対応機種の一覧は「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」が提供しており、必要に応じて確認すると安心です。
⑥ オンライン請求用のネットワーク回線を準備する
オンライン請求を行うためには、セキュリティに配慮したネットワーク回線の整備が必要です。準備の必要性は、現在契約しているネットワークの状況によって異なります。
併設医療機関の回線を利用している場合
すでにインターネット環境が整っており、併設する医療機関の回線を共用している場合は、原則として新たな回線設置は不要です。ただし、接続方式がIP-VPNまたはIPsec+IKE方式に対応していない場合は、追加契約が必要になることがあります。
IP-VPN接続可能な回線(例:フレッツ・BBIQ等)を利用している場合
既存の回線をそのまま利用できますが、オンライン請求用の端末と介護レセプト用の端末は別々に用意する必要があります。また、これらの端末はセキュリティ対策を施した状態で運用することが求められます。具体的には以下のようなガイドラインに沿って対応が必要です。
「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第6.0版)」
「オンライン資格確認等、レセプトのオンライン請求及び健康保険組合に対する社会保険手続きに係る電子申請システムに係るセキュリティに関するガイドライン」
上記以外の回線を利用している場合
IPsec+IKE方式を用いて、既存のインターネット回線を活用する方法と、新たにIP-VPN接続が可能な回線を契約する方法があります。回線の敷設費用はおおよそ11,400円とされており、オンライン資格確認と同時に導入する場合には、補助金の対象となります。
※毎月の利用料金は回線の種類や契約事業者によって異なるため、詳細はネットワーク事業者や支払基金のネットワークサポートデスクまでお問い合わせください。
⑦ 各種届出書と電子証明書を準備する
オンライン請求を行うには、ネットワーク上でのなりすましなどを防止するため、審査支払機関が発行する電子証明書の取得が必須です。ここまでの準備が整ったら、以下の届出書類を支払基金へ提出します。
- 電子情報処理組織の使用による費用の請求に関する届出
- 電子証明書発行等依頼書(保険医療機関・保険薬局・特定健診機関・特定保健指導機関など)
※レセプト業務を委託している場合は、「事務代行者を介した届出」の提出も必要です。
提出された書類は毎月20日に取りまとめられ、設定ツールが翌月15日までに届きます。そのツールを用いて、電子証明書をダウンロード・設定し、ネットワークへの接続確認(導通試験)を実施します。これにより届出の翌々月からオンライン請求が開始可能になります。電子証明書の発行料(更新料)は1,500円、有効期間は3年3ヶ月です。※届出書の郵送費は別途必要です。
オンライン資格確認・請求の利用申請、および電子証明書の取得は、「医療機関等向け総合ポータルサイト」から行えます。
⑧ 社内の運用体制を整える
オンライン請求を円滑かつ安全に運用するためには、事業所内での体制整備も欠かせません。厚生労働省では、セキュリティ確保や業務効率化のために、以下のような社内対応を推奨しています。
体制整備の例
- オンライン請求システムに関する安全対策規程の作成
- 職員の役割・権限の明確化
- 運用フローやルールの整備・見直し
- 不正アクセスや情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策
これらの整備にあたっては、支払基金が公開している「オンライン資格確認等システム及びレセプトのオンライン請求システムに係る安全対策の規程例」も参考になります。導入前にしっかりとルールや手順を整えておくことで、導入後のトラブルを防ぎ、スムーズな運用につながります。
訪問看護における本人確認の方法
令和6年10月以前は、本人確認の方法は暗証番号(4桁)の入力のみでしたが、令和6年10月よりマイナ資格確認アプリを使用することで、マイナンバーカードの顔写真と利用者の顔が同一であるかを確認(目視確認)することで本人確認となり、資格情報の確認ができるようになりました。マイナ資格確認アプリを使用しての本人確認の手順は以下の通りです。
①モバイル端末等からアプリ(マイナ資格確認アプリ)を用いて資格確認を実施します。
②マイナンバーカードをモバイル端末等にかざし、暗証番号(4桁)の入力、またはマイナンバーカードの顔写真と利用者の顔が同一であるかを確認(目視確認)することにより本人確認を行います。
訪問看護における資格情報確認の手順
初回訪問後に行う「資格情報の確認」の手順
初回訪問時に資格情報の取得・同意登録が正常に完了した後、訪問看護ステーションのレセプトコンピュータ等を用いて、訪問看護ステーションコードを元に利用者の被保険者番号等を取得できます。また、訪問看護ステーションごとに任意で照会番号を登録することで次回の訪問前の照会をスムーズに行うことができます。
①資格情報の照会・結果確認
レセプトコンピュータ用端末等で資格情報の照会・結果確認を行います。
②照会番号登録
訪問看護ステーションごとに任意で照会番号を登録し、次回の訪問前の照会をスムーズに行うことも可能です。
2回目以降の訪問前に行う「再照会」の手順
2回目以降の訪問前(継続的な訪問看護が行われている間)に、利用者の最新の資格情報と利用者の同意に基づき薬剤情報等の閲覧(再照会)を行う際は、レセプトコンピュータ等で資格確認一括要求ファイルを作成します。
①訪問する利用者情報をアップロード
レセプトコンピュータ等で資格確認一括要求ファイルを作成し、オンライン資格確認等システムにアップロードします。
②照会結果を確認・ダウンロード
アップロード後しばらく時間をおいてから、照会結果を確認・ダウンロードします。
③薬剤情報等の閲覧
レセプトコンピュータ等で被保険者番号等の検索条件を入力し、利用者の情報を検索します。
オンライン請求・オンライン資格確認のよくある質問

Q.オンライン請求を開始すると、返戻レセプトもオンラインで取得できるようになるのでしょうか。
A.現在、審査支払機関からの返戻レセプトは、オンライン請求システムでCSV形式のダウンロードが可能です。また、保険者からの再審査請求に係る返戻レセプトについても、平成22年7月からCSV形式のダウンロードが可能となっています。
Q.オンライン請求に必要なパソコンの設定は、あまりパソコンに詳しくなくてもできますか。
A.オンライン請求の操作手順書は、パソコンの設定について、実際のパソコン画面を掲載した分かりやすい構成となっています。パソコンの操作や操作手順書の内容で困った場合は、ヘルプデスクも開設していますので、併せてご利用願います。
なお、オンライン請求のため自らパソコンの設定を行ったドクターからは、「自分はあまりパソコンに詳しい方ではないが、操作手順書に従って設定作業を行ったところ、2時間程度で設定することができた。」という話を聞いています。
Q.介護保険の請求システムとはどこが 異なるのですか?(医療保険と介護 保険のオンライン請求の違いは?)
A.介護保険請求と医療保険請求とでは、オンライン請求に使用するネットワーク回線が異なります。
オンライン請求・オンライン資格確認の導入準備で不明な点の問い合わせ先
オンライン請求やオンライン資格確認について問い合わせをしたい方は、以下窓口やサイトをご確認ください。
訪問看護のオンライン請求・オンライン資格確認の総合ポータルサイト
オンライン請求に関するお問合せ
- オンライン請求相談窓口
オンライン資格確認に関するお問合せ - オンライン資格確認等コールセンター :0800-080-4583
※通話料無料。祝日を除く平日8:00~18:00、土曜8:00~16:00
訪問看護のオンライン請求対応ソフトなら「トリケアトプス」

トリケアトプスは訪問看護のオンライン請求に対応した介護ソフトです。国保連合会もしくは支払基金へ提出する「訪問看護療養費請求書」(様式第一~第三)、「訪問看護療養費明細書」(様式第四)、「総括表」を作成・出力できます。