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介護の基礎知識

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)とは?評価基準や注意点

  • 公開日:2025年05月12日
  • 更新日:2025年05月12日

障害高齢者の日常生活自立度とは、高齢者が日常生活をどの程度自立して送れているかを簡単に評価するための指標です。要介護認定の際に行われる調査や、主治医意見書などの介護保険関連の書類で、審査判定の参考としてよく用いられており、通称「寝たきり度」とも呼ばれます。

本記事では障害高齢者の日常生活自立度の概要や判定基準、評価する際のポイントや注意点を解説します。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)とは

この評価は、その名の通り、高齢者がどの程度自立して日常生活を送れるかを確認するための基準であり、厚生労働省によって定められています。寝たきり度が重いほど身体機能が低くなり、介護負担が増えます。この基準は、医療機関や介護現場で広く活用されており、利用者の基本情報として書類に記載されたり、申し送りに活用されています。

「認知症高齢者の日常生活自立度」との違い

「障害高齢者の日常生活自立度」と似た言葉に「認知症高齢者の日常生活自立度」がありますが、これらはそれぞれ別物です。「障害高齢者の日常生活自立度」は身体機能の低下による日常生活への影響を評価するものであるのに対し、「認知症高齢者の日常生活自立度」は認知症による判断力・思考力の低下に伴う日常生活への影響を評価します。

活用される場面

障害高齢者の日常生活自立度は、要介護認定調査主治医意見書など、介護保険サービスの申請や審査時の判断材料として使用されます。また、医療現場では、看護計画書リハビリテーション計画書といった患者の基本情報をまとめる資料に記載されることが一般的です。介護現場では、ケアマネージャーが作成するケアプランや、デイサービス事業所の通所介護計画書個別機能訓練計画書などの計画書にも、利用者の基本情報として記載されることが多くあります。

このように、障害高齢者の日常生活自立度は、医療・介護の現場で幅広く活用され、ご利用者様に適した支援やサービス提供のために重要な指標となっています。また、日々の業務でも、病院から介護現場への申し送りや、ケアマネからデイサービスへの申し送りなど医療だけでなく介護現場においても日常的に活用されています。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の評価項目

障害高齢者の日常生活自立度の評価項目は、高齢者が現在どのような生活を送っているかを、ランクJ・ランクA・ランクB・ランクCの4つのランクで客観的に評価します。4段階に分けることで、利用者の状況に応じた適切な支援やサービスの提供が行いやすくなります。ランクJが最も自立度が高く、ランクCに近づくほど自立度は低くなります。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の判定基準

障害高齢者の日常生活自立度の判定基準は以下の通りです。高齢者の日常生活を客観的に判断して、判定基準に該当するものに○印をつけていきます。PDFのダウンロードは以下より行えます。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準
状態 ランク
判定基準
生活自立 ランクJ
何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する
1. 交通機関等を利用して外出する
2. 隣近所へなら外出する
準寝たきり ランクA
屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない
1. 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
2. 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている
寝たきり ランクB
屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ
1. 車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う
2. 介助により車いすに移乗する
寝たきり ランクC
1 日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する
1. 自力で寝返りをうつ
2. 自力では寝返りもうてない

ランクJは「生活自立」を指し、自立度が最も高い状態を示します。反対に、ランクCに近づくほど自立度は低くなり、寝たきりの状態に近くなります。ランクJにおける「何らかの障害」とは、「疾病や傷害及びそれらの後遺症あるいは老衰により生じた身体機能の低下」を指し、具体的には以下のような状態が挙げられます。

  • 脳血管疾患の後遺症(軽度の麻痺など)
  • 骨折やその治癒後の機能障害
  • 加齢に伴う筋力や体力の低下(老衰)
  • 関節疾患(変形性膝関節症など)

 

これらの要因があっても、日常生活を自立して送れている状態がランクJに該当します。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)ランク別の判定基準詳細

障害高齢者の日常生活自立度のより詳しいランク別の判定基準詳細は以下の通りです。判定に迷った際には以下の詳細を確認して判断してください。

ランク 判定基準詳細
ランクJ(生活自立)
ランクJは、何らかの身体的な障害があるものの、日常生活はほぼ自立しており、一人で外出ができる方が該当します。
ここでいう「障害」とは、病気やケガ、その後遺症、あるいは加齢による筋力や体力の低下を指します。


・J-1:バスや電車などの公共交通機関を利用し、積極的に遠くまで外出する方が該当します。
・J-2:隣近所への買い物や老人会など、町内程度の距離なら外出する方が該当します。

ランクA(準寝たきり)
ランクAは「準寝たきり」と分類され、「寝たきり予備軍」ともいえる状態です。いわゆる「house-bound(ハウスバウンド)」にあたります。屋内での日常生活において、食事や排泄、着替えはおおむね自分で行うことができ、留守番も可能です。ただし、近所へ外出する際には介護者の援助が必要となる方が該当します。
なお、「ベッドから離れている」とは「離床」を意味し、布団を使用している場合も含まれます。ベッドの使用は、ご本人や介護者にとって負担を軽減するために推奨されることがあります。


・A-1:日中は寝たり起きたりしていますが、食事や排泄、着替え時はもちろん、それ以外の日中もベッドから離れている時間が長く、介護者がいればその介助のもと、比較的多く外出できる方が該当します。
・A-2:日中は寝たり起きたりしていますが、ベッドから離れている時間のほうが長いものの、介護者がいても外出することはほとんどない方が該当します。

ランクB(寝たきり)
ランクBは「寝たきり」と分類され、いわゆる「chair-bound(チェアバウンド)」にあたります。B-1とB-2の違いは、座った姿勢を自力で保てるかどうかです。日常生活の中で、食事や排泄、着替えのいずれかにおいて介護者の援助が必要となり、1日の大半をベッドの上で過ごしている方が該当します。
排泄については、夜間のみオムツを使用している場合は、介助が必要な状態とはみなしません。また、「車いす」は一般的なイスやポータブルトイレなどに置き換えて考えても問題ありません。


・B-1:介助なしに車いすへ移乗し、食事や排泄もベッドから離れて行える方が該当します。
・B-2:介護者の援助が必要で、車いすへ移乗し、食事や排泄も介護者のサポートが必要な方が該当します。

ランクC(寝たきり)
ランクCも「寝たきり」と分類されますが、ランクBよりも障害の程度が重い状態です。いわゆる「bed-bound(ベッドバウンド)」にあたります。日常生活の食事、排泄、着替えのすべてにおいて介護者の全面的な援助が必要で、1日中ベッドの上で過ごしている方が該当します。


・C-1:常にベッドの上で寝た状態ですが、自力で寝返りをうち体の向きを変えることができる方が該当します。
・C-2:自力で寝返りをすることができず、常にベッドの上で寝た状態の方が該当します。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)を評価するポイント

障害高齢者の日常生活自立度を評価するポイントは以下の通りです。ポイントを押さえてより正確な評価を行いましょう。

「能力」ではなく「状態」に着目する

障害高齢者の日常生活自立度の評価では、主に「ベッドから起き上がり、自力で移動できるかどうか」が大きな判断基準となるため、外出や自宅内での移動に関わる「状態」を確認します。重要なのは「能力」ではなく「状態」に着目することです。

補装具や自助具を使用した状態で判定しても問題ない

障害高齢者の日常生活自立度の評価は補装具や自助具を使用した状態で判定しても問題ありません。例えば歩行補助つえを使用してひとりで外出ができる場合、歩行能力に不安があったとしても「自立」とみなされ、ランクJに判定される可能性があります。なお、個々の状況により異なるため、必ずしもこの基準が適用されるとは限りません。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)を評価する際の注意点

寝たきり度の判定にはいくつか注意点があります。判定が下りない場合は利用できるサービスも変わってくるので、事前に確認しましょう。

一定期間の状況に基づいて判断する場合がある

パーキンソン病などの疾患では時間帯によって変動したり、薬を飲んでからの時間や体調で症状が軽くなったり重くなったりする場合があります。時間帯や体調などによって状態の変化がある場合には、過去1週間の中で最も頻繁に見られた状況をもとに評価します。その場合、その日頃の状況の具体的な内容を「特記事項」に記載します。

健常な高齢者は対象外

障害高齢者の日常生活自立度は、何らかの障害を有する高齢者を対象としているため、健常な高齢者は評価の対象となりません。そのため、障害や疾病による身体機能の低下が見られない高齢者には適用されません。

まとめ:障害高齢者の日常生活自立度は適切な支援やサービス提供に役立つ重要な指標です

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)とは、高齢者が日常生活をどの程度自立して送れるかを示す評価指標です。この指標は、介護や医療の現場で広く活用され、ご利用者様に適した支援やサービスを提供するために重要な役割を果たします。

評価は、ランクJからCまでの4段階に分類されており、具体的には以下の通りです。

  • Jランク:何らかの障害があるものの、ほぼ自立しており、外出もできる状態
  • Aランク:屋内での生活は自立しているが、外出時には介助が必要な状態
  • Bランク:屋内での移動や起居動作(起き上がり、立ち上がり)に介助が必要な状態
  • Cランク:寝たきり状態で、常に介助が必要な状態

 

この評価は、介護保険サービスの申請や審査時の判断材料として使用されるほか、看護計画書やリハビリテーション計画書の作成時や、ケアプランの作成にも活用されます。

評価の際には、利用者の生活状況を十分に確認し、ポイントや注意点を押さえて正確かつ適切に評価することが重要です。特に、身体機能の変化や生活環境の違いを見落とさず、継続的な観察と評価を行うことが求められます。障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)は、ご利用者様の生活の質を向上させるための重要な指標であり、適切な評価と対応が円滑な介護サービスの提供につながります。

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