無料体験お申込み 資料請求・お問い合わせ

介護の基礎知識

長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは|点数基準ややり方

  • 公開日:2025年05月12日
  • 更新日:2025年05月12日

認知機能が低下し、日常生活に支障が出る状態を認知症といいます。代表的なものには、アルツハイマー型(脳の一部が委縮するタイプ)のほか、血管性認知症レビー小体型認知症前頭側頭型認知症などがあります。認知症は早期発見・早期治療が重要であり、自分や家族に疑わしい症状が見られた際には、できるだけ早めに検査を受けることが大切です。

認知症の中には根本的な治療が難しいものもありますが、早期の対応によって進行を遅らせることが可能です。そのため、どのような検査が行われるのか、事前に知っておきたいと考える方も多いでしょう。認知症の診断にはさまざまな検査方法がありますが、日本では主に改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMMSE(ミニメンタルステート検査)が広く活用されています。本記事では長谷川式認知症スケール(HDS-R)に焦点を当てて、本記事では、HDS-Rのやり方や点数基準、MMSEとの違いについて解説します。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは?

人や物の名前が思い出せない、最近物忘れが増えたと感じることは、加齢とともに誰にでも起こり得ることです。しかし、それが単なる物忘れなのか、認知症の兆候なのかを判断する際に役立つのが「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」です。

「長谷川式認知症スケール」は、一般の高齢者の中から認知症の可能性がある方をスクリーニングするための簡易的な認知機能テストで、記憶を中心とした大まかな認知機能障害の有無を調べる目的で用いられます。1974年に聖マリアンナ医科大学・神経精神科教授であった長谷川和夫氏らにより開発され、現在では日本国内の多くの医療機関で信頼性の高い評価方法として使用されています。

開発当初は「長谷川式簡易知能評価スケール」という名称でしたが、1991年に質問項目と採点基準が見直され、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」へと改訂されました。さらに、2004年に疾患名が「痴呆症」から「認知症」に変更されたことにより、現在では「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」と呼ばれています。

HDS-Rは、開発者である長谷川和夫氏の名前を含めた「Hasegawa Dementia Scale-Revised」の略称です。

ミニメンタルステート検査(MMSE)との違い

長谷川式認知症スケールとともに、認知症の評価に使用されるテストにMMSE(ミニメンタルステート検査)があります。MMSEはアメリカで開発された認知機能テストで、世界中で広く活用されています。

長谷川式認知症スケールの設問数の9つに対して、MMSEは11項目と数が多く、実施には10〜15分程度かかるのが特徴です。テストの内容は、時間や場所の見当識計算文章の復唱図形模写などの評価項目で構成されています。また、MMSEは口頭での回答に加えて、文章の記述や図形の描写などが求められる点が特徴で、口頭のみで行う長谷川式認知症スケールとは異なります。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価項目一覧

「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」は、見当識や記憶力、計算などの認知機能を評価する9つの項目から構成されており、口頭で質問を投げかけ、受検者に回答してもらうという形式で行います。設問内容や評価基準、加算される点数は以下のとおりです。1つの設問で正解すると1点が加算されますが、問題によっては自発的な正解で2点、ヒントを提示した上での正解で1点とするなど、設問ごとに評価基準が異なります。

①年齢

自分の年齢が答えられるかの検査

②日付に関する見当識

日付や曜日を聞き、自分の置かれた状況を把握できるかを検査

③場所に関する見当識

現在いる場所を答えられるかの検査

④言葉の記銘

3つの単語(「桜、猫、電車」または「梅、犬、自動車」)を覚えてもらい、後で尋ねることを伝え、新しいことを覚える力を検査

⑤計算

簡単な引き算ができるかの検査

⑥逆唱

質問者が言った数字を逆から言えるかの検査

⑦言葉の遅延再生

4の設問で覚えてもらった単語を再度答えられるかの検査

⑧物品再生

時計や鉛筆、メガネなど5つの品物を見せた後に隠し、何があったかを答えてもらう検査

⑨言葉の流暢性

知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってもらう検査

テストの所要時間は5~10分程度です。しっかりと研修を受ければ、医療従事者でなくても簡単に実施できるため、医療現場だけでなく介護現場でも活用されており、医療機関を受診する前にご家庭で行うことも可能です。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)のやり方

ここでは、長谷川式認知症スケール(HDS-R)の具体的な実施手順や評価方法について説明します。

準備するもの

検査を行う際には、以下のものを事前に用意しておきましょう。

  • 評価用紙(結果を記録するため)
  • 筆記用具(記録やメモに使用)
  • 5つの品物(視覚記憶のテストに使用)

 

5つの品物は、身の回りにある関連性のない物を選ぶのがポイントです。例えば、以下のようなものが適しています。

  • 時計
  • マグカップ
  • 歯ブラシ
  • 鉛筆

 

品物の選定時には、できるだけ見た目や用途が異なるものを選ぶことで、より正確な記憶力の評価ができます。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)の設問内容と評価基準

「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」は、見当識や記憶力、計算などの認知機能を評価するための9つの項目で構成されています。テストは、口頭で質問し、その回答をもとに評価する形式です。設問の内容、評価項目、評価基準、配点については以下の一覧表をご参照ください。なお、1問正解ごとに1点が加算されますが、問題によっては自発的な正解で2点、ヒントを提示したうえでの正解で1点が付与されるなど、設問ごとに評価の基準が異なります。

雛形は以下よりダウンロードできますのでご利用ください。

改訂長谷川式簡易知能評価(HDS-R)
設問内容(全9問)
評価項目
評価ポイント/点数(合計30点)
①年齢はいくつですか
年齢
±2年の誤差まで正解 / 1点
②今日は何年何月何日ですか? 何曜日ですか?
日付の見当識
それぞれ答えられたら正解 / 各1点
計4点
③私たちが今いるところはどこですか?
場所の見当識
自発的に正解 / 2点
5秒後に「家ですか?病院ですか?」などのヒントで正解 / 1点
④これから言う3つの言葉を言ってください
(桜、猫、電車 または 梅、犬、自動車)
※答えた後「後でまた聞きますのでよく覚えておいてください」と伝える
即時記憶
それぞれ答えられたら正解 / 各1点
計3点
⑤100から7を順番に引いてください。
(100-7 は?、それからまた 7 を引くと? と質問する。最初の答えが 不正解の場合、打ち切る)
計算
93が答えられたら正解 / 1点
86が答えられたら正解 / 1点
⑥私がこれから言う数字を逆から言ってください 「6-8-2」 「3-5-2-9」
逆唱
「2-8-6」と答えられたら正解 / 1点
「9-2-5-3」と答えられたら正解 / 1点
⑦先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってください
※回答がない場合のヒント:植物、動物、乗り物
遅延再生
自発的に正解 / 各2点
ヒントで正解 / 各1点
計6点
⑧これから5つの品物を見せます。それを隠した後で何があったか言ってください
(時計、鍵、ペン、硬貨、くしなど相互に無関係なもの)
視覚記憶
1品目につき1点 / 各1点
計5点
⑨知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください
語想起・流暢性
0~5個以内しか答えられない / 0点
6個答えられた場合 / 1点
7個答えられた場合 / 2点
8個答えられた場合 / 3点
9個答えられた場合 / 4点
10個以上答えられた場合 / 5点

何点から認知症と判断されるの?

長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、30点満点で評価され、20点以下の場合は認知症の疑いが高いと判定されます。

参考として、以下の数値が目安とされています。

  • 認知症でない人の平均点:24点前後
  • 軽度の認知症の人の平均点:19点前後
  • 中等度の認知症の人の平均点:15点前後
  • 重度の認知症の人の平均点:10点前後

 

ただし、HDS-Rの点数だけで認知症と診断することはできません。テスト当日の体調や精神状態が影響し、実際の認知機能よりも低い点数が出る場合があります。そのため、診断には以下のような要素も考慮され、総合的に判断されます。

  • 教育歴や職歴、生活歴
  • 視覚や聴覚障害の有無
  • 精神疾患や服薬状況
  • 脳画像検査の結果

軽度認知障害(MCI)について

生活に大きな支障はないものの、記憶力などが低下し、正常とも認知症とも言えない状態が「軽度認知障害(MCI)」です。MCIの人は、5年以内に認知症へ進行する確率が高いため、早期発見と対応が重要です。

なお、HDS-RにはMCIの明確な診断基準はなく、他の検査方法と組み合わせて判断されるのが一般的です。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)を実施する際のポイント

HDS-Rを実施する際は、以下の点に注意して進めましょう。

  • 耳が遠い方の場合は検査を始める前に、どの程度の音量なら聞き取れるのかを確認しておきましょう。
  • 失語症の疑いがある場合は最初に問8と問9を実施し、その結果をもとにHDS-Rが適切か判断します。
  • 質問後に10秒以上返答がないときは、無理に待たず次の質問に進みましょう。
  • HDS-Rの内容を事前練習として訓練目的で使用するのは避けましょう。

 

これらのポイントを意識することで、より正確な評価が行えます。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)を実施する際の注意点

注意点として、認知症であっても高得点が出る場合があることに留意する必要があります。長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、主に記憶力の評価に重点を置いた検査です。そのため、初期段階では記憶障害が目立ちにくいレビー小体型認知症前頭側頭型認知症の場合、検査の感度が十分に発揮されないことがあります。また、自宅で検査を行う際には、以下の点に注意して実施してください。

  • 静かな環境で行う
  • 正しい評価のために、事前練習や繰り返しの実施は避ける
  • 聴力が低下している場合は、大きくはっきりとした声でゆっくり話す
  • 精神状態が不安定な場合は、家庭での実施を避け、医療機関での評価を優先する
  • 本人が拒否したり、テストの実施が本人の負担になる場合は、無理に行わない

 

認知症の判断は、1つの検査だけでは確定できません。正確な診断には、専門の医療機関で複数の検査を組み合わせて総合的に評価することが重要です。ご家族や身近な方が、同じ質問を繰り返す、料理の手順を間違えるなど、これまでと異なる行動が見られた場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

その他の認知症テストとは?

HDS-RやMMSE以外にも、認知症の評価に用いられるテストは様々です。以下ではその他の主な認知症テストをご紹介します。

①Mini-Cog

Mini-Cogは、3つの単語の即時再生と遅延再生、さらに時計描画を組み合わせたスクリーニング検査です。検査時間はおよそ2分程度と短時間で実施できます。カットオフ値は2点以下とされ、これに該当する場合は認知症の疑いがあると判定されます。

②MoCA

MoCA(Montreal Cognitive Assessment)またはMoCA-J(日本語版MoCA)は、視空間・遂行機能、命名、記憶、注意力、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識といった幅広い認知機能を評価するスクリーニング検査です。検査時間は約10分程度で、カットオフ値は25点以下がMCI(軽度認知症)と判定されます。特に、MMSEよりも糖尿病患者の認知機能障害の発見に優れている点が特徴です。

③DASC-21

DASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)は、認知機能障害や生活機能障害(社会生活の障害)に関する行動の変化を評価するための尺度です。21項目から構成され、検査時間は5〜10分程度となっています。

※いずれの認知症テストもスクリーニング検査のため、検査の目的や所要時間、施設の状況に応じて適切なテストを選択することが重要です。また、日常生活の自立度で簡単に判断できる方法に、「認知症高齢者の日常生活自立度」があります。

まとめ

長谷川式簡易認知症スケール(HDS-R)はあくまでも認知症の可能性を探るためのスクリーニングテストです。たとえ高得点でも認知症の疑いが完全に否定されるわけではなく、低得点でも認知症とは限りません。

身近な方が「同じ話を繰り返す」「物の置き場所がわからなくなる」など、これまでと異なる行動が目立つようになった場合は、早めに専門の医療機関に相談することが大切です。早期発見により、適切な対応や治療を受けることで、進行を遅らせたり、生活の質を維持したりできる可能性があります。ご家族や介護者の方は、HDS-Rを活用しつつ、焦らず温かく見守りながら、専門家のサポートを受けることを心がけましょう。

介護ソフトのトリケアトプスはHDS-Rテスト機能を搭載しています

介護ソフトのトリケアトプスはHDS-Rのテスト機能が搭載されています。項目は選択式で入力も楽々。合計得点は自動で算出されます。

介護ソフトのトリケアトプスは、介護現場の負担を軽減し、効率化を行うための介護ソフトです。 トリケアトプスが選ばれてきたポイントは以下の4つです。

01 お得な料金体系
トリケアトプスは従量課金制を採用しており、ご請求は使った分のみ。

最低220円/人~使用可能で、従量課金制の介護ソフトの中でも業界最安値です。上限価格もあるため、事業所の規模が大きくなって、思ったより負担が大きくなってしまった…なんてこともなく安心です。
オプションによる追加費用も無しで、全ての機能を標準装備で使用可能です。
02 パソコンが苦手な人でも使いやすい画面
ケアマネジャーやヘルパーさん、どんな人でも使いやすいよう、直感的にどこに何があるか、分かりやすい操作画面を設計しました。
iOS/Androidのスマホアプリも対応しており、スマホからでも簡単に実績入力が行えます。

イメージキャラクターのトリケアちゃんが見守ってくれる、女性に人気の可愛い操作画面です♪
03 ご利用いただいている事業者様の92%が「サポートに満足」と回答
介護ソフトの使い方で分からないことがあれば、お電話頂ければ、専任のオペレーターが丁寧に対応致します。
開発元が運営も行っているため、わからないことは丁寧にしっかりとご説明することができます。
電話もつながりやすく、困っている時にすぐ頼っていただけます。
04 お客様のお声から機能を開発
お客様から多くの声を寄せられた「こんな機能がほしい!」という機能を、他社では対応できないスピードでの実装を実現。ほぼ標準機能としてアップデートしているため、追加費用はいただきません。開発元がサポートも行っているため、ダイレクトに機能を反映することができます。

トリケアトプスは、最大3ヶ月間の無料体験を実施しています。 この機会にトリケアトプスをぜひお試しください。

介護の基礎知識一覧へ