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介護の基礎知識

ブルンストローム・ステージ(Brs)テストの流れを解説

  • 公開日:2025年05月12日
  • 更新日:2025年05月12日

ブルンストローム・ステージ(BRS:Brunnstrom Stage)は、主に脳卒中による片麻痺の回復度合いを評価するための指標です。中枢神経麻痺に特有の運動パターンに基づき、麻痺の回復過程を段階的に評価します。手指、上肢、下肢それぞれの麻痺の程度を判定するために用いられ、リハビリテーションにおいて重要な役割を果たします。この記事では、ブルンストローム・ステージの概要や各ステージの内容、評価方法について詳しく解説します。

ブルンストローム・ステージ(Brs)とは

ブルンストローム・ステージ(Brunnstrom Stage:BRS)は、脳血管疾患などによる麻痺の回復過程を観察し、運動麻痺の程度を評価するための指標です。この評価法では、回復のレベルに応じて6つのステージに分類され、さらに「手指」「上肢」「下肢」の3つの部位に分けて評価を行います。

ブルンストローム・ステージは、各部位ごとの回復状態を詳細に把握できるため、麻痺の進行状況や回復度合いを確認しやすいのが特徴です。医療や介護の現場でも広く活用されており、利用者の麻痺の状態を伝える際にブルンストローム・ステージが用いられることも少なくありません。各ステージの特徴や評価方法を理解しておくことで、日々のケアやリハビリ計画の立案に役立ちます。

ブルンストローム・ステージを理解するメリット

メリット①正確な情報共有に役立つ

介護現場では、ブルンストローム・ステージは非常に重要な評価スケールの1つです。厚生労働省の報告によると、脳血管疾患は要介護状態になる原因として最も多いとされています。そのため、介護現場で脳血管疾患に伴う麻痺に対応する機会は少なくありません。

ブルンストローム・ステージは、麻痺のある方の運動機能を評価し、その情報を共有する際に役立ちます。仮に、すべての職員がブルンストローム・ステージを理解していた場合、利用者の麻痺の状態を「ブルンストローム・ステージ〇」と伝えるだけで、正確な情報が共有できるため、麻痺の状態の正確な理解のためにも、ブルンストローム・ステージについて理解しておくと良いでしょう。

具体例:ブルンストローム・ステージⅠの場合

たとえば、ブルンストローム・ステージⅠの利用者がいる場合、その方の麻痺側は自動運動ができない状態です。

仮に「なるべく自立した生活動作を促す」という方針があったとしても、ブルンストローム・ステージⅠの方には、麻痺側の動作を促すのは困難です。そのため、ケアを行う際には、麻痺側の自動運動ができないことを念頭に置き、適切なサポートが求められます。

メリット②各職種間の情報共有に役立つ

介護現場では、さまざまな職種のスタッフが連携し、利用者のケアに関わっています。評価者が全スタッフに麻痺の状態を一から説明するのは容易ではありません。しかし、ブルンストローム・ステージを活用すれば、短時間かつ正確に情報を伝達でき、よりスムーズなケアが可能になります。ブルンストローム・ステージは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったセラピストが情報共有に用いることがあり、介護現場での申し送りなどで耳にしたことがある方も多いでしょう。この評価方法はリハビリ職に限らず、さまざまな職種で活用できる情報です。普段の業務の中でも、例えば以下の場面で活用できます。

  • 介護士:日常生活の支援
  • 看護師:利用者の全身状態の管理
  • ケアマネジャー:介護計画の立案時の指標

 

ブルンストローム・ステージは、すべての職種が活用できる重要な評価です。利用者の麻痺の状態を把握し、適切なケアを行うためにも、介護現場で関わるスタッフは理解しておきましょう。

ブルンストローム・ステージ(Brs)の6つの分類

ここでは、ブルンストローム・ステージの分類について解説します。評価スケールを正しく理解するために、各ステージの特徴を押さえておきましょう。

ブルンストローム・ステージは、回復のレベルに応じて6段階に分類されます。「数字が小さいほど麻痺の程度が重く」「数字が大きいほど麻痺の程度が軽い」という特徴があります。各ステージの詳細は以下の通りです。

ステージ 機能段階 特徴
ステージⅠ 随意運動なし(弛緩) 意図的に筋肉を収縮させることができない
ステージⅡ 連合反応 意図的、または反射的にわずかな筋収縮が見られる
ステージⅢ 共同運動 随意的な大きな運動が可能
ステージⅣ 分離運動の出現 部分的に機能的な動作が可能
ステージⅤ 分離運動の範囲拡大 自立した日常生活ができるレベル
ステージⅥ 意図的な分離運動が可能 正常に近い動きが可能

ブルンストローム・ステージの評価部位

ブルンストローム・ステージは、以下の3つの部位ごとに評価します。

  • 上肢:肩関節や腕の動き
  • 手指:手の指の動き
  • 下肢:股関節や膝関節などの動き

 

これにより、利用者の身体機能をより細かく把握することができます。

ブルンストローム・ステージの表記方法

ブルンストローム・ステージの結果は、次のように表記するのが一般的です。

例)「ブルンストローム・ステージ:上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅴ」

このように記録することで、利用者の麻痺の状態を一目で把握しやすくなります。ブルンストローム・ステージを理解し、各ステージの特徴を正確に押さえることで、利用者の身体機能を適切に評価し、より良いケアやリハビリに役立てることができるでしょう。

部位別の評価ステージ

前述の通り、ブルンストローム・ステージは上肢・手指・下肢の3つの部位ごとに評価が行われます。以下に、各ステージの評価内容を部位別に解説します。

ステージ 上肢 手指 下肢
ステージⅠ 自分で意図的に力を入れられない状態 自分で意図的に力を入れられない状態 自分で意図的に力を入れられない状態
ステージⅡ 腕の上げ下ろしはできないが、力は入る 指がわずかに曲がる 脚の曲げ伸ばしはできないが、力は入る
ステージⅢ 自分で意図的に腕の上げ下ろしができる こぶしを握れるが、曲げた指が伸びない 自分で意図的に脚の曲げ伸ばしができる
ステージⅣ 以下のうち1つ以上可能
・手の甲を背中に付ける
・肘を伸ばした状態で腕を90°前に上げる
・肘を90°に曲げた状態で、手のひらを天井や床に向ける
握りこぶしの状態から、親指をわずかに離すことができる 以下のうち1つ以上可能
・座った姿勢で足を後ろに引く
・座った姿勢で踵を床につけたまま、つま先を上げる
ステージⅤ 以下のうち1つ以上可能
・肘を伸ばした状態で頭まで手を上げる
・肘を伸ばした状態で、腕を横方向に90°の高さまで上げる
・肘を伸ばした状態で、手のひらを天井や床に向ける
以下のうち1つ以上可能
・物をつまむ
・指をすべて伸ばす
・ボールを握る形にする
・筒を握る形にする
以下のうち1つ以上可能
・立った姿勢で、足をお尻に近づけるように膝を曲げる
・立った姿勢で、膝を伸ばしたまま、つま先を上げる
ステージⅥ 腕の上げ下ろしがスムーズに行え、正常に近い速度と動作が可能 指の曲げ伸ばしがスムーズに行え、つまむ・握る動作が円滑にできる 以下のうち1つ以上可能
・立った姿勢で脚を横に開く
・座った姿勢で膝を90°に曲げた状態で、足の裏を内側や外側に向ける

ブルンストローム・ステージの評価のポイント

  • ステージⅠ~Ⅲ:3部位共通で、意図的に力を入れて動かせるかどうかを評価します。
  • ステージⅣ以降:各部位ごとに指定された運動ができるかを評価し、ステージが上がるにつれて動作の難易度も高くなります。

 

ブルンストローム・ステージを理解し、各段階の特徴を把握することで、利用者の回復状態に合わせた適切なケアやリハビリ計画に役立てることができます。

ブルンストローム・ステージテストの流れ

ブルンストローム・ステージテストをスムーズに行うためには、測定の流れを理解しておくことが重要です。以下に、測定の基本的な流れを解説します。

①ステージⅢのテストから開始

・測定はステージⅢのテストから始めます。

②ステージⅢのテスト結果に応じた対応

・ステージⅢができない場合:ステージⅡのテストに移行します。
・ステージⅢができる場合:ステージⅣのテストに進みます。

③ステージⅡのテスト結果に応じた対応

・ステージⅡのテストができない場合:判定はステージⅠとなります。
ステージⅡのテストができる場合:判定はステージⅡです。

④ステージⅣ以降のテストの流れ

・ステージⅣができた場合は、さらにステージⅤのテストに進みます。
ステージⅤができた場合は、最後にステージⅥのテストを実施します。

⑤最終判定のポイント

・不可能と判断されたテストの1つ前のステージが、最終的な評価ステージになります。

例えば、ステージⅣのテストが可能で、ステージⅤのテストが不可能だった場合は、判定はステージⅣとなります。

効率的な測定のコツ

テストでは、被検者が「できない」と判断されたステージに注目しましょう。その1つ前のステージが評価結果となるため、無駄なテストを省くことができ、被検者の負担を軽減しながら効率的な評価が可能になります。測定の流れを理解しておくことで、正確な評価とスムーズな情報共有に役立てることができるでしょう。

ブルンストローム・ステージ(Brs)の評価方法

ここでは、上肢・下肢・手指の各部位ごとにブルンストローム・ステージの評価方法について解説します。

【共通の評価ポイント】

StageⅡの評価では、「力が入るかを確認する」ことが重要です。評価する部位に検査者が触れ、筋肉の収縮が確認できるかどうかを基準に判断します。

上肢のブルンストローム・ステージの評価方法

StageⅠ~Ⅲの評価方法

上肢のStageⅠ~Ⅲの評価では、まず座った姿勢で腕の上げ下ろしができるか確認します。

  • 腕の上げ下ろしが十分にできるStageⅢ
  • 腕の上げ下ろしが不十分な場合 → 肩や腕に力が入るかを確認
    ・力が確認できるStageⅡ
    力が確認できないStageⅠ

StageⅣ~Ⅵの評価方法

StageⅣ~Ⅵの評価では、StageⅢの動作(腕の上げ下ろし)が十分にできることを確認してから進めます。

【StageⅣの評価】

以下の3つの動作のうち、1つ以上が可能かをチェックします。

  • 手の甲を背中につける
  • 肘を伸ばした状態で、腕を90°前に上げる
  • 肘を90°に曲げた状態で、手のひらを天井や床に向ける

1つ以上の動作が可能StageⅤのテストへ進む
1つもできないStageⅢと判定

【StageⅤの評価】

以下の3つの動作のうち、1つ以上が可能かをチェックします。

  • 肘を伸ばした状態で、頭まで手を上げる
  • 肘を伸ばした状態で、腕を横方向に90°の高さまで上げる
  • 肘を伸ばした状態で、手のひらを天井や床に向ける

✅ 1つ以上の動作が可能StageⅥのテストへ進む
1つもできないStageⅣと判定

【StageⅥの評価】

腕の上げ下ろしが十分に行え、正常に近いスムーズな動きができるか確認します。

  • 麻痺していない側とほぼ同じように動かせるStageⅥ
  • 動作が遅かったり不自然な場合StageⅤ

 

上肢のブルンストローム・ステージテストの流れは以下の動画より確認できますので参考にしてみてください。

下肢のブルンストローム・ステージの評価方法

StageⅠ~Ⅲの評価方法

まず、仰向けに寝た姿勢で脚の曲げ伸ばしができるかを確認します。

  • 意図的に十分な脚の曲げ伸ばしができるStageⅢ
  • 曲げ伸ばしが不十分な場合 → 股関節や太ももに力が入るかを確認
    ・力が確認できる → StageⅡ
    ・力が確認できない → StageⅠ

StageⅣ~Ⅵの評価方法

下肢のStageⅣ~Ⅵの評価では、StageⅢの動作(脚の曲げ伸ばし)が十分にできることを確認してから進めます。

【StageⅣの評価】

以下の2つの動作のうち、1つ以上が可能かをチェックします。

  • 座り姿勢で、足を後ろに引く
  • 座り姿勢で、踵を床に付けたまま、つま先を上げる

1つ以上の動作が可能StageⅤのテストへ進む
1つもできないStageⅢと判定

【StageⅤの評価】

以下の2つの動作のうち、1つ以上が可能かをチェックします。

  • 立った姿勢で、足をお尻に近づけるように膝を曲げる
  • 立った姿勢で、膝を伸ばしたまま、つま先を上げる

1つ以上の動作が可能StageⅥのテストへ進む
1つもできないStageⅣと判定

【StageⅥの評価】

以下の2つの動作のうち、1つ以上が可能かをチェックします。

  • 立った姿勢で、脚を横に開く
  • 座った姿勢で、膝を90°曲げたまま、足の裏を内側や外側に向ける

1つ以上の動作が可能StageⅥ
1つもできないStageⅤと判定

下肢のブルンストローム・ステージテストの流れは以下の動画より確認できますので参考にしてみてください。

手指のブルンストローム・ステージの評価方法

StageⅠ~Ⅲの評価方法

まず、こぶしを握れるかを確認しましょう。

  • 意図的に十分なこぶしの握りが可能StageⅢ
  • こぶしを十分に握れない場合 → 手指に力が入るかを確認
    ・力が確認できるStageⅡ
    ・力が確認できないStageⅠ

こぶしが十分に握れることが確認できた場合は、StageⅣ~Ⅵのテストに進みます。

StageⅣ~Ⅵの評価方法

StageⅣ~Ⅵの評価は、こぶしが十分に握れる(StageⅢ)ことを確認してから行います。

【StageⅣの評価】

握りこぶしの状態から、親指を少しでも離す動作が可能かをチェックします。

動作が可能StageⅤのテストへ進む
動作ができないStageⅢと判定

【StageⅤの評価】

以下の4つの動作のうち、1つ以上が可能かをチェックします。

  • 物をつまむ
  • 指をすべて伸ばす
  • ボールを握る形にする
  • 筒を握る形にする

1つ以上の動作が可能StageⅥのテストへ進む
1つもできないStageⅣと判定

【StageⅥの評価】

指の次の動作が円滑に行えるかをチェックします。

  • 指の曲げ伸ばし
  • つまむ動き
  • 握る動き

麻痺していない側とほぼ同じ動きが可能StageⅥ
麻痺していない側より明らかに動作が遅いStageⅤと判定

手指のブルンストローム・ステージテストの流れは以下の動画より確認できますので参考にしてみてください。

まとめ:ブルンストローム・ステージは介護現場において重要な麻痺の評価

ブルンストローム・ステージ(Brs)は、麻痺の回復過程を6つのステージで評価する方法で、上肢、手指、下肢の動作を基に回復度を測定します。各ステージでは、力が入るか、特定の動作ができるかを確認し、麻痺していない側との比較で動作の円滑さも判断します。この評価方法は、介護現場で麻痺の状態を正確に把握し、適切な支援を提供するために非常に重要です。ブルンストローム・ステージは、介護現場において欠かせない麻痺の評価ツールのため、介護士や看護師、ケアマネジャーなど、職種に関わらず覚えておくと良いでしょう。

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