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介護の基礎知識

処遇改善加算の利用者・ご家族への説明例|重要事項説明書についても解説

  • 公開日:2025年05月02日
  • 更新日:2025年05月02日

介護業界における人材不足の解消を目指し、2024年度の報酬改定によって新たに新設された「介護職員等処遇改善加算」ですが、処遇改善加算の利用者・家族への説明は本当に必要なのか・どう説明して良いのかお悩みの事業所様も多いのではないでしょうか。本記事では説明の必要性や、計画書・重要事項説明書について解説します。

処遇改善加算の利用者・ご家族への説明は本当に必要?

「処遇改善加算は介護職員を対象とした加算ですが、利用者やご家族に説明する必要があるのでしょうか?」といった疑問の声を耳にします。利用者やご家族への説明が「本当に必要なのか?」「なぜ説明が求められるのか?」と感じる方も少なくありません。

処遇改善加算における利用者やご家族への説明は結論、必要です。理由としては、利用者の新規受け入れの際は重要事項説明書やパンフレットを用いて、サービスの概要に加えて加算・減算についても利用者や家族に説明することが介護サービス事業所の運営基準に定められているとともに、旧3加算から新処遇改善加算への移行の際も、同意書は算定に必要な書類となるからです。

処遇改善加算は、利用者が負担する介護サービス費用の一部に加算されるため、利用者の負担が増えることになります。どのような目的でその費用が発生しているのかを説明することで、利用者・ご家族からの誤解を防ぎ、トラブル防止や信頼関係構築に役立ちます。

利用者・ご家族への説明時に必要な「重要事項説明書」とは?

重要事項説明書とは、利用者との新規契約時の契約書の内容について具体的に説明するための書面です。利用者の新規受け入れ時に重要事項説明書やパンフレットなどを用いて、利用者様またはご家族に対してサービス内容や加算、減算等の説明を行うことが、介護サービス事業所の運営基準に含まれています。また、令和6年の介護報酬改定に伴い、重要事項説明書に記載されている重要事項などの情報は、法人のホームページまたは情報公表システムへの掲載が義務付けられました。事業者は、利用者やそのご家族が必要な情報に容易にアクセスできるよう、正確かつ最新の内容を公開する必要があります。

【重要事項説明書の項目例】 
・事業者の概要
・事業所の所在地等
・事業の目的や運営方針
・事業所窓口の営業日および営業時間
・サービス提供時間
・事業所の職員体制
・提供するサービスの内容
・従業者の禁止行為
・提供するサービスの利用料、利用者負担額
・加算、減算
・その他の費用(食費、おむつ代、キャンセル料など)
・利用料等の支払い方法
・サービス提供の留意点
・虐待の防止について
・秘密の保持と個人情報の保護について
・緊急時の対応方法について
・事故発生時の対応方法について
・心身の状況の把握
・居宅介護支援事業者等との連携
・サービス提供の記録
・非常災害対策
・衛生管理等
・業務継続計画の策定等について

利用者の新規受け入れの際は重要事項説明書の読み上げに加え、重要事項について丁寧に説明を行います。また、利用者様やご家族から質問があった場合には、疑問が解消できるように補足説明を行います。重要事項説明書の内容に関して、利用者様またはご家族の合意が得られた後に、署名などの手続きを行います。

各介護サービスの重要事項説明書の雛形は枚方市が公開しております。各事業所に合わせてカスタマイズしてご利用いただけます。

介護保険サービスの重要事項説明書モデル様式|枚方市

新処遇改善加算移行にあたっての利用者・ご家族へのご説明

2024年度の介護報酬改定にあたり、従来の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」から「介護職員処遇改善加算」に移行する際に、利用者負担額が変わることから、既存の利用者に対して再度変更内容のご説明を行うための同意書が必要となりました。同意書は新処遇改善加算への移行にあたり提出が必須と定められているため、移行の際は利用者とご家族の同意は必ず必要となります。

令和6年度介護報酬改定版の重要事項説明書変更同意書のフォーマットは、以下より東京都の提供する書類をダウンロードしてご利用いただけます。

重要事項説明書(介護サービス一覧表・適合表)|東京都

処遇改善加算について、利用者・ご家族への説明のポイント

利用者やそのご家族に処遇改善加算を説明する際は、以下のポイントを意識すると理解が得られやすくなります。

処遇改善加算を算定する目的を伝える

処遇改善加算は、介護職員の賃金向上や職場環境の改善を目的とした制度であること、質の高い介護サービスを継続的に提供するため、職員の待遇改善に充てられることなどを説明しましょう。また、処遇の改善により、利用者への良い影響があることもセットで伝えるようにしましょう。加算の導入により、職員の定着やスキル向上につながり、より良いサービスの提供が期待できることを伝えることで、加算の導入を前向きに検討していただく材料になります。

具体的な利用者負担額を示す

加算の取得により増える利用者様の自己負担額を具体的に伝え、大きい額ではないことを理解していただきます。「月額で〇〇円程度の増額になります」と具体的に伝えると、理解が深まり、安心していただけます。

丁寧で誠実な対応を心がける

説明する際は難しい専門用語は避け、ゆっくりとわかりやすく伝えることが大切です。また、利用者様やご家族が納得できるよう、疑問や不安にはしっかり対応しましょう。

 

こうした説明を心がけることで、利用者やご家族の安心感につながり、スムーズな同意を得やすくなります。

加算に必要な書類

加算申請時に必要な書類の例は以下の通りです。提出期限は、居宅系サービスは前月15日まで、施設系サービスは当月1日までとなっており、事業所の所在地を管轄する都道府県知事や市町村長へ提出します。

  • 介護職員処遇改善加算計画書
  • 体制等状況一覧表
  • 実績報告

処遇改善加算計画書とは

必要書類の中でも処遇改善加算計画書は特に必須の書類になります。処遇改善加算計画書は、正式には「介護職員処遇改善加算計画書」と呼ばれます。

記入の進め方としては、厚生労働省のホームページにあるフォーマットをダウンロードし、処遇改善加算計画書を埋めていきます。フォーマットの薄橙色のセルが必須の記入箇所になります。フォーマットの基本情報入力シートに情報を入力すると、必要な情報が個別表と総括表に自動的に転記されるようになっているため、まずは基本情報入力シートを埋めましょう。

※加算の申請時には個別表と総括表を提出しますが、基本情報入力シートの提出は不要です。フォーマットの濃いオレンジ色のセルに「×」が表示された場合、記入内容が要件を満たしていないか、未入力の状態となり、「〇」が表示された場合には要件を満たしていることを示します。

処遇改善加算計画書のダウンロードは以下より行えます。

介護職員の処遇改善:加算の申請方法・申請様式|厚生労働省

処遇改善加算計画書に記載する内容は以下の通りです。

  • 提出先に関する情報
  • 事業所の基本情報(事業所名、指定事業所番号、所在地など)
  • 加算・補助金の対象事業所に関する情報

また、厚生労働省の「介護職員の処遇改善に関する加算に関する通知」では、計画書に記載すべき内容を以下のように定めています。

  • 処遇改善加算の見込額
  • 賃金改善の見込額
  • 加算以外の部分で賃金水準を引き下げないことの誓約
  • 賃金改善を行う賃金項目及び方法
  • キャリアパス要件等に関する記載

これらの内容を、厚生労働省のホームページにあるフォーマットに沿って記入していきます。

処遇改善加算の利用者・ご家族への説明についてのよくあるご質問

Q1.契約書や重要事項説明書に押印をしなくても、法律違反にならないの?

特別な決まりがない限り、契約の際に押印がなくても契約の効力には影響ありません。契約は、当事者同士の意思が合致すれば成立するもので、押印は必須ではありません。介護サービスの契約書についても、押印欄をなくして署名のみで問題ないと周知している指定権者もいます。契約書の押印欄を省略する場合は、念のため指定権者に確認しておくと安心です。

まとめ:処遇改善加算の取得には利用者のご家族の同意が必要です

介護職員処遇改善加算は、介護職員を対象とした加算ですが、利用者やご家族への説明は必要です。新規受け入れの際の重要事項説明書に加算について記載し、家族・利用者にご説明するようにしましょう。また、ご説明の際には、処遇改善加算の目的を伝えることや、負担額の具体例を示すこと、丁寧で誠実な対応を心がけることで、同意を得られやすくなります。

介護職員処遇改善加算は、介護職員の賃金向上や職場環境改善のための重要な加算です。介護職員が長く働き続けるためにもなるべく算定するように心掛けましょう。

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