介護の基礎知識
【2024年度改定対応】訪問介護の緊急時加算とは 算定のポイントを解説
- 公開日:2025年02月14日
- 更新日:2025年02月17日

緊急時加算は、緊急性の高い訪問介護サービスを提供した場合に算定できる加算です。急な支援が必要になった際に迅速に対応できる体制を整えることで、利用者やそのご家族に安心感を提供できます。また、訪問介護サービスの質を向上させ、利用者の満足度を高めるためにも、緊急時加算の要件を正しく理解し、適切に運用することが重要です。
本記事では、訪問介護における緊急時加算の単位数や算定要件、ポイントや具体例、よくある質問について詳しく解説します。
緊急時訪問介護加算とは

緊急時訪問介護加算は、訪問介護サービスの24時間対応が求められるようになったことを受けて制定された算定項目です。
本来の訪問予定がない利用者に対し、急なケアが必要となった場合にサービスを提供すると算定が可能となります。また、緊急訪問の前後に通常の訪問介護サービスを実施していた場合でも、1回の緊急訪問につき100単位が加算されます。
そのため、同じ日に複数回の緊急訪問を行った場合は、その回数ごとに加算が適用されます。さらに、提供した訪問介護サービスの時間が20分未満であっても、「身体介護20分未満」の単位で加算される点にも注意が必要です。
緊急時訪問介護加算の対象サービス
- 訪問介護
加算の対象となるサービスは訪問介護のみとなります。
緊急時訪問介護加算の単位数
100単位/1回
緊急時訪問介護加算の算定要件
緊急時訪問介護加算を算定する際には、次の要件を満たす必要があります。
- 利用者・その家族等からの要請に基づき、24時間以内に訪問介護を行っていること
- サービス提供責任者が担当の介護支援専門員と連携を図り、介護支援専門員が訪問介護を提供する必要があると判断していること
- 訪問介護員等が居宅サービス計画外の緊急の訪問介護を行っていること
- 要請のあった時間、要請の内容、訪問介護の提供時刻、緊急時訪問介護加算の算定対象である旨等を記録していること
算定要件を正しく理解して加算を受けましょう。
緊急時訪問介護加算を算定する際のポイント
居宅サービス計画に含まれている場合は算定対象外となる
身体介護中心型の訪問介護サービスである必要がある
ケアマネジャーが緊急性のあるサービスだと判断している必要がある
緊急時訪問介護加算を適用するには、ケアマネジャーがサービスの緊急性を認めていることが必要です。訪問介護士が独自の判断で緊急対応を行った場合でも、ケアマネジャーの承認が得られなければ、緊急時加算の算定対象にはなりません。なお、ケアマネジャーと連携する時間がない場合や、連絡が困難な状況では、訪問介護サービスを実施した後に事後承認を得るようにしましょう。
利用者やその家族の同意を得る
緊急時訪問介護加算を算定するには、利用者やその家族の同意が必要です。事前に書面で加算に関する説明を行い、同意を得ておくことが求められます。対面での説明が難しい場合は、ビデオ面談などを活用し、適切な方法で同意を得るようにしましょう。
要請後24時間以内に訪問介護サービスを提供する
緊急時訪問介護加算は、要請を受けてから 24時間以内 にサービスを提供した場合のみ算定対象となります。要件上は24時間以内とされていますが、実際には迅速な対応が求められるため、緊急時に即応できる体制を整えておくことが重要です。
サービス提供記録を詳細に記録する
加算を適用するには、 サービス提供記録を詳細に残すこと が必須です。記録には以下の情報を正確に記載しましょう。
- 実施したサービス内容
- 提供日時
- 利用者の容態や身辺の状態
介護報酬の算定では、緊急時訪問介護加算に限らず、記録がなければ加算・減算の対象外となります。訪問介護サービスの提供時には、 詳細な記録を徹底 しましょう。
緊急時訪問介護加算の注意点
緊急時訪問介護加算を適用する際は、以下の注意点を把握しておきましょう。
算定に必要な書類を準備する
緊急時訪問介護加算を適用するには、 算定要件を満たしていることを証明する書類 を適切に準備する必要があります。スムーズに加算を算定するためにも、 訪問介護サービスの実施内容を詳細に記録 しておきましょう。
必要な書類
- 緊急時訪問介護加算に係る届出書
- 勤務体制・勤務形態一覧表(算定日から4週間分・従業者全員分)※各日の 緊急時連絡担当者が明確になるように印をつける 必要があります。
- 資格者証の写し
必要書類や証明書類が不足している場合、 加算が適用されない可能性 があるため、 事前に準備を徹底 しましょう。
不適切な加算算定を行わない
緊急時訪問介護加算を 不適切に算定 すると、事業所に対して 厳しい処罰 が科される可能性があります。
不適切な算定による処罰
- 介護報酬の返還
- 加算金の支払い
- 指定の取消し
特に 介護保険法第22条第3項 に基づき、 返還額の40%を加算金として徴収される こともあるため、 厳格な運用 を心がけましょう。
関係機関との連携を整備する
緊急時訪問介護加算を適用するには、 関係機関と連携して訪問介護を実施することが求められます。
訪問介護と連携する主な機関・職種
- 訪問介護士
- 訪問看護師
- サービス提供責任者
- ケアマネジャー
- 福祉用具専門相談員
- 移動介護従事者
- 医師(主治医)
緊急時に 迅速な対応ができる体制を整備 するため、 事前に関係機関との連携方法を取り決めておくこと が重要です。また、緊急時の 連絡先や対応フロー を明確にし、スムーズな訪問介護の実施を可能にしましょう。
緊急時訪問介護加算の算定率
緊急時訪問介護加算の算定率(2019年時点)は4.30%と低い傾向にあります。算定可能な状況の場合、加算を取得するようにしましょう。
留意事項
・1回の要請につき1回を限度として算定可能。
・原則ケアマネジャーとの事前連携を要するが、やむを得ず連携が図れない場合で、訪問介護事業所により緊急にサービス提供が行われ、事後にケアマネジャーにより、必要と判断された場合も算定可能。
・所要時間は、サービス提供責任者とケアマネジャーが連携を図った上で、要請内容から標準的な時間をケアマネジャーが判断する。想定外の場合で、実際に提供したサービス内容に応じた標準的な時間とすることは可能。
・所要時間は20分未満でも算定可能であるが、安否確認・健康チェック等のみの場合には算定対象とならない。
・加算対象の前後に行われた訪問介護との間隔が2時間未満でもそれぞれの所要時間に応じた所定単位数を算定可能。(所要時間を合算して算定しなくてよい。)
・同じ月のうちに同一事由で頻繁に加算が算定されることは考えにくく、そのような場合は居宅サービス計画の見直しが必要。
・算定時は留意事項通知で必要とされている記録のほか、訪問介護計画の修正、居宅サービス計画の変更が必要
緊急時訪問介護加算の算定可否の具体例
以下の具体例をもとに、ケースごとに緊急時訪問介護加算が算定されるかどうかを紹介します。
- 具体例① 夜間に排泄介助が必要な利用者からの依頼
- 具体例② いつ発生するかわからない排泄介助の依頼
- 具体例③ 事前に関係者間で確認済みの排泄介助の依頼
- 具体例④ 排泄介助の要請に伴う生活援助の依頼
- 具体例⑤ 契約外の利用者からの緊急介助の依頼
具体例① 夜間に排泄介助が必要な利用者からの依頼
Q.利用者の状況から夜間に排泄介助の必要性が想定されるが、時間、回数が定まっていないため、居宅サービス計画への位置付けを一切行っていない。この利用者から度々依頼があり、訪問するたびに毎回加算を行っている。この加算は適切か。
A.緊急時訪問介護加算は算定されない。排泄介助の必要性が当初から認められるのであれば、居宅サービス計画に位置づけを行うべきである。サービス提供の必要性が想定されているにもかかわらず、居宅サービス計画に位置付けず、加算を算定することは不適切である。また、本事例ではサービス提供が度々行われ、「緊急」とも判断できず、加算の算定はできない。
具体例②いつ発生するかわからない排泄介助の依頼
Q.排泄介助が必要だがいつ発生するか分からないため、居宅サービス計画には具体的な日時については記載せず、「依頼があればその都度対応する」こととして位置付けた。利用者から要請があり、これに応じて排泄介助を行った場合、加算の算定は可能か。
A.緊急時訪問介護加算は算定されない。排泄介助が日常的な通常のサービス提供として必要と判断されているものであり、利用者からの要請が「緊急」とは言えないものであれば、加算の算定はできない。
具体例③事前に関係者間で確認した排泄介助の依頼
Q.利用者の状況から通常は想定されないものの、利用者から排泄介助の要請がある可能性があり、「排泄介助の対応が必要な場合がありうる」ことをサービス担当者会議において関係者間で確認し、ケアマネジャーが居宅サービス計画の第2表に記載した。後日、利用者から当該内容の依頼があり、これに応じて対応し、当該サービス提供が、ケアマネジャーが「緊急」と判断したため、加算の算定を行った。この加算は妥当か。
A.緊急時訪問介護加算は算定される。本事例では居宅サービス計画への位置付けがあるが、これは、日常的なサービス提供の必要性について想定したものではなく、発生した場合に対応する必要があることを確認し、記載したものである。
このような場合で、実際に要請があり対応し、ケアマネジャーが「緊急」と判断した場合は、算定が可能。
具体例④排泄介助の要請で生活援助の依頼
Q.居宅サービス計画に排泄介助が位置付けられていない利用者から排泄介助の要請を受けて訪問したところ、生活援助(トイレ掃除)の必要もあったため、身体1+生活1で算定を行った。 この算定は妥当か。
A.緊急時訪問介護加算は算定される。掃除については排泄介助に付随して行ったものと考えられ、身体介護を中心としたサービス提供であれば、加算の算定も可能。
具体例⑤契約外の利用者から緊急介助の依頼
Q.通所介護のみ利用している利用者から、体調が悪化したため病院への介助をお願いしたいとケアマネジャーにヘルパー派遣の要請があった。 訪問介護ステーションと契約はしていなかったが、通所介護事業所と同一法人の訪問介護事業所があったため、当該訪問介護ステーションが対応した場合に緊急時訪問介護加算は算定されるのか。
A.緊急時訪問介護加算は算定されない。居宅サービス計画に基づき訪問介護事業所との契約を事前に締結しておく必要がある。そうでない状況での訪問介護の利用はそもそも不可能である。この場合、タクシー、救急搬送も考えるべきである。
緊急時訪問介護加算についてのQ&A
平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)より、緊急時訪問介護加算に関するよくある質問をピックアップしました。
平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)平成24年3月16日 問16
Q.緊急時訪問介護加算の算定時における訪問介護の所要時間はどのように決定するのか。
A.要請内容から想定される、具体的なサービス内容にかかる標準的な時間とする。したがって、要請内容については適切に把握しておくこと。また、本加算の特性上、要請内容からは想定できない事態の発生も想定されることから、現場の状況を介護支援専門員に報告した上で、介護支援専門員が、当初の要請内容からは想定しがたい内容のサービス提供が必要と判断(事後の判断を含む。)した場合は、実際に提供したサービス内容に応じた標準的な時間(現に要した時間ではないことに留意すること。)とすることも可能である。
なお、緊急時訪問介護加算の算定時は、前後の訪問介護との間隔は概ね2時間未満であっても所要時間を合算する必要はなく、所要時間 20 分未満の身体介護中心型(緊急時訪問介護加算の算定時に限り、20 分未満の身体介護に引き続き生活援助中心型を行う場合の加算を行うことも可能)の算定は可能であるが、通常の訪問介護費の算定時と同様、訪問介護の内容が安否確認・健康チェック等の場合は、訪問介護費の算定対象とならないことに留意すること。
最後に
この記事は、作成時点での最新の資料・情報に基づいています。具体的な解釈や申請については、最新の情報をご確認の上、必要に応じて自治体等へ申請やお問い合わせをお願いいたします。