介護の基礎知識
要介護認定調査(基本調査)「第3群:認知機能」の記載方法
3-1 意思の伝達
1.調査対象者が意思を他者に伝達できる 2.ときどき伝達できる 3.ほとんど伝達できない 4.できない
調査項目の定義
「意思の伝達」の能力を評価する項目です。
ここでいう「意思の伝達」とは、調査対象者が意思を伝達できるかどうかの能力です。
選択肢の選択基準
- 「 1. 調査対象者が意思を他者に伝達できる 」
- ・手段を問わず、常時、誰にでも「意思の伝達」ができる状況をいいます。
- 「 2. ときどき伝達できる 」
- ・通常は、調査対象者が家族等の介護者に対して「意思の伝達」ができるが、その内容や状況等によってはできる時と、できない時がある場合をいいます。
- 「 3. ほとんど伝達できない 」
- ・通常は、調査対象者が家族等の介護者に対しても「意思の伝達」ができないが、ある事柄や特定の人 (例えば認定調査員)に対してであれば、まれに「意思の伝達」ができる場合をいいます。
・認知症等があり、「痛い」「腹が減った」「何か食べたい」等、限定された内容のみ「意思の伝達」ができる場合は、「 3. ほとんど伝達できない」を選択します。 - 「 4. できない 」
- ・重度の認知症や意識障害等によって、「意思の伝達」が全くできない、あるいは、「意思の伝達」ができるかどうか判断できない場合をいいます。
調査上の留意点
「意思の伝達」については、その手段を問わず、調査対象者が意思を伝達できるかどうかを評価します。失語症が原因で会話が成立しなくとも、本人の意思が伝達できる場合は、それが会話によるものか、身振り等によるものかは問いません。伝達する意思の内容の合理性は問いません。伝達手段について特記することがある場合は、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
本人が自発的に伝達しなくても、問いかけに対して意思を伝えることができる場合は、その状況を評価します。なお、「意思の伝達」は能力を問う項目であるが、申請者の日常的な状態を頻度の観点から把握する項目であることから、他の能力を問う項目とは異なり、調査日の状況に加え、調査対象者及び介護者等から聞き取りした日頃の状況から選択を行い、調査日の状況と日頃の状況の両者を特記事項に記載します。
特記事項の例
- 失語症で、手指機能の低下により文字で書くこともできないが、身振りから、「意思の伝達」ができていると確認できたため、「1.調査対象者が意思を他者に伝達できる」を選択する。
3-2 毎日の日課を理解
1.できる 2.できない
調査項目の定義
「毎日の日課を理解する」能力を評価する項目です。
ここでいう「毎日の日課を理解」とは、起床、就寝、食事等のおおまかな内容について、理解していることです。厳密な時間、曜日ごとのスケジュール等の複雑な内容まで理解している必要はありません。
選択肢の選択基準
- 「 1. できる」
- ・質問されたことについて、ほぼ正確な回答ができる場合をいいます。
- 「 2. できない」
- ・質問されたことについて正しく回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいいます。回答の正誤が確認できない場合も含まれます。
調査上の留意点
起床や就寝、食事の時間等を質問して選択してもよいです。
なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間 )の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載します。
特記事項の例
- 調査当日の予定を答えることができたため、「1.できる」を選択する。
3-3 生年月日や年齢を言う
1.できる 2.できない
調査項目の定義
「生年月日や年齢を言う」能力を評価する項目です。ここでいう「生年月日や年齢を言う」とは、生年月日か年齢かのいずれか一方を答えることができることです。
選択肢の選択基準
- 「1.できる」
- ・質問されたことについて、ほぼ正確な回答ができる場合をいいます。
- 「2.できない」
- ・質問されたことについて正しく回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいいます。回答の正誤が確認できない場合も含まれます。
調査上の留意点
実際の生年月日と数日間のずれであれば、「 1. できる」を選択します。また、年齢は、2歳までの誤差で答えることができれば、「 1. できる」を選択します。
なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載します。
特記事項の例
- 生年月日は回答できず、干支と月だけは答えることができたが、年齢や生年月日が答えられなかったため、「2.できない」を選択する。
3-4 短期記憶
1.できる 2.できない
調査項目の定義
「短期記憶」(面接調査の直前に何をしていたか思い出す)能力を評価する項目です。
ここでいう「短期記憶」とは、面接調査日の調査直前にしていたことについて、把握しているかどうかのことです。
選択肢の選択基準
- 「1. できる」
- ・質問されたことについて、ほぼ正確な回答ができる場合をいいます。
- 「2. できない」
- ・質問されたことについて正しく回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいいます。回答の正誤が確認できない場合も含まれます。
調査上の留意点
ここでいう「面接調査の直前に何をしていたか思い出す」こととは、「短期記憶」であり、面接調査直前または当日行ったことについて具体的に答えることができれば、「 1. できる」を選択します。上記の質問で確認が難しい場合は、「ペン」、「時計」、「視力確認表(調査対象者に対しては、紙または、手の絵などの平易な言い方をする)」を見せて、何があるか復唱をさせ、これから3つの物を見えないところにしまい、 何がなくなったかを問うので覚えて置くように指示する。5分以上してからこれらの物のうち2つを提示し、 提示されていないものについて答えられたかでします。視覚的に把握できない場合は、3つの物を口頭で説明する等、調査対象者に質問の内容が伝わるように工夫します。
なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載します。
特記事項の例
- 調査当日の昼食で何を食べたかまで答えることができた。しかし、家族の話では、日頃は物忘れがひどく、直前のことも覚えていないことがあるとのこと。より頻回な状況に基づき「2.できない」を選択する。
3-5 自分の名前を言う
1.できる 2.できない
調査項目の定義
「自分の名前をいう」能力を評価する項目です。
ここでいう「自分の名前をいう」とは、自分の姓もしくは名前のどちらかを答えることです。
選択肢の選択基準
- 「 1. できる」
- ・質問されたことについて、ほぼ正確な回答ができる場合をいいます。
- 「 2. できない」
- ・質問されたことについて正しく回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいいます。回答の正誤が確認できない場合も含まれます。
調査上の留意点
旧姓でも、「自分の名前をいう」ことができれば、「1. できる」を選択します。なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載します。
特記事項の例
- 失語症で、手指機能の低下により文字で書くこともできないが、うなずく等の身振りから、自分の名前であるということを確実に理解していると確認できたため、「1.できる」を選択する。
3-6 今の季節を理解する
1.できる 2.できない
調査項目の定義
「今の季節を理解する」能力を評価する項目です。
ここでいう「今の季節を理解」とは、面接調査日の季節を答えることです。
選択肢の選択基準
- 「 1. できる」
- ・質問されたことについて、ほぼ正確な回答ができる場合をいいます。
- 「 2. できない」
- ・質問されたことについて正しく回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいいます。
・回答の正誤が確認できない場合も含まれます。
調査上の留意点
旧暦での季節でも、「今の季節を理解する」ことができれば、「1. できる」を選択します。季節に多少のずれがあってもよいです。(例えば、1月であれば「冬」あるいは「春の初め」と回答するなど)
なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間 )の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載します。
特記事項の例
- 調査当日の月日は答えることができるが、今の季節を答えることができないため、「2.できない」を選択する。
3-7 場所の理解
1.できる 2.できない
調査項目の定義
「場所の理解」(自分がいる場所を答える)に関する能力を評価する項目です。ここでいう「場所の理解」とは、「ここはどこですか」という質問に答えることです。
選択肢の選択基準
- 「 1. できる」
- ・質問されたことについて、適切に回答ができる場合をいいます。
- 「 2. できない」
- ・質問されたことについて適切に回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいいます。
調査上の留意点
所在地や施設名をたずねる質問ではありません。質問に対して「施設」「自宅」などの区別がつけば「1.できる」を選択します。
なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間 )の状況において、 より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載します。
特記事項の例
- 現在、施設に入所中だが、施設に入所していること自体を理解していないため、「2.できない」を選択する。
3-8 徘徊
1.ない 2.ときどきある 3.ある
調査項目の定義
「徘徊」の頻度を評価する項目です。
ここでいう「徘徊」とは、歩き回る、車いすで動き回る、床やベッドの上で這い回る等、目的もなく動き回る行動のことです。
選択肢の選択基準
- 「 1. ない 」
- ・徘徊が、過去1か月間に1度も現れたことがない場合やほとんど月1回以上の頻度では現れない場合をいいます。
・意識障害、寝たきり等の理由により、徘徊が起こりえない場合も含まれます。 - 「 2. ときどきある 」
- ・少なくとも1か月間に1回以上、1週間に1回未満の頻度で現れる場合をいいます。
・定義に示した行動のいずれか、1つでもある場合も含まれます。 - 「 3. ある」
- ・少なくとも1週間に1回以上の頻度で現れる場合をいいます。
・定義に示した行動のいずれか、1つでもある場合も含まれます。
調査上の留意点
重度の寝たきり状態であっても、ベッドの上で這い回るなど、目的もなく動き回る行動も含みます。
特記事項の例
- ベッド上の生活であるが、毎日、ベッド上を這い回っているため、「3.ある」を選択する。そのため、ベッドからの転倒の危険性が高く、介護者である娘は常にベッドの近くにいるように気を使っている。
3-9 外出すると戻れない
1.ない 2.ときどきある 3.ある
調査項目の定義
「外出すると戻れない」行動の頻度を評価する項目です。
選択肢の選択基準
- 「 1. ない」
- ・外出して一人で戻れないことが 、過去1か月間に1度も現れたことがない場合やほとんど月1回以上の頻度では現れない場合をいいます。
・意識障害、寝たきり等の理由により、外出が起こりえない場合も含まれます。 - 「 2. ときどきある」
- ・少なくとも1か月間に1回以上、1週間に1回未満の頻度で現れる場合をいいます。
- 「 3. ある」
- ・少なくとも1週間に1回以上の頻度で現れる場合をいいます。
調査上の留意点
「外出すると戻れない」行動とは、外出だけでなく、居室や居住棟から出て自室や自宅に戻れなくなる行動も含みます。
特記事項の例
- 現在、入所中で、ほぼ毎日のように、食堂や、他のフロアー等に行くと、自分の居室がわからなくなり、介護職員によって居室へ連れて行ってもらっていることがあるため、「3.ある」を選択する。
- ほぼ毎日、近所に散歩に出かけるが、月に 1 度程度は、家に帰ってくることができないため、近所の人が家まで送り届けてくれることがある。「2.ときどきある」を選択する。
出典:認定調査員テキスト2009(改訂版)