介護の基礎知識
要介護認定調査(基本調査)「第1群:身体機能・起居動作」の記載方法
1-1 麻痺等の有無
1.ない 2.左上肢 3.右上肢 4.左下肢 5.右下肢 6.その他(四肢の欠損)
調査項目の定義
「麻痺等の有無」を評価する項目です。ここでいう「麻痺等」とは、神経又は筋肉組織の損傷、疾病等により、筋肉の随意的な運動機能が低下又は消失した状況を言います。脳梗塞後遺症等による四肢の動かしにくさ(筋力の低下や麻痺等の有無)を確認する項目です。
選択肢の選択基準
- 「1.ない」
- ・麻痺等がない場合は、「1.ない」とします。
- 「2.左上肢」、「3.右上肢」、「4.左下肢」、「5.右下肢」
- ・麻痺等や筋力低下がある場合は、「2.左上肢」「3.右上肢」「4.左下肢」「5.右下肢」の中で該当する部位を選択します。
・複数の部位に麻痺等がある場合(片麻痺、対麻痺、三肢麻痺、四肢麻痺等)は、「2.左上肢」「3.右上肢」「4.左下肢」「5.右下肢」のうち、複数を選択します。
・各確認動作で、努力して動かそうとしても動かない、あるいは目的とする確認動作が行えない場合に該当する項目を選択します。 - 「6.その他(四肢の欠損)」
- ・いずれかの四肢の一部(手指・足趾を含む)に欠損がある場合は、「6.その他」を選択します。
・上肢・下肢以外に麻痺等がある場合は、「6.その他」を選択します。
・「6.その他」を選択した場合は、必ず部位や状況等について具体的に「特記事項」に記載します。
調査上の留意点
冷感等の感覚障害は含みません。えん下障害は、「2-3 えん下」において評価します。福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択します。麻痺等には、加齢による筋力の低下、その他の様々な原因による筋肉の随意的な運動機能の低下によって目的とする確認動作が行えない場合が含まれます。意識障害等で、自分の意思で四肢を十分に動かせないために目的とする確認動作が行えない場合も含みます。パーキンソン病等による筋肉の不随意な動きによって、随意的な運動機能が低下し、目的とする確認動作が行えない場合も含まれます。関節に著しい可動域制限があり、関節の運動ができないために目的とする確認動作が行えない場合も含みます。なお、軽度の可動域制限の場合は、関節の動く範囲で行います。「主治医意見書」の麻痺に関する同様の項目とは、選択の基準が異なることに留意すること。
項目の定義する範囲以外で日常生活上での支障がある場合は、特記事項に記載します。
①調査対象者に実際に行ってもらった場合
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
なお、実際に確認する場合は、「図1-1」から「図1-5」の「上肢の麻痺等の有無の確認方法」及び「下肢の麻痺等の有無の確認方法」に示す動作が行えるかどうかで選択します。
深部感覚の障害等により運動にぎこちなさがある場合であっても、確認動作が行えるかどうかで選択します(傷病名、疾病の程度は問いません)。
確認動作は、通常対象部位の関節を伸ばした状態で選択するが、拘縮で肘が曲がっている場合、可能な限り肘関節を伸ばした状態で行い、評価をし、状況については特記事項に記入します。また、強直(曲げることも伸ばすこともできない状態)の場合は、その状態で行い、状況については特記事項に記 入します。
② 調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
- 【注意点】
- 確認時には、本人または家族の同意の上で、ゆっくり動かしてもらって確認を行う。調査対象者が痛みを訴える場合は、動作の確認を中止し、そこまでの状況で選択を行う。危険と判断される場合は、確認は行わない。
特記事項の例
- 重度の寝たきりで、意識障害があり意思疎通ができず、自分の意志で四肢等を全く動かせないため、「2.左上肢」「3.右上肢」「4.左下肢」「5.右下肢」が「あり」を選択する。
- 調査時、体調が少し悪く、関節等の痛みがあるとのことで、調査対象者に実際に行ってもらえなかった。調査対象者と家族に、上肢と下肢の麻痺等の有無の確認方法に示す動作が行えるかどうか確認したところ、上肢については、問題なくできるが、両下肢はできないとのことで、より頻回な状況に基づき選択し、「4.左下肢」「5.右下肢」を選択した。
1-2 拘縮の有無
1.ない 2.肩関節 3.股関節 4.膝関節 5.その他(四肢の欠損)
調査項目の定義
「拘縮の有無」を評価する項目です。ここでいう「拘縮」とは、対象者が可能な限り力を抜いた状態で他動的に四肢の関節を動かした時に、関節の動く範囲が著しく狭くなっている状況をいいます。
選択肢の選択基準
- 「1.ない」
- ・四肢の関節の動く範囲の制限がない場合は、「1.ない」とします。
- 「2.肩関節」、「3.股関節」、「4.膝関節」
- ・複数の部位に関節の動く範囲の制限がある場合は「2.肩関節」「3.股関節」「4.膝関節」のうち、複数を選択します。他動的に動かしてみて制限がある場合が該当し、自力では動かせないという状態だけでは該当しません。
・左右のいずれかに制限があれば、「制限あり」とします。 - 「5.その他(四肢の欠損)」
- ・いずれかの四肢の一部(手指・足趾を含む)に欠損がある場合は「5.その他」を選択します。
・肩関節、股関節、膝関節以外について、他動的に動かした際に拘縮や可動域の制限がある場合は、「5.その他」を選択します。
・「5.その他」を選択した場合は、必ず部位や状況等について具体的に「特記事項」に記載します。
調査上の留意点
疼痛のために関節の動く範囲に制限がある場合も含まれます。福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択します。筋力低下については、「1-1 麻痺等の有無」において評価します。あくまでも、他動運動により目的とする確認動作ができるか否かにより選択するものであり、「主治医意見書」の同様の項目とは、選択基準が異なることもあります。項目の定義する範囲以外で日常生活上での支障がある場合は、特記事項に記載します。
① 調査対象者に実際に行ってもらった場合
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。「拘縮の有無」については、傷病名、疾病の程度、関節の左右や関節の動く範囲の制限の程度、調査対象者の意欲等にかかわらず、他動運動により目的とする確認動作ができるか否かにより確認します。
② 調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
- 【注意点】
- 確認時には、本人または家族の同意の上で、対象部位を軽く持ち、動作の開始から終了までの間に4~5 秒程度の時間をかけてゆっくり動かして確認を行う。調査対象者が痛みを訴える場合は、それ以上は動かさず、そこまでの状況で選択を行う。90 度程度曲がれば「制限なし」となるため、調査対象者の状態に十分注意し、必要以上に動かさないようにしなくてはならない。動かすことが危険と判断される場合は、確認は行わない。
特記事項の例
- 重度の寝たきりで、意識障害があり意思疎通ができないため、確認動作を行わなかった。家族に、「関節の動く範囲の制限の有無の確認方法」に示す動作が行えるかどうか確認し、全てできるということで、より頻回な状況に基づき「拘縮の有無」は全て「1.ない」を選択する。
- 調査時、体調が少し悪く、関節等の痛みがあるとのことで、調査対象者に実際に行ってもらえなかった。調査対象者と家族に、「関節の動く範囲の制限の有無の確認方法」に示す動作が行えるかどうか確認し、オムツ交換の際の股関節と膝関節の拘縮の状況を聞き取り、より頻回な状況に基づき、「3.股関節」「4.膝関節」を選択する。
1-3 寝返り
1.つかまらないでできる 2.何かにつかまればできる 3.できない
調査項目の定義
「寝返り」の能力を評価する項目です。ここでいう「寝返り」とは、きちんと横向きにならなくても、横たわったまま左右のどちらかに身体の向きを変え、そのまま安定した状態になることが自分でできるかどうか、あるいはベッド柵、サイドレールなど何かにつかまればできるかどうかの能力です。調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択します。身体の上にふとん等をかけない時の状況で選択します。
選択肢の選択基準
- 「1.つかまらないでできる」
- ・何にもつかまらないで、寝返り(片側だけでもよい)が自力でできる場合をいいます。
・仰向けに寝ることが不可能な場合に、横向きに寝た状態(側臥位)から、うつ伏せ(腹臥位)に向きを変えることができれば、「1.つかまらないでできる」を選択します。
・認知症等で声かけをしない限りずっと同じ姿勢をとり寝返りをしないが、声をかければゆっくりでも寝返りを自力でする場合、声かけのみでできれば「1.つかまらないでできる」を選択します。 - 「2.何かにつかまればできる」
- ・ベッド柵、ひも、バー、サイドレール等、何かにつかまれば自力で寝返りができる場合をいいます。
- 「3.できない」
- ・介助なしでは、自力で寝返りができない等、寝返りに介助が必要な場合をいいます。
調査上の留意点
① 調査対象者に実際に行ってもらった場合
側臥位から腹臥位や、きちんと横向きにならなくても横たわったまま左右どちらか(片方だけでよい)に向きを変えられる場合は、「1.つかまらないでできる」を選択します。一度起き上がってから体の方向を変える行為は、寝返りとは考えません。自分の体の一部(膝の裏や寝巻きなど)を掴んで寝返りを行う場合(掴まないとできない場合)は「2.何かにつかまればできる」を選択します。
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
② 調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
③ 福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択します。
特記事項の例
- 調査時には、ベッド柵につかまれば自力で「寝返り」ができた。しかし、家族の話では、めまいがひどい日があり(1 回/週程度)、「3.できない」状態になることがあるとのこと。より頻回な状況に基づき「2.何かにつかまればできる」を選択する。
- 調査時、体調が少し悪いとのことで、調査対象者に実際に行ってもらえなかった。家族の話では、何かにつかまっても自力で「寝返り」ができないということであったので、「3.できない」を選択する。
- ベッド柵に紐をつけて、その紐につかまって自力で「寝返り」ができたため、「2.何かにつかまればできる」を選択する。家族の話では、日頃も同様にできるとのことである。より頻回な状況に基づき選択する。
1-4 起き上がり
1.つかまらないでできる 2.何かにつかまればできる 3.できない
調査項目の定義
「起き上がり」の能力を評価する項目です。ここでいう「起き上がり」とは、身体の上にふとんをかけないで寝た状態から上半身を起こすことができるかどうかの能力であります。身体の上にふとん等をかけない時の状況で選択します。調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容から、選択します。
選択肢の選択基準
- 「1. つかまらないでできる」
- ・何にもつかまらないで自力で起き上がることができる場合をいいます。習慣的に、体を支える目的ではなく、ベッド上に手や肘をつきながら起き上がる場合も含まれます。
- 「2. 何かにつかまればできる」
- ・ベッド柵、ひも、バー、サイドレール等、何かにつかまれば自力で起き上がりができる場合をいいます。
- 「3. できない」
- ・介助なしでは自力で起き上がることができない等、起き上がりに介助が必要な場合をいいます。途中まで自分でできても最後の部分で介助が必要である場合も含まれます。
調査上の留意点
寝た状態から上半身を起こす行為を評価する項目であり、うつ伏せになってから起き上がる場合等、起き上がりの経路については限定しません。自分の膝の裏をつかんで、反動を付けて起き上がれる場合等、自分の体の一部を支えにしてできる場合(支えにしないと起き上がれない場合)は、「2.何かにつかまればできる」を選択します。体を支える目的で手や肘でふとんにしっかりと加重して起き上がる場合(加重しないと起き上がれない場合)は「2.何かにつかまればできる」を選択します。
① 調査対象者に実際に行ってもらった場合
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
常時、ギャッチアップの状態にある場合は、その状態から評価し、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
② 調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
③ 福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合
補装具を使用している場合は、使用している状況で選択します。ギャッチアップ機能がついている電動ベッド等の場合はこれらの機能を使わない状態で評価します。
特記事項の例
- 調査時には、ベッド柵につかまれば自力で「起き上がり」ができたが、家族の話では、日頃は、倦怠感が強く、「3.できない」状態のことが多いとのこと。より頻回な状況に基づき、「3.できない」を選択する。
- 調査時、体調が少し悪いとのことで、調査対象者に実際に行ってもらえなかった。家族の話では、何かにつかまっても自力で「起き上がり」ができないということで、より頻回な状況に基づき、「3.できない」を選択する。
1-5 座位保持
1.できる 2.自分の手で支えればできる 3.支えてもらえればできる 4.できない
調査項目の定義
「座位保持」の能力を評価する項目です。ここでいう「座位保持」とは、背もたれがない状態での座位の状態を10分間程度保持できるかどうかの能力です。調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択します。
選択肢の選択基準
- 「1. できる」
- ・背もたれや介護者の手による支えがなくても、座位の保持が自力でできる場合をいいます。
・下肢の欠損等により床に足をつけることが不可能な場合であっても座位保持ができる場合には、「1.できる」を選択します。
・下肢が欠損しているが日頃から補装具を装着しており、できる場合は「1.できる」を選択します。 - 「2. 自分の手で支えればできる」
- ・背もたれは必要ないが、手すり、柵、坐面、壁を自分の手で支える必要がある場合をいいます。
- 「3. 支えてもらえればできる」
- ・背もたれがないと座位が保持できない、あるいは、介護者の手で支えていないと座位が保持できない場合をいいます。
- 「4. できない」
- ・背もたれを用いても座位が保持できない場合をいいます。具体的には、以下の状態とします。
・長期間(おおむね1 ヶ月)にわたり水平な体位しかとったことがない場合。
・医学的理由(低血圧等)により座位保持が認められていない場合。
・背骨や股関節の状態により体幹の屈曲ができない場合。
調査上の留意点
寝た状態から座位に至るまでの行為は含まないです。畳上の生活で、いすに座る機会がない場合は、畳上の座位や、洋式トイレ、ポータブルトイレ使用時の座位の状態で選択します。長座位、端座位など、座り方は問いません。大腿部(膝の上)に手で支えてしっかりと加重して座位保持をしている場合等、自分の体の一部を支えにしてできる場合(加重しないと座位保持できない場合)は「2.自分の手で支えればできる」を選択します。大腿部の裏側に手を差し入れて太ももを掴むようにする等、上体が後傾しないように座位を保持している場合(手を差し入れるなどしないと座位保持できない場合)は、「3.支えてもらえばできる」を選択します。ビーズクッション等で支えていないと座位が保持できない場合は、「3.支えてもらえればできる」を選択します。電動ベッドや車いす等の背もたれを支えとして座位保持ができている場合は、「3.支えてもらえればできる」を選択します。
① 調査対象者に実際に行ってもらった場合
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
② 調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
③ 福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択します。
特記事項の例
- 調査時は、背もたれがない椅子に、支えなく「座位保持」ができた。しかし、家族の話では、起床時のみ「3.支えてもらえればできる」の状態になるとのこと。より頻回な状況に基づき、「1.できる」を選択する。
- 起き上がると少しめまいがするとのことであったため、調査対象者に実際に行ってもらえなかった。利用しているデイサービスと、受診時の待合室での状況からより頻回な状況に基づき「2.自分の手で支えればできる」を選択する。
- 車いすを使用しているが、背もたれを身体の支えとしてはいないため、「座位保持」が「1.できる」を選択する。
1-6 両足での立位保持
1.支えなしでできる 2.何か支えがあればできる 3.できない
調査項目の定義
「両足での立位保持」の能力を評価する項目です。ここでいう「両足での立位保持」とは、立ち上がった後に、平らな床の上で立位を10 秒間程度保持できるかどうかの能力です。調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択します。
選択肢の選択基準
- 「1. 支えなしでできる」
- ・何にもつかまらないで立っていることができる場合をいいます。
- 「2. 何か支えがあればできる」
- ・壁、手すり、いすの背、杖等、何かにつかまると立位保持が可能な場合をいいます。
- 「3. できない」
- ・自分ではものにつかまっても立位を保持できないが、介護者の手で常に身体を支えれば立位保持できる、あるいは、どのような状況であってもまったく立位保持ができない場合をいいます。
・寝たきりで明らかに立位をとれない場合も含まれます。
調査上の留意点
立ち上がるまでの行為は含みません。片足が欠損しており、義足を使用していない人や拘縮で床に片足がつかない場合は、片足での立位保持の状況で選択します。自分の体の一部を支えにして立位保持する場合や、体を支える目的でテーブルや椅子の肘掛等にしっかりと加重して立位保持する場合(加重しないと立位保持できない場合)は「2.何か支えがあればできる」を選択します。
① 調査対象者に実際に行ってもらった場合
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
② 調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
特記事項の例
- 調査時には、何の支えもなく自力で「両足での立位保持」ができたため、「1.支えなしでできる」を選択する。しかし、家族の話では、起床時にのみ「2.何か支えがあればできる」の状態になることがあるとのこと。
- 片足の欠損があり、床に片足しかつかないが、何にもつかまらずに自力で立位保持ができた。家族の話では、日頃も同様にできるとのこと。より頻回な状況に基づき「1.支えなしでできる」を選択する。
- 調査時、体調が少し悪いとのことで、調査対象者に実際に行ってもらえなかった。家族の話では、膝に手をついて支えながら「立位保持」ができているということで、より頻回な状況に基づき「2.何か支えがあればできる」を選択する。
1-7 歩行
1.つかまらないでできる 2.何かにつかまればできる 3.できない
調査項目の定義
「歩行」の能力を評価する項目です。ここでいう「歩行」とは、立った状態から継続して歩くことができるかどうかの能力です。立った状態から継続して(立ち止まらず、座り込まずに)5m程度歩ける能力があるかどうかで選択します。調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択します。
選択肢の選択基準
- 「1.つかまらないでできる」
- ・支えや日常的に使用する器具・器械なしに自分で歩ける場合をいいます。
・視力障害者のつたい歩きも含まれます。
・視力障害があり、身体を支える目的ではなく方向を確認する目的で杖を用いている場合は、「1.つかまらないでできる」を選択します。 - 「2.何かにつかまればできる」
- ・杖や歩行器等を使用すれば歩ける、壁に手をかけながら歩ける場合等をいいます。
・片方の腕を杖で、片方の腕を介護者が支えれば歩行できる場合は、「2.何かにつかまればできる」を選択します。 - 「3.できない」
- ・何かにつかまったり、支えられても歩行が不可能であるため、車いすを使用しなければならない、どのような状況であっても歩行ができない場合をいいます。寝たきり等で歩行することがない場合、あるいは、歩行可能であるが医療上の必要により歩行制限が行われている場合も含まれます。
・「歩行」については、5m程度歩けるかどうかについて評価する項目であり、「2mから3m」しか歩けない場合は「歩行」とはとらえないため、「3.できない」を選択します。
調査上の留意点
歩幅や速度、方向感覚や目的等は問いません。リハビリの歩行訓練時には、平行棒の間を5m程度歩行できていてもリハビリの訓練中は一般的には日頃の状況ではないと考えます。心肺機能の低下等のため、主治医より軽い労作も禁じられている等で、5m程度の歩行を試行することができない場合には、「3.できない」を選択します。両足切断のため、屋内の移動は両手で行うことができても、立位をとることができない場合は、歩行は「できない」を選択します。膝につかまるなど、自分の体につかまり歩行する場合(つかまらないと歩行できない場合)は、「2.何かにつかまればできる」を選択します。
① 調査対象者に実際に行ってもらった場合
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
② 調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
③ 補装具を使用している場合
補装具を使用している場合は、使用している状況で選択します。
④ 福祉用具を使用している場合
杖や歩行器等を使用する場合は、「2.何かにつかまればできる」を選択します。
特記事項の例
- 1m程度ずつ、立ち止まらないと 5m程は歩くことができないため、「3.できない」を選択する。家族の話では、日頃も同様にできないとのこと。
- 調査時、体調が少し悪いとのことで、実際に行ってもらえなかった。家族の話では、壁や家具につかまりながらであれば、自力で「歩行」ができるということで、より頻回な状況に基づき「2.何かにつかまればできる」を選択する。
1-8 立ち上がり
1.つかまらないでできる 2.何かにつかまればできる 3.できない
調査項目の定義
「立ち上がり」の能力を評価する項目です。
ここでいう「立ち上がり」とは、いすやベッド、車いす等に座っている状態から立ち上がる行為を行う際に(床からの立ち上がりは含まない)、ベッド柵や手すり、壁等につかまらないで立ち上がることができるかどうかの能力です。
膝がほぼ直角に屈曲している状態からの立ち上がりができるかどうかで選択します。調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択します。
選択肢の選択基準
- 「1.つかまらないでできる」
- ・いす、ベッド、車いす等に座っている状態から立ち上がる際に、ベッド柵、手すり、壁等何にもつかまらないで、立ち上がる行為ができる場合をいいます。
- 「2.何かにつかまればできる」
- ・ベッド柵、手すり、壁等、何かにつかまれば立ち上がる行為ができる場合をいいます。介護者の手で引き上げられる状況ではなく、支えがあれば基本的に自分で立ち上がることができる場合も含まれます。
- 「3.できない」
- ・自分ではまったく立ち上がることができない場合をいいます。体の一部を介護者が支える、介護者の手で引き上げるなど、介助がないとできない場合も含まれます。
調査上の留意点
寝た状態から座位に至るまでの行為は含みません。畳上の生活で、いすに座る機会がない場合は、洋式トイレ、ポータブルトイレ使用時や、受診時の待合室での状況等の状態で選択します。自分の体の一部を支えにして立ち上がる場合や、習慣的ではなく体を支える目的でテーブルや椅子の肘掛等にしっかりと加重して立ち上がる場合(加重しないと立ち上がれない場合)は「2.何かにつかまればできる」を選択します。
① 調査対象者に実際に行ってもらった場合
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
② 調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
特記事項の例
- 調査時には、ベッドサイドに取り付けられた移乗バーにつかまれば自力で「立ち上がり」ができたため、「2.何かにつかまればできる」を選択する。家族からの聞き取りによれば、日頃も同様に移乗バーにつかまり自力で「立ち上がり」をしているとのことである。
- 畳上の生活で椅子に座る機会がなく、自宅には椅子もないとのことで、調査対象者に実際に行ってもらえなかった。利用しているデイサービスと、受診時の待合室での状況から、より頻回な状況に基づき「2.何かにつかまればできる」を選択する。
1-9 片足での立位
1.支えなしでできる 2.何か支えがあればできる 3.できない
調査項目の定義
「片足での立位」の能力を評価する項目です。
ここでいう「片足での立位」とは、立ち上がるまでに介助が必要か否かにかかわりなく、平らな床の上で、自分で左右いずれかの片足を上げた状態のまま立位を保持する(平衡を保てる)ことができるかどうかの能力です。平らな床の上で、自分で左右いずれかの片足を上げた状態のまま1 秒間程度、立位を保持できるかどうかで選択します。調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択します。
選択肢の選択基準
- 「1.支えなしでできる」
- ・何もつかまらないで、いずれか一側の足で立っていることができる場合をいいます。
- 「2.何か支えがあればできる」
- ・壁や手すり、いすの背など、何かにつかまるといずれか一側の足で立っていることができる場合をいいます。
- 「3.できない」
- ・自分では片足が上げられない、自分の手で支えるのではなく、介護者によって支えられた状態でなければ片足を上げられない、あるいは、どのような状況であってもまったく片足で立っていることができない場合をいいます。
調査上の留意点
立ち上がるまでの能力については含みません。
① 調査対象者に実際に行ってもらった場合
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
② 調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
③ 福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択します。
特記事項の例
- 試行したところ、できたが、家族によると、日頃はそばに支えがないと片足での立位はできないとのことのため、より頻回な状況に基づき「2.何か支えがあればできる」を選択する。
- 調査時、体調不良とのことで、実際に行ってもらえなかった。家族の話では、手すりにつかまっても浴槽の出入りや階段の上り下りができないとのこと。何かにつかまっても自力で「片足での立位」はできないだろうということで、「3.できない」を選択する。
1-10 洗身
1.介助されていない 2.一部介助 3.全介助 4.行っていない
調査項目の定義
「洗身」の介助が行われているかどうかを評価する項目です。
ここでいう「洗身」とは、浴室内(洗い場や浴槽内)で、スポンジや手拭い等に石鹸やボディシャンプー等を付けて全身を洗うことをいいます。
選択肢の選択基準
- 「1.介助されていない」
- ・一連の「洗身」(浴室内で、スポンジや手拭い等に石鹸やボディシャンプー等を付けて全身を洗うこと)の介助が行われていない場合をいいます。
- 「2.一部介助」
- ・介護者が石鹸等を付けて、体の一部を洗う等の場合をいいます。
・見守り等が行われている場合も含まれます。 - 「3.全介助」
- ・一連の「洗身」(浴室内で、スポンジや手拭い等に石鹸やボディシャンプー等を付けて全身を洗うこと)の全ての介助が行われている場合をいいます。
・本人に手の届くところを「洗身」してもらった後、本人が「洗身」した箇所も含めて、介護者が全てを「洗身」し直している場合は、「3.全介助」を選択します。 - 「4.行っていない」
- ・日常的に「洗身」を行っていない場合をいいます。
調査上の留意点
入浴環境は問いません。洗髪行為は含みません。入浴行為は、この項目には含みません。
石鹸やボディシャンプーがついていなくても、あくまで体を洗う行為そのものについて介助が行われているかどうかで選択を行います。石鹸等を付ける行為そのものに介助があるかどうかではなく、身体の各所を洗う行為について評価を行います。清拭のみが行われている場合は、本人が行っているか介護者が行っているかに関わらず、「4.行っていない」を選択します。
① 朝昼夜等の時間帯や体調等によって 介助の方法が異なる場合
日によって入浴の方法・形態が異なる場合も含めて、一定期間(調査日より概ね過去 1 週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
② 福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
③ 調査対象の行為自体が発生しない場合
日常的に、洗身を行っていない場合は、「4. 行っていない」を選択し、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
④ 「実際の介助の方法」が不適切な場合
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている 介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が 、むしろ 本人の自立を阻害 しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
特記事項の例
- 重度の認知症があり、少し腕をタオルでなでるが、すぐに意欲がなくなり、全く自分では「洗身」をしなくなる。介護者が全身を「洗身」し直しているため「3.全介助」を選択する
- 自宅の浴室の住宅改修及び福祉用具等を整備しており、洗いやすい洗身ブラシの自助具も利用して、自力で介助なしで行っているため、「1.介助されていない」を選択する。
- 身体的な理由ではなく、本人の意思により、自分で濡れタオルで身体を拭いている(清拭)だけで、入浴(洗身)を拒否しているため、「4.行っていない」を選択する。特に不衛生な状況にあるとは思われない。
- 独居で、介護者がおらず、本人の話では入浴は問題なく行っているとのことであるが、汗疹ができており、本人も掻きむしっていることから、不適切な状況と判断し、適切な介助の方法を選択する。肩関節に強い拘縮があることなどから「2.一部介助」を選択する。
1-11 つめ切り
1.介助されていない 2.一部介助 3.全介助
調査項目の定義
「つめ切り」の介助が行われているかどうかを評価する項目です。ここでいう「つめ切り」とは、「つめ切り」の一連の行為のことで、「つめ切りを準備する」「切ったつめを捨てる」等を含みます。
選択肢の選択基準
- 「 1. 介助されていない 」
- ・「つめ切り」の介助が行われていない場合をいいます。
- 「 2. 一部介助」
- ・一連の行為に部分的に介助が行われている場合をいいます。
・つめ切りに見守りや確認が行われている 場合を含みます。
・左右どちらか片方の手のつめのみ切れる、手のつめはできるが足のつめはできない等で一部介助が発生している場合も含みます。 - 「 3. 全介助 」
- ・一連の行為すべてに介助が行われている場合をいいます。
・介護者が、本人が行った箇所を含めてすべてやり直す場合も含みます。
調査上の留意点
切ったつめを捨てる以外の、つめを切った場所の掃除等は含まない。
① 朝昼夜等の時間帯や体調等によって 介助の方法 が異なる場合
一定期間(調査日より概ね過去1か月)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
② 福祉用具(補装具や介護 用品等)や器具類を使用している場合
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択します。
③ 調査対象の行為自体が発生しない場合
四肢の全指を切断している等、つめがない場合は、四肢の清拭等の状況で代替して評価します。
④ 「実際の介助の方法」が不適切な場合
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができます。
なお、認定調査員が、「実際に行われている 介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者 不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が 、むしろ 本人の自立を阻害 しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定されます。
特記事項の例
- 一般の「つめ切り」の道具では自力では困難であるが、自助具の切りやすいつめ切りと、つめやすりを使用しており、自力で介助なしで行っているため、「1.介助されていない」を選択する。
- 四肢の全指を切断しており、つめがないが、四肢の切断面の清拭が全介助されているため、類似の行為で代替して評価し、「3.全介助」を選択する。
- 独居で、介護者がなく、本人の話によると介助なしに問題なくできているとのことであるが、調査時に見た状況では、手はできているが、足は巻きづめになっているなど不適切な状況にあると判断し、適切な介助の方法を選択した。手のつめは自分で切っていることから、「2.一部介助」を選択する。
- デイサービスで入浴後に、施設職員が切っているが、デイサービスに行かないときなどは自分でできることもあるとのこと。身体機能維持の観点から、不適切な状況にあると判断し、適切な介助の方法を選択する。ビーズ手芸などを趣味にしており、細かい作業や、はさみなども使用できることなどから、「1.介助されていない」を選択する。
1-12 視力
1.普通(日常生活に支障がない) 2.約 1 m離れた視力確認表の図が見える 3.目の前に置いた視力確認表の図が見える 4.ほとんど見えない 5.見えているのか判断不能
調査項目の定義
「視力」能力を評価する項目です。ここでいう「視力」とは、見えるかどうかの能力です。認定調査員が実際に視力確認表の図を調査対象者に見せて、視力を評価します。
選択肢の選択基準
- 「 1. 普通(日常生活に支障がない)」
- ・新聞、雑誌などの字が見え、日常生活に支障がない程度の視力を有している場合をいいます。
- 「 2. 約 1 m離れた視力確認表の図が見える」
- ・新聞、雑誌などの字は見えないが、約1m離れた視力確認表の図が見える場合をいいます。
- 「 3. 目の前に置いた視力確認表の図が見える」
- ・約1m離れた視力確認表の図は見えないが、目の前に置けば見える場合をいいます。
- 「 4. ほとんど見えない」
- ・目の前に置いた視力確認表の図が見えない場合をいいます。
- 「 5. 見えているのか判断不能」
- ・認知症等で意思疎通ができず、見えているのか判断できない場合をいいます。
調査上の留意点
見えるかどうかを選択するには、会話のみでなく、手話、筆談等や、調査対象者の身振りに基づいて視力を確認します。
見たものについての理解等の知的能力を問う項目ではございません。広い意味での視力を問う質問であり、視野狭窄・視野欠損等も含まれます。部屋の明るさは、部屋の電気をつけた上で、利用可能であれば読書灯などの補助照明器具を使用し、十分な明るさを確保します。眼鏡・コンタクトレンズ等を使用している場合は、使用している状況で選択します。
① 調査対象者に実際に行ってもらった場合
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間 )の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項 」に記載します。
② 調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。
③ 福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択します。
特記事項の例
- 強度の視野狭窄があり、確認したところ、「4.ほとんど見えない」状況にあった。誰かが付き添わなければ外出ができず、通院時(1 回/週)には同居の娘が付き添っている。
- 認知症等で意思疎通ができず、見えているのか分からないため、「5.見えているのか判断不能」を選択する。
- 実際に確認して「2.約 1m離れた視力確認表の図が見える」を選択する。しかし、強度の視力矯正の眼鏡を使用しており、その眼鏡がなければ、ほとんど見えないため、外出もできないとのこと。
1-13 聴力
1.普通 2.普通の声がやっと聞き取れる 3.かなり大きな声なら何とか聞き取れる 4.ほとんど聞こえない 5.聞こえているのか判断不能
調査項目の定義
「聴力」能力を評価する項目です。ここでいう「聴力」とは、聞こえ るかどうかの能力です。認定調査員が実際に確認して評価します。
選択肢の選択基準
- 「 1. 普通」
- ・日常生活における会話において支障がなく、普通に聞き取れる場合をいいます。
- 「 2. 普通の声がやっと聞き取れる 」
- ・普通の声で話すと聞き取りにくく、聞き間違えたりする場合をいいます。
- 「 3. かなり大きな声なら何とか聞き取れる 」
- ・耳元で大きな声で話したり、耳元で大きな物音を立てると何とか聞こえる、あるいは、かなり大きな声や音でないと聞こえない場合をいいます。
- 「 4. ほとんど聞こえない」
- ・ほとんど聞こえないことが確認できる場合をいいます。
- 「 5. 聞こえているのか判断不能」
- ・認知症等で意思疎通ができず、聞こえているのか判断できない場合をいいます。
調査上の留意点
聞こえるかどうかは、会話のみでなく、調査対象者の身振り等も含めて評価します。
普通に話しかけても聞こえない 調査対象者に対しては、耳元で大きな声で話す、音を出して反応を確かめる等の方法に基づいて聴力を評価します。
① 調査対象者に実際に行ってもらった場合
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、 一定期間(調査日より 概ね過去1 週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
② 福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で評価します。
特記事項の例
- 失語があり、通常の会話ができないため、調査時の問いかけに対する身振り等の状況で、「3.かなり大きな声なら何とか聞き取れる」を選択する。
- 調査時には補聴器を使用した状況で、会話の受け答えから、「2.普通の声がやっと聞こえる」を選択するが、かなりゆっくりと話したり、分かりやすい言葉がやっと聞こえる程度である。同居の妻は話が通じなくストレスがたまると訴えるが、今のところ具体的な支障は発生していない。
出典:認定調査員テキスト2009(改訂版)