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介護の基礎知識

基本調査及び特記事項の記載方法と留意点

能力で評価する調査項目

能力で評価する調査項目の選択基準

能力で評価する調査項目は、大きく分けて身体機能の能力を把握する調査項目(第1群に多く見られる)と認知能力を把握する調査項目(第3群)に分類されます。
能力で評価する項目は、当該の行動等について「できる」か「できない」かを、各項目が指定する確認動作を可能な限り実際に試行して評価する項目です。ただし、実際に試行した結果と日頃の状況が異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1 週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択します。
なお、認定調査員が依頼しなくても、調査対象者が確認動作と同様の行為や回答を行っていることが調査実施中に確認できれば、必ずしも実際に行ってもらう必要はありません(訪問時の玄関までの出迎えによって歩行動作が確認できた場合など)。
その行為ができないことによって介助が発生しているかどうか、あるいは日常生活上の支障があるかないかは選択基準に含まれません。

能力で評価する調査項目目(18 項目)
  「1-3 寝返り」
  「1-4 起き上がり」
  「1-5 座位保持」
  「1-6 両足での立位保持」
  「1-7 歩行」
  「1-8 立ち上がり」
  「1-9 片足での立位」
  「1-12 視力」
  「1-13 聴力」
  「2-3 えん下」
  「3-1 意思の伝達」
  「3-2 毎日の日課を理解」
  「3-3 生年月日や年齢を言う」
  「3-4 短期記憶」
  「3-5 自分の名前を言う」
  「3-6 今の季節を理解する」
  「3-7 場所の理解」
  「5-3 日常の意思決定」

① 調査対象者に実際に行ってもらった場合
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況との違いなど、具体的な内容を「特記事項」に記載します。

② 調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。

③ 福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択します。

特記事項の記載において特に留意すべき点

能力で評価する調査項目は、項目それ自体が直接に調査対象者の介護の手間を表すものではないが、実際の「介助の方法」を理解するうえで有用です。
ただし、心身の機能の低下と、介護の量は必ずしも比例関係にあるわけではなく、心身の機能が低下するほど介護量が増大するとは限りません。完全な寝たきりの状態は、残存機能がある場合よりも介護量が減少することがあるのは一例です(このような場合に主観的な判断に依らず適切な介護の手間の総量の推計のために一次判定ソフトが導入されています)。介護認定審査会資料を読む介護認定審査会の委員にとっては、能力で評価する調査項目の状況と、介助の項目の状態の整合性が取れているかどうかは検討する際の着眼点となることから、能力と介助の方法の項目との関係が不自然に感じられるような特殊なケースについては、両者の関係性を丁寧に特記事項にて記録します。
また、認定調査員が調査項目の選択において「どちらの選択も妥当」と感じた場合など、判断に迷った場合は、具体的な状況と認定調査員の判断根拠を特記事項に記載し、介護認定審査会の一次判定修正・確定の手順において判断を仰ぐこともできます。
なお、何らかの能力の低下によって、実際に介護の手間をもたらしているものの、「介助の方法」の項目に適切な項目が設定されていないために、具体的な介護の手間を記載することができない場合は、能力の項目の中でもっとも類似または関連する調査項目の特記事項に、具体的な介護の手間とその頻度を記載し、介護認定審査会おける二次判定(介護の手間にかかる審査判定)の判断を仰ぐこともできます。

介助の方法で評価する調査項目

介助の方法で評価する調査項目の選択基準

介助の方法で評価する項目の多くは、生活機能に関する第2群と、社会生活の適応に関する第5群にみられます。これらの項目は、具体的に介助が「行われている-行われてない」の軸で選択を行うことを原則とするが、「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって不適切であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な介助の方法を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができます。
不適切な状況にあると判断された場合は、単に「できる-できない」といった個々の行為の能力のみで評価せず、生活環境や本人の置かれている状態なども含めて、総合的に判断します。
特記事項の記載にあたっては、介護認定審査会が、「介護の手間」を評価できるよう、実際に行われている介助で選択した場合は、具体的な「介護の手間」と「頻度」を、特記事項に記載します。認定調査員が適切と考える介助の方法を選択した場合は、実際に行われている介助の方法と認定調査員の選択結果が異なった理由やその実態について、介護認定審査会の委員が理解できるよう、特記事項に記載しなければなりません。
また、記載する内容が選択肢の選択基準に含まれていないことであっても、介護の手間に関係する内容であれば、特記事項に記載することができます。その内容が介護認定審査会における二次判定(介護の手間にかかる審査判定)で評価されることになります。
なお、「介助」の項目における「見守り等」や「一部介助」「全介助」といった選択肢は、介助の量を意味するものではなく、「介助の方法」を示すものであることから、「一部介助ほどは手間がかかってないから見守り等を選択する」といった考え方は誤りであります。具体的な介助の量の多寡について特に記載すべき事項がある場合は特記事項に記載することにより、介護認定審査会の二次判定で介護の手間として判断されます。

介助の方法で評価する調査項目(16 項目)
  「1-10 洗身」
  「1-11 つめ切り」
  「2-1 移乗」
  「2-2 移動」
  「2-4 食事摂取」
  「2-5 排尿」
  「2-6 排便」
  「2-7 口腔清潔」
  「2-8 洗顔」
  「2-9 整髪」
  「2-10 上衣の着脱」
  「2-11 ズボン等の着脱」
  「5-1 薬の内服」
  「5-2 金銭の管理」
  「5-5 買い物」
  「5-6 簡単な調理」

①朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合の選択基準
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。実際の聞き取りにおいては、該当する行為(例えば排尿、洗顔など)が一定期間(調査日より概ね過去1 週間)にどの程度行われているのかを把握した上で、そのうち介助が行われている(または介助が行われていない)頻度がもっとも多いもので選択を行うことを原則とします。
例えば、普段は食事摂取が「1.介助されていない」であっても、週に1~2 回「4.全介助」となる場合は、「2.見守り等」、「3.一部介助」といった両方の中間の選択をすることは誤りとなる。また、最も重い状態で選択し「4.全介助」とすることも誤りとなる。この場合は、最も頻度の多い「1.介助されていない」を選択し、「4.全介助」となる場合の具体的な内容や頻度は特記事項に記載します。
また、発生頻度の少ない行為においては、週のうちの介助のある日数で評価するのではなく、発生している行為量に対して、どれだけ頻回に介助が行われているかを評価する。例えば、洗身において、すべて介助されているが、週3回しか入浴機会がなく、7日のうち3日ということで、4日は入浴機会がない、すなわち「1.介助されていない」が頻回な状況であると考えるのは誤りである。この場合、週3回の行為の機会において、3回とも全介助であれば、「4.全介助」を選択します。排尿のように、行為そのものの発生頻度が多いものは、週の中で介助の状況が大幅に異なることがないのであれば、通常の1日の介助における昼夜の違いなどを聞き取り、頻度で評価してもかまわないです。

② 福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合の選択基準
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択します。例えば、歩行ができない場合でも車椅子を自操している場合は、移動に関しては「1.介助されていない」と選択し、車椅子を使用している状況を特記事項に記載します。

③「実際の介助の方法」が適切な場合
実際の介助の状況を聞き取った上で、その介助の方法が、当該対象者にとって適切であると認定調査員が考えた場合は、実際の介助の方法に基づき選択を行い、実際の「介護の手間」の具体的な内容と、「頻度」を特記事項に記載し、介護認定審査会の判断を仰ぎます。

④「実際の介助の方法」が不適切な場合
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができます。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
 ・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
 ・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
 ・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
 ・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定されます。

特記事項の記載において特に留意すべき点

介護認定審査会では、具体的な介護の手間の多少を特記事項から評価することとなっているため、介助の方法で評価する調査項目の特記事項の記載内容は、評価上の重要なポイントとなります。介護認定審査会が適切に介助量を判断できるよう、具体的な介護の手間とその頻度を記載します。これらの特記事項の情報は、介護認定審査会の介護の手間にかかる審査判定において、通常の介助よりも手間が大きいか小さいかを判断する際に活用されます。
また、「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、そのように判断する具体的な理由や事実を特記事項に記載した上で、適切な介助の方法を選択します。これらの特記事項の情報は、介護認定審査会の一次判定修正・確定の審査判定において、基本調査の選択の妥当性を審査する際に活用されます。なお、適切な介助の方法を選択した場合であっても、事実や根拠が明示されていない場合は、介護認定審査会においては評価されません。

有無で評価する調査項目

有無で評価する調査項目の選択基準

「有無」の項目には第1群の「麻痺等・拘縮」を評価する項目と、「BPSD関連」を評価する項目があります。第4群の「精神・行動障害」のすべての項目及び、第3群の「3-8 徘徊」「3-9 外出すると戻れない」、第5群の「5-4 集団への不適応」を総称して「BPSD 関連」として整理する。BPSD とは、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia の略で、認知症に伴う行動・心理状態を意味します。
なお、「2-12 外出頻度」については、「有無」の項目に該当するが、「麻痺等・拘縮」にも「BPSD関連」にも該当しないが、「有無」の項目であり、「2-12 外出頻度」で定める選択基準に基づいて選択を行います。

有無で評価する調査項目(21 項目)
  「1-1 麻痺等の有無(左上肢、右上肢、左下肢、右下肢、その他(四肢の欠損))」
  「1-2 拘縮の有無(肩関節、股関節、膝関節、その他(四肢の欠損))」
  「2-12 外出頻度」
  「3-8 徘徊」
  「3-9 外出すると戻れない」
  「4-1 物を盗られたなどと被害的になる」
  「4-2 作話」
  「4-3 泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」
  「4-4 昼夜の逆転がある」
  「4-5 しつこく同じ話をする」
  「4-6 大声をだす」
  「4-7 介護に抵抗する」
  「4-8 「家に帰る」等と言い落ち着きがない」
  「4-9 一人で外に出たがり目が離せない」
  「4-10 いろいろなものを集めたり、無断でもってくる」
  「4-11 物を壊したり、衣類を破いたりする」
  「4-12 ひどい物忘れ」
  「4-13 意味もなく独り言や独り笑いをする」
  「4-14 自分勝手に行動する」
  「4-15 話がまとまらず、会話にならない」
  「5-4 集団への不適応」

麻痺等の有無・拘縮の有無

① 調査対象者に対し確認動作で確認した場合
調査対象者に対し、実際に確認動作で確認した状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行います。
その場合、調査対象者に実際に確認動作で確認した状況と、日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。

② 調査対象者に対し、確認動作による確認ができなかった場合
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載します。一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択します。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載します。

③ 特記事項の記載において特に留意すべき点
認定調査員が調査項目の選択において「どちらの選択も妥当」と感じた場合など、判断に迷った場合は、具体的な状況と認定調査員の判断根拠を特記事項に記載し、介護認定審査会の一次判定修正・確定の手順において判断を仰ぐこともできます。
また、麻痺等・拘縮によって、実際に介護の手間をもたらしているものの、「介助の方法」の項目に適切な項目が設定されていないために、具体的な介護の手間を記載することができない場合は、能力の項目に具体的な介護の手間とその頻度を記載し、介護認定審査会おける二次判定(介護の手間にかかる審査判定)の判断を仰ぐこともできます。

BPSD関連

①行動が発生している場合
調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況で選択します。調査時に実際に行動が見られた場合は、その状況について特記事項に記載します。
一定期間(調査日より概ね過去1か月間)の状況において、それらの行動がどの程度発生しているのかについて、頻度に基づき選択します。

②行動が発生していない場合
一定期間(調査日より概ね過去1か月間)の状況において、行動が発生していない場合は「ない」を選択します。
また、基本調査項目の中には該当する項目が存在しないものの類似の行動またはその他の精神・行動障害などにより具体的な「介護の手間」が生じていることが聞き取りにより確認された場合は、類似または関連する項目の特記事項に、具体的な介護の手間の内容と頻度を記載し、介護認定審査会の二次判定の判断を仰ぐことができます。

③特記事項の記載において特に留意すべき点
有無の項目(BPSD 関連)は、その有無だけで介護の手間が発生しているかどうかは必ずしも判断できないため、二次判定で介護の手間を適切に評価するためには、特記事項に、それらの有無によって発生している介護の手間を、頻度もあわせて記載する必要があります。また介護者が特に対応をとっていない場合などについても特記事項に記載します。

出典:認定調査員テキスト2009(改訂版)

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