無料体験お申込み 資料請求・お問い合わせ

介護の基礎知識

「認定調査」の実施及び留意点

認定調査及び認定調査員の基本原則

新規の要介護認定に係る認定調査については、「市町村職員」もしくは「事務受託法人」が実施することになっています。また、更新及び区分変更申請に係る認定調査については、「市町村職員」もしくは「事務受託法人」が実施するのに加えて、「指定居宅介護支援事業者、地域密着型介護老人福祉施設、介護保険施設その他の厚生労働省令で定める事業者もしくは施設または介護支援専門員であって厚生労働省令で定めるもの」で、都道府県及び指定都市が行う研修を修了した者(以下、「認定調査員」という。)に委託することができます。
・認定調査の内容から、認定調査員は、保健・医療・福祉に関しての専門的な知識を有している者が任命されることが望まれます。また、認定調査の結果が、要介護認定の最も基本的な資料であることから、認定調査は、全国一律の方法によって、公平公正で客観的かつ正確に行われる必要があります。
さらに、調査員は、調査対象者の介護の手間を適正に評価し、必要に応じて、特記事項に調査対象者の介護の手間を理解する上で必要な情報をわかりやすく記載する必要があります。
・認定調査は、原則1回で実施します。このため、認定調査員は、認定調査の方法や選択基準等を十分理解した上で、面接技術等の向上に努めなければなりません。認定調査員は、自ら調査した結果について、介護認定審査会から要請があった場合には、再調査の実施や、照会に対する回答、介護認定審査会への出席、審査対象者の状況等に関する意見等を求められることがあります。認定調査員は、過去にその職にあった者も含め、認定調査に関連して知り得た個人の秘密に関して守秘義務があります。このことは、市町村から訪問調査の委託を受けた認定調査員も同様です。これに違反した場合は、公務員に課せられる罰則が適用されることになります。
ここでいう「公務員に課せられる罰則」とは、地方公務員法では、1 年以下の懲役又は3万円以下の罰金に処すると規定されています。(「地方公務員法」第34条第1項及び第60条第2号)

調査の実施及び留意点

調査実施全般

・原則として、1名の調査対象者につき、1名の認定調査員が1回で認定調査を終了することとしていますが、1回目の認定調査の際に、調査対象者が急病等によってその状況が一時的に変化している場合等で、適切な認定調査が行えないと判断した時には、その場では認定調査は行わず、状況が安定した後に再度調査日を設定し認定調査を行います。
・また、入院後間もない等、調査対象者の心身の状態が安定するまでに相当期間を要すると思われ、介護保険によるサービスの利用を見込めない場合は、必要に応じ、申請者に対して、一旦申請を取り下げ、状態が安定してから再度申請を行うよう説明します。
・1回目の認定調査の際に、異なる認定調査員による再調査が不可欠と判断した場合に限り、2回目の認定調査を行います。なお、認定調査を2回行った場合でも認定調査票は、一式のみとし、主に調査を行った者を筆頭として、調査実施者欄に記載します。

調査日時の調整

・認定調査員は、あらかじめ調査対象者や家族等、実際の介護者と調査実施日時を調整した上で認定調査を実施します。認定調査の依頼があった場合には、出来るだけ早い時期に調査を行い、調査終了後は、速やかに所定の書類を作成します。
・要介護認定は、申請から30日以内に行われる必要があり、認定調査の遅れにより、審査判定に支障が生じることがないように努めます。
・家族等の介護者がいる在宅の調査対象者については、介護者が不在の日は避けるようにする。(やむを得ず介護者不在で調査を行った場合は、特記事項に記載します。)

調査場所の調整

・認定調査員は、事前に調査対象者や介護者と調査実施場所を調整した上で認定調査を実施します。認定調査の実施場所については、原則として日頃の状況を把握できる場所とします。
・申請書に記載された住所が、必ずしも本人の生活の場とは限らず、記載された住所に居住していない場合等があるため、事前の確認が必要となります。病院や施設等で認定調査を実施する場合は、調査対象者の病室や居室等、通常過ごしている場所を確認し、病院や施設等と調整した上でプライバシーに配慮して実施します。

調査時の携行物品

・認定調査員は、調査対象者を訪問する際には、調査員証や介護支援専門員証等、身分を証する物を携行し、訪問時に提示します。また、調査項目の「1-12 視力」を確認するための視力確認表を持参します。

調査実施上の留意点

・認定調査の実施にあたり、調査目的の説明を必ず行います。
・基本的には、「目に見える」、「確認し得る」という事実によって、調査を行うことを原則とする。
・できるだけ、調査対象者本人、介護者双方から聞き取りを行うように努めます。必要に応じて、調査対象者、介護者から個別に聞き取る時間を設けるように工夫します。
・独居者や施設入所者等についても、可能な限り家族や施設職員等、調査対象者の日頃の状況を把握している者に立ち会いを求め、できるだけ正確な調査を行うよう努めます。
・調査対象者の心身の状況については、個別性があることから、例えば、視力障害、聴覚障害等や疾病の特性(スモンなど)等に配慮しつつ、選択基準に基づき調査を行います。

質問方法や順番等

1)声の聞こえやすさなどに配慮して、調査場所を工夫する。
2)調査対象者がリラックスして回答できるよう十分時間をかける。
3)優しく問いかけるなど、相手に緊張感を与えないよう留意する。
4)丁寧な言葉遣いや、聞き取りやすいように明瞭な発音に心がけ、専門用語や略語を使用しない。
5)調査項目の順番にこだわらず、調査対象者が答えやすい質問の導入や方法を工夫する。
6)会話だけでなく、手話や筆談、直接触れる等の方法も必要に応じて用いる。しかし、この際に調
査対象者や介護者に不愉快な思いを抱かせないように留意する。

調査項目の確認方法

・危険がないと考えられれば、調査対象者本人に実際に行為を行ってもらう等、調査者が調査時に確認を行います。対象者のそばに位置し、安全に実施してもらえるよう配慮します。危険が伴うと考えられる場合は、決して無理に試みません。
・実際に行為を行ってもらえなかった場合や、日常の状況と異なると考えられる場合については、選択をした根拠と、より頻回に見られる状況や日頃の状況について、具体的な内容を「特記事項」に必ず記載します。調査項目に該当する介助についての状況が特記事項に記されていない場合には、再調査を依頼する場合があることに留意します。

調査結果の確認

・認定調査員は、調査対象者や介護者に、認定調査の結果で不明な点や選択に迷う点があれば再度確認します。それにより、調査内容の信頼性を確保するとともに、意思疎通がうまくいかなかったための誤りを修正することができます。
・認定調査員は、「特記事項」を記入するときは、基本調査と特記事項の記載内容に矛盾がないか、確認し、審査判定に必要な情報を簡潔明瞭に記載するよう留意します。

調査結果の確認

調査結果の確認の重要性

審査判定を適切かつ円滑に進めるために、介護認定審査会事務局職員は、事前に調査結果を確認し、明らかな誤りや不明な点が認められる場合には、認定調査員に説明を求め、必要に応じて調査結果の変更や特記事項の加除修正を行います。
なお、認定調査員が、より頻回な状況で選択を行った場合、常時、介助を提供する者がいない場合、あるいは通常と異なるような特殊な状況のため、選択に迷った場合は、特記事項に記載すると共に、その旨を事務局に伝達します。認定調査員が迷った場合の情報は、とりわけ審査判定に影響を与えることが多いです。したがって、介護認定審査会において認定調査員からのコメント等を介護認定審査会事務局から特に口頭によっても追加情報として伝えなければなりません。

警告コードによる調査結果の確認

「警告コード」とは、要介護認定ソフトに認定調査結果が入力された際、異なる2つの調査項目において、同時に出現することが不自然であると思われる、「まれな組み合わせ」があった場合に、入力上のミスがないかどうかを確認するために、介護認定審査会資料に表示されるものであります。ただし、警告コードが表示されない場合でも、高齢者の状態として不自然な組み合わせは発生しうります。不自然な組み合わせが残ったまま二次判定を行うと、特記事項からイメージされる状態と一次判定結果が不整合であると感じる場合があります。一見すると不自然な組み合わせでも、実際にありうる組み合わせも存在することから、無理に整合性を取る必要はないが、そうした不整合の発生が審査上のポイントとなる場合も多く、常に留意すべきです。
また、この不整合の原因となる不自然な組み合わせの内容をよく吟味せずに二次判定で整合性をとるといった手続きを行うと、一次判定ソフトの導出する結果はおかしいとの誤解を抱く場合もあります。
このような場合、誤解の原因は、多くはソフトに入力する情報である基本調査の選択自体が誤りであり、それがソフト自体の信頼性を低下させることにつながっています。このような事態の防止のためにも、不自然な組み合わせを事前に確認することは重要です。

  • 01:「1-3 寝返り」が「3.できない」にもかかわらず、「1-10 洗身」が「1.介助されていない」
  • 02 :「1-4 起き上がり」が「3.できない」にもかかわらず、「1-8 立ち上がり」が「1.できる」
  • 03:「1-4 起き上がり」が「3.できない」にもかかわらず、「1-10 洗身」が「1.介助されていない」
  • 04:「1-5 座位保持」が「3.支えが必要」にもかかわらず、「1-9 片足での立位」が「1.できる」
  • 05:「1-5 座位保持」が「4.できない」にもかかわらず、「1-6 両足での立位」が「1.できる」
  • 06:「1-5 座位保持」が「4.できない」にもかかわらず、「1-7 歩行」が「1.できる」
  • 07:「1-5 座位保持」が「4.できない」にもかかわらず、「1-8 立ち上がり」が「1.できる」
  • 08:「1-5 座位保持」が「4.できない」にもかかわらず、「1-9 片足での立位」が「1.できる」
  • 09:「1-5 座位保持」が「4.できない」にもかかわらず、「1-10 洗身」が「1.介助されていない」
  • 10:「1-6 両足での立位」が「3.できない」にもかかわらず、「1-7 歩行」が「1.できる」
  • 11:「1-6 両足での立位」が「3.できない」にもかかわらず、「1-8 立ち上がり」が「1.できる」
  • 12:「1-6 両足での立位」が「3.できない」にもかかわらず、「1-9 片足での立位」が「1.できる」
  • 13:「1-7 歩行」が「1.できる」にもかかわらず、「2-1 移乗」が「4.全介助」
  • 14:「1-7 歩行」が「3.できない」にもかかわらず、「1-9 片足での立位」が「1.できる」
  • 15:「2-1 移乗」が「4.全介助」にもかかわらず、「1-9 片足での立位」が「1.できる」
  • 16:「1-8 立ち上がり」が「3.できない」にもかかわらず、「1-9 片足での立位」が「1.できる」
  • 17:「2-3 えん下」が「3.できない」にもかかわらず、「2-4 食事摂取」が「1.介助されていない」
  • 18:「2-3 えん下」が「3.できない」にもかかわらず、「5-1 薬の内服」が「1.介助されていない」
  • 19:「1-11 つめ切り」が「1.介助されていない」にもかかわらず、「4-11 物や衣服を壊す」が「3.ある」
  • 20:「5-1 薬の内服」が「1.介助されていない」にもかかわらず、「4-11 物や衣服を壊す」が「3.ある」
  • 21:「5-2 金銭の管理」が「1.介助されていない」にもかかわらず、「3-8 徘徊」が「3.ある」
  • 22:「5-2 金銭の管理」が「1.介助されていない」にもかかわらず、「4-9 一人で出たがる」が「3.ある」
  • 23:「5-2 金銭の管理」が「1.介助されていない」にもかかわらず、「4-10 収集癖」が「3.ある」
  • 24:「5-2 金銭の管理」が「1.介助されていない」にもかかわらず、「4-11 物や衣服を壊す」が「3.ある」
  • 25:「1-12 視力」が「5.判断不能」にもかかわらず、「3-1 意思の伝達」が「1.できる」
  • 26:「1-13 聴力」が「5.判断不能」にもかかわらず、「3-1 意思の伝達」が「1.できる」
  • 27:「1-12 視力」が「5.判断不能」にもかかわらず、第3 群の「3-2 毎日の日課を理解」「3-3 生年月日をいう」「3-4 短期記憶」「3-5 自分の名前をいう」「3-6 今の季節を理解」「3-7 場所の理解」の6項目がいずれも「1.できる」
  • 28:「1-13 聴力」が「5.判断不能」にもかかわらず、第3 群の「3-2 毎日の日課を理解」「3-3 生年月日をいう」「3-4 短期記憶」「3-5 自分の名前をいう」「3-6 今の季節を理解」「3-7 場所の理解」の6項目がいずれも「1.できる」
  • 29:「1-13 聴力」が「5.判断不能」にもかかわらず、「5-3 日常の意思決定」が「1.できる」
  • 30:「1-12 視力」が「5.判断不能」にもかかわらず、「5-3 日常の意思決定」が「1.できる」
  • 31:「1-13 聴力」が「5.判断不能」にもかかわらず、「2-6 排便」が「1.介助されていない」
  • 32:「3-1 意思の伝達」が「4.できない」にもかかわらず、「5-3 日常の意思決定」が「1.できる」
  • 33:「1-13 聴力」が「5.判断不能」にもかかわらず、「2-5 排尿」が「1.介助されていない」
  • 34:「1-13 聴力」が「5.判断不能」にもかかわらず、「2-2 移動」が「1.介助されていない」
  • 35:「4-11 物や衣類を壊す」が「3.ある」にもかかわらず、「5-3 日常の意思決定」が「1.できる」
  • 36:「3-5 自分の名前を言う」が「2.できない」にもかかわらず、「5-3 日常の意思決定」が「1.できる」
  • 37:「1-12 視力」が「5.判断不能」にもかかわらず、「2-6 排便」が「1.介助されていない」
  • 38:「1-12 視力」が「5.判断不能」にもかかわらず、「2-5 排尿」が「1.介助されていない」
  • 39:「1-12 視力」が「5.判断不能」にもかかわらず、「2-2 移動」が「1.介助されていない」
  • 40:「1-5 座位保持」が「4.できない」にもかかわらず、「5-5 買い物」が「1.介助されていない」
  • 41:「2-8 洗顔」が「3.全介助」にもかかわらず、「5-6 簡単な調理」が「1.介助されていない」
  • 42:「2-9 整髪」が「3.全介助」にもかかわらず、「5-6 簡単な調理」が「1.介助されていない」
  • 43:「5-2 金銭の管理」が「3.全介助」にもかかわらず、「5-5 買い物」が「1.介助されていない」
  • 44:「5-3 日常の意思決定」が「4.できない」にもかかわらず、「5-5 買い物」が「1.介助されていない」
  • 45:「3-1 意思の伝達」が「4.できない」にもかかわらず、「5-5 買い物」が「1.介助されていない」
  • 46:「4-11 物や衣類を壊す」が「3.ある」にもかかわらず、「4-14 自分勝手に行動する」が「1.ない」
  • 47:「1-3 寝返り」が「3.できない」にもかかわらず、「1-4 起き上がり」が「1.できる」
  • 48:「1-3 寝返り」が「3.できない」にもかかわらず、「1-8 立ち上がり」が「1.できる」
  • 49:「1-4 起き上がり」が「1.できる」にもかかわらず、「1-5 座位保持」が「4.できない」
  • 50:「1-7 歩行」が「1.できる」にもかかわらず、「2-2 移動」が「4.全介助」
  • 51:「2-1 移乗」が「4.全介助」にもかかわらず、「1-8 立ち上がり」が「1.できる」
  • 52:「1-10 洗身」が「1.介助されていない」にもかかわらず、「2-8 洗顔」が「3.全介助」
  • 53:「1-10 洗身」が「1.介助されていない」にもかかわらず、「2-10 上衣着脱」が「4.全介助」
  • 54:「1-10 洗身」が「1.介助されていない」にもかかわらず、「2-11 ズボン着脱」が「4.全介助」
  • 55:「2-8 洗顔」が「3.全介助」にもかかわらず、「1-11 つめ切り」が「1.介助されていない」
  • 56:「1-11 つめ切り」が「1.介助されていない」にもかかわらず、「1-12 視力」が「5.判断不能」
  • 57:「2-10 上衣着脱」が「4.全介助」にもかかわらず、「2-11 ズボン着脱」が「1.介助されていない」
介護ソフト「トリケアトプス」では…
一次判定シミュレーションの判定前に、「警告チェック」ボタンより警告コードが存在しないかを確認できます。警告コードが存在した場合は、その内容が表示され、該当の項目にマーカーが引かれます。

主治医意見書との関係

認定調査の調査項目と主治医意見書の記載内容とでは、選択基準が異なるものもあるため、類似の設問であっても、両者の結果が一致しないこともありえます。したがって、両者の単純な差異のみを理由に介護認定審査会で一次判定の修正が行われることはありません。

出典:認定調査員テキスト2009(改訂版)

介護の基礎知識一覧へ