介護の基礎知識
介護記録のペーパーレス化に効果的な方法とは?介護記録の保管の悩みを解決

介護施設の現場では、長年にわたり人材不足による業務負担の増大や、ICT化の遅れが課題とされてきました。近年、ようやく介護業界全体でペーパーレス化を推進する動きが広がりつつあります。ですが、ペーパーレス化したいと思いつつ、まだまだペーパーレス化が進んでいないと感じている事業所様も多いのではないでしょうか。
本記事では、ペーパーレス化の現状やメリット・デメリット、導入のポイントや方法について解説していきます。
介護業界におけるペーパーレス化の現状

以下は介護事業所経営者103名を対象に行った介護現場のペーパーレスに関する実態調査です。
事業所経営者の約8割がペーパーレス化は重要と回答
2023年に行われた実態調査では、「今後介護業界のDX化の一環として、ペーパーレスの推進は重要と思うか」という問いに対して、76.7%が「非常にそう思う」「ややそう思う」と回答しました。
ここから、約8割の介護事業者が、ペーパーレス化の重要性を感じているといえます。
約8割がペーパーレス化が推進されていないと回答
事業所経営者の約8割がペーパーレス化の重要性を実感する一方で、「現状ペーパーレス化が十分に進められていますか?」という問いに対しては79.6%が「全くそう思わない」「あまりそう思わない」と回答しました。
ペーパーレス化を進める上での課題と感じている点は「現状の業務で手一杯になっており、ペーパーレスを進める余裕がない」が50%、「ペーパーレス化をどう進めればいいか分からない」が27.4%、「現場からの理解・協力が得られない」が27.4%となりました。
ここから、8割の事業所が重要とわかりつつも、業務が忙しかったり、進め方がわからないなどの理由で8割の事業所がペーパーレス化が進んでいないのが現状と言えます。
参照:介護業界のペーパーレスに関する実態調査|ペーパーロジック株式会社ペーパーレス化促進に向けて法改正も進められています
ペーパーレス化を進めると、紙が必要な場面で困るのでは…と考え、踏みとどまっている介護事業所様もいらっしゃるのではないかと考えられますが、実際には法整備が進められ、ペーパーレス化を行いやすい環境作りが進んでいます。例えば、2022年に改正された「電子帳簿保存法」により、以下のような規制緩和が実施されました。
- 電子帳簿の税務署長への事前承認制度の廃止
- タイムスタンプの期限が2ヶ月以内に延長(サイン不要)
- 電子データの検索要件が「年月日・金額・取引先」のみに簡略化
さらに、介護業界では2021年の介護報酬改定により、「利用者等への説明・同意」や「記録の保存・交付等」に関して、電子データでの対応が原則として認められるようになりました。
また厚生労働省では、Web申請なども導入されました。今後、施設のペーパーレス化を推進しやすい状況がさらに整備されるでしょう。
このように、紙で管理を行わなくても、電子データでの対応が可能になってきています。書類を電子データで管理することは効率化やコスト削減が行えたりと、事業所にとってのメリットも多いため、この機会にペーパーレス化を検討してみてはいかがでしょうか。
ペーパーレス化のメリット

ペーパーレス化を進めるメリットをご紹介します。メリットを知っておくことで、自施設のペーパーレス化を行った際、具体的にどのような効果があるのかイメージがしやすくなります。
介護記録の保管場所が不要になる
ペーパーレス化を行うことで、紙で保存する際に必要だった保管場所が不要になります。
介護記録には一定期間の保管義務があります。この期間は地域によって異なるものの、通常は2~5年とされています。事業運営の観点からも記録の保管は必須ですが、利用者数に年数を掛け合わせた場合、その保管スペースの負担は非常に大きなものとなります。
大型の介護施設では特に利用者が多く、それに比例して記録も増加します。さらに、長期間サービスを利用している方が多い場合、記録は年々増え続けます。その結果、スタッフのデスクや事務所のスペースだけでは収まりきらず、大部屋を専用の保管場所として使用したり、別途倉庫を借りざるを得ないケースも少なくありません。
<各書類の保存期間>
- 介護給付費請求書・介護給付費明細書(国保連請求控え)…5 年
- ケア提供に関連する記録書類…各自治体が条例を設置可能
上記の通り、介護記録書類の保存期間は各自治体によって決まっており、自治体によっては5年など、長期化しています。また、障害福祉サービスの記録書類の保存は「完結の日から5年」のため、サービスによって保管期間が統一されていないことから、事業所の文書保管の管理業務が煩雑になっています。
介護記録を電子保存に切り替えることで、物理的な保管スペースが不要になります。パソコンやクラウド上に保存するため、容量を気にせず記録を管理し続けることが可能です。これにより、大型のキャビネットや段ボールで埋め尽くされていたスペースが一気に解放され、作業環境の整備にもつながります
必要なときにすぐに必要な書類を探すことができる
紙の記録では、たとえ整理整頓されていたとしても、特定の日時や利用者の記録を探し出すには時間と労力を要します。また、カンファレンスや実地指導の場では、過去の情報を即座に取り出したい場合があります。
特に、実地指導では例として次のような書類の提出が必要になります。
※自治体によって異なります
<事前または当日に提出が必要な書類>
- 自主点検表(様式は、各都道府県・市町村のホームページ等に掲載)
- 運営規程
- 重要事項説明書、施設パンフレット、契約書
- 職員の勤務体制および勤務形態一覧表
- サービス提供に関する調書
- 緊急時や事故発生時・苦情対応のマニュアル
<当日に提示が必要な書類>
- 職員の勤務関係書類(出勤簿等、勤務の状況がわかるもの)
- 資格証または資格証の写し
- 事故発生や苦情処理の対応状況がわかる資料
- 研修実施状況がわかる資料
- 介護給付費請求書、介護給付費明細書
- 請求書または領収書の控え
- サービス計画書
- サービス提供の記録
電子保存の場合は、日時や利用者名で検索をかければ、瞬時に必要な記録を表示させることができます。これにより、業務効率が大幅に向上します。
ペーパーレス化を行うことで、実地指導にいつでも対応できるよう、日頃から必要な書類をいつでも取り出せる環境を整備することが可能です。
個人情報の保護
介護記録には個人情報が含まれているため、適切な情報管理が求められます。以下は紙で介護記録を保管する場合の個人情報のセキュリティの懸念点です。
- 情報漏洩のリスク
紙の記録は物理的に管理する必要があるため、管理が不十分な場合、情報漏洩のリスクが高まります。例えば、記録が無防備に放置されていたり、アクセス制限が不十分な場所に保管されていると、第三者に簡単に閲覧される恐れがあります。 - 管理の手間とミス
紙の保管では、適切な管理が必要です。記録が散逸したり、紛失したりすることがあります。また、複数のスタッフが記録を取り扱う中で、誤って重要な情報を他の人に見せてしまったり、誤った場所に保管してしまう可能性もあります。 - 破損や劣化のリスク
紙の記録は湿気や火災、物理的な衝撃に弱いため、自然災害や事故によって記録が破損するリスクがあります。特に長期間にわたる保管が必要な介護記録では、紙の劣化が進む可能性があり、情報が消失する危険性もあります。 - アクセス管理の難しさ
紙の記録は、誰がどの情報にアクセスしたのかを追跡することが難しいため、アクセス制限や監視が不十分な場合、記録の不正閲覧や改ざんが発生する恐れがあります。
ペーパーレス化を行うことでこれらの個人情報の流出や紛失、書類の破損のリスクを防ぐことができます。
印刷コストの削減
介護事業所では、記録に必要な様式や契約書、重要事項説明書、業務日誌、報告書など、多くの書類を日々印刷しています。そのため、紙の消費量だけでなく、印刷機のインク代といったコストがかかるほか、印刷の操作や待ち時間といった時間的コストも発生します。
ペーパーレス化を導入することで、業務に必要な基本的な記録や書類をデジタル化し、自治体への提出など印刷が必要なものだけを厳選して出力できます。その結果、印刷コストや作業時間の大幅な削減が可能になります。
また、ペーパーレス化により印刷業務を見直すことで、単なるコスト削減にとどまらず、業務全体の整理や効率化にもつながるでしょう。
環境保護に繋がる
ペーパーレス化を推進することで紙の消費量を削減でき、環境保護に配慮した事業所としての評価にもつながります。
近年、多くの企業がSDGsに取り組んでおり、紙の生産に伴う森林伐採の抑制の観点からも、ペーパーレス化が推奨されています。
特に大量の紙を使用する介護事業所だからこそ、ペーパーレス化を進めることで、SDGsへの積極的な取り組みを示すことができるでしょう。
ペーパーレスを推進するデメリット

導入コストがかかる
ペーパーレス化には、紙の書類をデータ化するためのスキャナーや、閲覧用のパソコン・タブレットなどの電子端末の導入が必要です。また、文書管理を継続的にペーパーレスで運用するためには、専用のシステムを導入するケースもあります。こうした初期投資は、ペーパーレス化の大きな課題のひとつです。
対策:導入費用を抑えるために、補助金や助成金を活用する、段階的にシステムを導入するなどの方法を検討するとよいでしょう。
業務効率が低下するリスク
介護施設では高齢の職員も多く、電子端末の操作に慣れていない方も少なくありません。そのため、新しい業務フローへの移行に不安を感じたり、不便に思ったりすることで、かえって業務効率が低下する可能性もあります。
対策:操作が簡単なシステムを選定する、事前に研修を実施する、移行期間を設けて段階的に導入するなどの工夫が必要です。
画面上での情報確認のしづらさ
電子端末では、一度に表示できる情報量に限りがあるため、一覧で確認できる紙と比較すると不便に感じることもあります。特に、大量のデータを一度に確認したい場合には、紙のほうが使いやすいと感じるケースもあるでしょう。
対策:ペーパーレス化の目的に応じて、デジタルと紙を適宜使い分けることが重要です。例えば、特に一覧性が求められる資料については、必要に応じて印刷して活用するなど、柔軟に対応することで利便性を確保できます。
ペーパーレス化は、多くのメリットをもたらす一方で、導入にはいくつかの課題も伴います。これらのデメリットを十分に考慮しながら、自施設に合った方法で進めていくことが大切です。
介護施設でのペーパーレスの進め方
介護施設でペーパーレスを進める場合には、以下の流れに沿って導入していくことがおすすめです。
①ペーパーレス化の目的を確認
②対象範囲と紙の使用量を把握
③データ化する方法を検討
④運用方法の設定と実行
⑤効果検証と最適化
①ペーパーレス化の目的を確認
まず、ペーパーレス化によって解決したい課題を明確に設定しましょう。目的をはっきりさせることで、導入の方向性が定まり、職員の理解も得やすくなります。
目的の例
- 情報共有の迅速化・円滑化
- 業務負担の軽減と効率化
- 印刷費や管理コストの削減
介護スタッフと話し合いながら、自施設にとって最適なペーパーレス化の目的を設定しましょう。
②対象範囲と紙の使用状況を把握する
次に、ペーパーレス化の対象範囲を決め、現在の紙の使用量を把握します。
すべての業務を一度にペーパーレス化しようとすると、職員の抵抗が強くなり、業務に支障をきたす可能性があります。そのため、必要に応じて紙の書類と併用することも視野に入れながら、段階的に進めることが重要です。
検討ポイント
- 紙の使用量が多い業務を優先的にペーパーレス化できるか
- 法的に紙での保管が必要な書類の有無
- 一覧性が必要な資料は紙で残すかどうか
紙の使用量を数値化できれば、ペーパーレス化によるコスト削減効果も明確になり、職員の意識向上にもつながります。
③データ化の方法を検討する
ペーパーレス化の目的や対象範囲に合わせ、適切なツールを選定します。
必ずしも大規模なシステムを導入する必要はなく、施設の規模や業務内容に応じた方法を選ぶことが重要です。
データ化の方法の例
- エクセルやクラウドツールを活用し、簡単な記録をデジタル化
- 請求業務専用システムを導入し、特定の業務のみペーパーレス化
- 介護施設向けの介護ソフトを導入し、施設全体のデジタル化を推進
施設の状況に合わせて、無理のない範囲からスタートし、徐々に拡大していくことが理想的です。
④運用ルールの設定と実施
ペーパーレス化に伴い、業務フローの変更が必要になります。
介護施設では、スタッフによって作業の進め方が異なることが多いため、業務の標準化が重要です。各業務を細分化し、新しいフローを明確にしましょう。また、電子機器を使用するため、個人情報の保護にも注意が必要です。
設定すべきルールの例
- 端末の画面を使い終わったらオフにする
- 紛失時の対応手順を決める
- 文書のアクセス権限を明確にする
ルールが整ったら、ペーパーレス化を実施し、実際の業務で運用を開始します。
⑤効果検証と改善
導入後は、定期的に効果を検証し、運用の最適化を進めていきます。
確認すべきポイント
- 設定した目的が達成できているか
- 業務効率が向上しているか
- 職員の負担が軽減されているか
- 想定外の問題が発生していないか
最初に決めた運用ルールが必ずしも最適とは限りません。現場の意見を取り入れながら、継続的に改善し、より効果的なペーパーレス化を目指しましょう。
介護施設がペーパーレスを成功させるためのポイント

段階的にペーパーレスを推進する
ペーパーレス化を進める際には、対象を限定し、段階的に取り組むことが重要です。すべての業務を一度にペーパーレス化しようとすると、慣れない作業に職員が混乱しやすくなります。
そのため、まずは一部の業務から試行し、問題がないかを確認することから始めましょう。段階的にペーパーレス化を進めることで、トラブルが発生した際に迅速に対応でき、改善のサイクルもスムーズに回すことができます。
現在の自施設に適したツールを選択する
パソコンに苦手意識のあるスタッフへのケア
アナログな作業が多く残っている施設では、パソコンに苦手意識を持つ介護スタッフが多いことは珍しくありません。特にスタッフの平均年齢が高い場合、デジタル機器に触れた経験や知識が少ないことから、電子化を導入しても定着しないリスクがあります。
介護記録の電子化をスムーズに進めるためには、こうした苦手意識を解消することが重要です。研修やトライアル期間を設け、実際に機器に触れる機会を提供することで、徐々に慣れてもらう工夫が求められます。また、導入後もベンダーを招き、定期的な研修を実施することで、円滑な運用と定着が期待できます。
さらに、最先端のツールに対してスタッフが拒否反応を示すケースもあります。このような場合には、電子化の計画段階から意義や目的を丁寧に説明し、スタッフが納得した上で導入を進めることが大切です。スタッフの理解と協力を得ることで、より効果的な電子化を実現できます。
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